∀地ビールとはナニかハッキリさせよう
2008年も十日過ぎましたので、ビールについて今年の目標っぽいコトを書いてみます。昨年は、「地ビール」という言葉を捨てよう、と提案して、逆説的にしか「地ビール」という言葉を使わないようにしてきた。今年は、「地ビール」とはナニかハッキリさせよう、と提案したい。それによって、「地ビール」の品質を向上させ、胡散臭さを払拭したいと考える。何度か書いてきたが、「地ビール」とはナニか、という定義はない。例えば「地鶏」は、日本農林規格(特定JAS)で「在来種の純系によるもの、又は在来種を素びなの生産の両親か片親に使ったもので在来種由来の血液百分率が50%以上のものをいう。生産方法では、飼育期間が80日以上であり、28日令以降平飼いや1平方m当り10羽以下での飼育が必要である」と決まっている。つまり、「地鶏」という言葉は、ある一定の品質を保障しているのだ。公式書類の中で、「地ビール」という言葉を捜してみると、国税庁の醸造所数の発表に「地ビールの製造免許者の概要」というのがあり、「酒税法の平成6年4月改正後に免許した製造見込数量2,000kl未満のビール製造場について掲げている」と断り書きがある。つまり、小ブルワリーのビール・発泡酒は、全て「地ビール」と言える。「地ビール」=非大手ビール・メーカーのビール。これが、最も範囲の広い定義だろうが、大きすぎて意味を成さない。英語の「Local Beer」とも違っている。そして「地ビール」という言葉は、独り歩きしてしまった。「地ビール」は今、どんな意味を持っているだろうか?よく目にする記述、「地ビールは美味しい!」。そう、「地ビール」は、美味しいビールの代名詞となっている。それは、小ブルワリーにとってプラスなのだろうか?先にも書いたように、「地ビール」の最も大きな定義は、小ブルワリーのビール・発泡酒『全て』だ。これと『美味しいビールの代名詞』である「地ビール」が、混同して扱われるコトに問題がある。「地ビールは美味しい!」、この言葉を検証してみよう。書いた側は、『美味しいビールの代名詞』として書いているのだろうか?それとも、『全て』を指しているのだろうか?『全て』を意味してはいないハズだ。なぜなら、不味い小ブルワリーのビールはあるからだ。これは、『全て』の小ブルワリーのビールを飲んでいないとしても、ラーメン屋さんに例えると想像しやすいだろう。大手チェーン店に対する小規模経営店。その小規模経営のラーメン屋さんの『全て』が、美味しいだろうか?私の経験からの答えは、否だ。誰でも一度くらい、気絶しそうに不味いラーメンを食べて、チェーン店にしておけばと後悔したコトがあるだろう。『全て』が美味しいというのが、非現実的なのは、理解いただけたと思う。『美味しいビールの代名詞』として一部の小ブルワリーのビールを想定して書いた「地ビールは美味しい!」。読み手に与える影響を考えてみよう。強い印象、「地ビール」=美味しい、を受けるだろう。そして「地ビール」を探す。この時手に入る情報は、小ブルワリーのビール・発泡酒『全て』からであって、美味しい小ブルワリー限定ではない。また、美味しいと紹介されたモノであっても、人には好みがあるのだ。そうして手に入れた美味しいハズの「地ビール」が不味かったら?こう言うだろう「地ビールって、この程度なんだ」と。購入したのは「地ビール」だから、某小ブルワリーの不味いビールが、この程度ではなく、「地ビール」がこの程度と感じてしまう。この時の「地ビール」は、『全て』でも『美味しいビールの代名詞』でも、品質の高いビールを醸造している小ブルワリーに大迷惑だ。ここに、「地ビール」という言葉のイメージの罠がある。「地ビール」は、一定の品質基準のある「地鶏」のように、『美味しい保障』があるように誤解させる魔力がある。しかし、どんな不味いビールであっても、小ブルワリーが造ったビールであれば、「地ビール」と名乗れる。この誤解と実態のギャップが、「地ビール」を胡散臭いモノにしている。そして、小ブルワリーも「地ビール」の魔力を利用している。『美味しい保障がない』のに、保証があるように見せかける『偽装を目的』として、「地ビール」という冠を外さないのだ。小ブルワリーを保護するために、あえて「地ビール」という言葉を野放しにしているのは分かる。「地ビール」と名乗れば、言葉のイメージで、それなりに売れて、不味いを「変わった味で珍しい」と良心的に解釈してくれるのだから。しかし、これでは品質は向上しない。「地酒」という言葉を放置して、更に「特選」「金選」などと消費者を惑わせて衰退している日本酒。「プレミアム」「本物のビール」などという言葉を使い始めたビールは、同じ道を歩んでいるように見える。この轍を踏まないよう、まずは「地ビール」という言葉の定義をハッキリさせよう。以下は蛇足。しかし「地ビール」という言葉の定義をハッキリさせようにも、業界のお偉い方々に頼るしかなく、消費者としては、手の出しようがない。消費者からもできそうな提案としては、新たな言葉と定義を決めて、こういうビールが飲みたい、造ってと要望するコトだろうか。そこで、「Local Beer」を提案したい。定義は、下記のようなモノが考えられる。・水以外の原材料を同県産50%以上使用・郷土料理にマリアージュした独自のスタイルもっといい言葉、定義がありましたら、提案ください。また「Local Beer」を前面に出される小ブルワリーさんいたら、連絡お待ちしてます。微力ながら、飲んで応援します。とにかく、数だけは、小ブルワリーは増えた。次は、消費者が選択する番だ。そして、消費者が、どんなビールを選ぶのかで、日本のビールの行く末は決まる。はっきり言えば、外国ビールのコピーで満足するのか、その先の日本に浸透するビールを望むか、だ。外国から原材料を買い、外国に研修旅行に行き、ほとんどが県外で消費、合わせる料理は洋風では、地元ではお客さんだ。住人として認められるには、土地の材料を買い、県内を巡り、県内で飲まれ、郷土料理に合わなければいけないのではないか。自称ビール・マニアやマスコミにもてはやされるのと、土地の祭りで奉納されるのとでは、違うのだ。日本は、諸外国の文化を吸収して、日本に浸透させてきた。ビールでもやれないハズがない。ビール情報リスト