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カテゴリ:教育
「そして、チャーチルもドゴールもクレーマーも、 経済は政治行動への動機付けになるし、政治行動に対する制約にもなる、という考えをまるで問題にしないか、軽視するに違いない。 私がこの問題に経済という要素を持ち込もうとするたびに、クレーマーは、経済封鎖や経済制裁によって軍事降伏や政治降伏を勝ち取ろうとする試みがことごとく失敗に終わった事実を、あざけるような口調で指摘した───ナポレオンの大陸封鎖、南北戦争当時の北部連合による南部連合の封鎖、第一次大戦当時のドイツに対する封鎖をわざわざ引き合いに出すまでもあるまい、というのであった。 経済力の強弱でさえほとんど問題にならない、とも彼は言った。 南部連合は工業を持っていなかったし、農業も僅かに綿とタバコを産出しているだけの後進農業であった。もちろん、戦時中はその農産物のどちらも輸出する事は出来なかった。にもかかわらず、南部連合は4年間も持ちこたえる事が出来た。 結局、南部連合が敗北を喫したのは北軍が優秀な軍事力を動員したからである。 第一次大戦当時のドイツとオーストリアも、連合国と比べて経済生産が著しく劣り、工業原料もなきに等しかったが、4年間も持ちこたえる事が出来た。 この場合にも、両国が敗北を喫したのは戦場での戦いに敗れたからである。 したがって政治家は、経済など一顧だにせずに政策を立案し、遂行すべきである、少なくとも経済の役割を───芝居にたとえて言えば、通行人の役割程度に───限定すべきである、というのがクレーマーの結論だった。」 …P・F・ドラッカー 傍観者の時代 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
Nov 16, 2005 10:04:36 PM
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