より良い明日をめざして

全5825件 (5825件中 1-10件目)

1 2 3 4 5 6 >

2020年07月09日
XML
テーマ:ニュース(86510)
カテゴリ:ニュース
自民党議員が選挙運動中に現金を配って買収をした事件について、文芸評論家の斎藤美奈子氏は1日の東京新聞コラムに、次のように書いている;


 河井克行・河井案里夫妻の公職選挙法違反(買収)容疑をめぐる告白ドミノ。現金を受け取った広島県の市議らの証言を朝日新聞から拾うと・・・。

 「(克行議員に)コントロールされていく、手足を縛られていくような感覚があった」(広島市・石橋竜史市議)。「『いけません』と返そうとしたが、『いいからいいから』と押し切られた」(安芸高田市・水戸真悟副議長)。「返して関係を崩すより、『政治家の付き合い』を続けたほうがいいと考えた」(呉市・土井正純市議)。「現金だとわかってゾッとした」(江田島市・胡子雅信市議)。「(記者に話して)少し楽になった」(広島市・冲宗正明市議)。

 金銭の授受というよりもまるで心霊スポットで悪霊に取り憑かれ、金縛りにあった人たちの証言である。彼らが語っているのはなべて「恐怖の体験」だ。選挙の金には怨念がこもる。となると最高の恐怖はやはり中国新聞が報じたこれか。

 「安倍さんから」といわれて30万円受け取った。「安倍さんの名前を聞き、断れなかった。すごく嫌だったが、聞いたから受けた」(府中町・繁政秀子元町議)。

 類似の事例は

「『安倍晋三からです』といわれて百万円受け取った」(森友案件)、
「総理のご意向だと聞いている」(加計案件)。

首相の名前が脅しの切り札になる国。ほとんどホラー映画である。
(文芸評論家)


2020年7月1日 東京新聞朝刊 11版 25ページ 「本音のコラム-恐怖の現金」から引用

 「恐怖の現金」というタイトルは、有名な落語の「饅頭こわい」を連想させる。しかし、選挙で買収というのは、私は「3丁目の夕陽」の時代というイメージを持っており、まさか現代でも行なわれているとは夢にも思いませんでした。しかも、その現金を配った本人を安倍首相は「適材適所だから」と言って法務大臣に任命した、この「責任」について、安倍氏は「責任は私にある」とは言うものの、国民が知りたいのは「責任の所在」ではなく、どう責任を取るのかという点であることを考えてほしいものだと思います。






最終更新日  2020年07月09日 01時00分06秒
コメント(1) | コメントを書く


2020年07月08日
テーマ:ニュース(86510)
カテゴリ:ニュース
新型コロナウイルス感染拡大の第一波を無難に抑えた日本人社会について、戦時下文化を研究する大塚英志氏は6月20日の朝日新聞で、次のように述べている;


 「遊びに行くなら屋内より屋外を選ぶ」「料理に集中、おしゃべりは控えめに」――。新型コロナウイルスの感染予防対策として、政府が提示した「新しい生活様式」に沿った呼びかけを、街のあちこちで聞くようになった。感染抑止のためなのだから仕方がない。ポストコロナの新生活を始めよう。そんな受け止め方が広がる今の社会の空気について、戦時下文化を研究する大塚英志さん(61)に聞いた。


――大塚さんは「新しい生活様式」が、戦時下の光景と重なると指摘しています。どこが重なるのですか。

 「何より、『日常』や『生活』という用語の氾濫(はんらん)ですよ。『日常』や『生活』は、戦時下に盛んに用いられた戦時用語なんですよ。例えば、日米開戦前後を境に新聞や雑誌にあふれるようになった記事が『日常』や『生活』に関するものでした。季節ごとの家庭菜園の野菜を使ってつくる『漬けもの暦』や、古くなった着物でふすまを飾る事例の紹介など、今では『ていねいな暮らし』とでも呼ばれそうなものが、競うように掲載されたのです。

 戦後「暮(くら)しの手帖」の編集長となる花森安治は、当時は大政翼賛会で政治宣伝を担いつつ、並行して『くらし』をテーマにした婦人雑誌を何冊も編集しました。古い着物を再利用してふすまを張り替えようという記事は花森が翼賛会時代に編集したものです」


――手作りや時間をかけてつくった料理など「ていねいな暮らし」を大切にしよう、というのは、「すてきなこと」に見えますが。

 「一つひとつは、否定しようのない『すてきなこと』に見えます。しかしその目的はあくまで『戦時体制をつくる』ことです。タテマエは節約や工夫によって、物資不足に備えることですが、目的は人々に戦時体制という「新しい日常」に順化させることです。それを強力に推進したのが、大政翼賛会でした。『新生活体制』として、『日常』のつくり替えを説いたのです。『生活』や『日常』は、非政治的に見えて政治的なのです。軍国色がないから、政治的な批判もしにくい。しかし『生活新体制運動』は『生活』という基盤から、社会を戦時体制につくり替え、統制に人々を動員する、まさに政治的役割を果たしました」

 「『新しい生活様式』という言葉を聞いた時、僕はこの『新生活体制』を思い出し、とても不快でした。それは、言葉の上の類似だけでなく、日々報じられたニュースが奇妙に重なり合うからです。ホームセンターの家庭菜園コーナーが人気になったというニュースがありましたが、戦時下、奨励されたのは家庭菜園でした。東京都が断捨離の動画を配信しましたが、戦時中は不用品の整理を説く自治体もありました。あげればきりがありません。図書館によっては当時の新聞記事が検索できるサービスがありますから、自分の目で確かめてください」


――「ていねいな暮らし」自体は、悪いことではありません。

 「一つ一つのいい、悪い、が問題ではありません。戦時下も今回も『政治』が人々の生活や日常全体を変えようとしていることが『正しくない』と言っているのです。政治やメディアが率先して、人々の『行動変容』『意識変容』を説く。政治が人をつくり替えようとしているわけです。その実現のために、『日常』のあり方や行動を規範としてあからさまに発信する。理屈をあれこれ言わず、行動による参加から統制を実現するのは、翼賛会以降の戦時下の動員の手法です。実際に生活の中で自ら何かをすることで、人は簡単に動員されます」


――外出できない日々をなんとか楽しもうとするなかで、断捨離や家庭菜園の情報は必要とされていたのではないですか。

 「戦時下の新聞の生活記事一つ一つは、『今日、明日、役に立つ情報』です。しかし、ピースの一つ一つが政治的に見えなくても、完成した『新しい日常』は新しい政治的現実、つまり、『新体制』と呼ばれた戦時体制です」


――私も「品薄の商品をどう手に入れよう」とか、「食事をどうしよう」とか、いつも以上に生活のことを考える日々でした。ただ、それは目の前のことに必死になっていただけなのですが……。

 「戦時の『新生活』も、実践の担い手の中心は女性でした。当時の女性たちにとっては、『正しい社会の参加の方法』が示されたという充足感もあったのかもしれません。少なくともそう演出されました」

 「そもそも『新生活体制』が説かれるのは1940年の翼賛会発足に合わせてです。翌年が日米開戦です。しかし、それより前、1937年の日中戦争をきっかけに行われたのが『自粛』です。対象になったのは、まずは『パーマネント』、それから女性が接客する『カフェ』でした。なんとなく女性の琴線に触れるものを、非常に巧みに自粛の対象に紛れ込ませた印象です。今回も、理美容院を休業要請の対象にすべきかという議論がありましたし、今は『夜の街』対策に熱心です。婦人会などによる自粛警察のような動きもありました。そうやって『自粛』は生活の自発的なつくり替えに向かい、そして『規制』は本格化します。今も、自粛に罰則を付す、つまり『規制』にする議論が始まっていますよね」


――感染予防のため、政府が生活の指針を示したことに安心し、歓迎する声もありました。

 「そもそも、コロナに限らず、これまでも『強いリーダーシップ』が政治家に求められてきたわけです。誰かに決めてもらって、自分はただ従いたい、というおよそ民主主義に相反する欲求です。今回は、そういうパフォーマンスを巧みに演出する自治体の首長らが、声の大きさや扇動のうまさで『やっている』ように見えてしまった。そこに喝采する人も少なくはなかった。けれど、こんなふうに『強い力に従うこと』になれてしまったこの社会の向かう先はいささか不安です」


――専門家に言われると、やはり説得力があります。

 「コロナ騒動で、専門家会議が冗舌に語ったのは『新しい生活様式』という学級会みたいな『きまり』でしかなく、専門家が専門の言葉を放棄して『ただの人』として発信していることが少なからずありました。そういう、科学という専門性の後退が実は今回起きた気がします」

 「例えば、日本の新型コロナによる死亡率が、欧米とくらべて低いことを『日本人の行動様式』や『日本文化』に帰結させる主張が盛んに語られはじめました。時にそれを専門家が語るのも側聞しました。東アジア圏にはもっと死亡率が低い国もあるのに、です。なるほど、『生活』や『日常』は文化の基盤のように思えますから、コロナ感染が悪化しなかったことは『日本スゴイ』的な精神論・文化論に飛躍しやすい。『ジャパンミラクル』といった国会議員がいましたが、コロナ文化論は、ほとんど『神風が吹いた』に近い次元に行きかけている。そもそも、自画自賛的な日本文化論など大抵、眉唾物(まゆつばもの)です


――コロナに感染する恐怖を前にすると、自粛や新しい生活様式にはあらがいにくい雰囲気があるのも事実です。

 「コロナ禍が過ぎ去った時、自粛や新しい生活様式に、『あれは医学的根拠がなかった』とか、『やり過ぎ、無駄だった』という批判が出てくるでしょう。すでに散見します。そして、『あの時、だれがあんな馬鹿げたことを言ったのか』と『戦犯』探しが始まる。その時、『じゃあ、あなたは何で従ったのか』と問われたら、大抵の人が、『反対できる空気じゃなかったからね』と弁明するのでしょう。それは、かつて戦争に向かう『空気』に流され、沈黙し、戦後になされた弁明と同じじゃないですか?」


――では、どうすればいいのでしょうか。

 「違和感を感じるのなら、『いやだ』『気持ち悪い』って言えばいいんですよ。僕は『自粛』や『新しい生活様式』や、そこにへばりつく『正しさ』が気持ち悪いから、そう公言しています。けれど、その気持ち悪さを、『気持ち悪い』と言えないような社会が、もっと気持ち悪い。『言えない』時点で、おかしいわけです。疫病対策として最小限すべきことと、そのどさくさで政治が生活そのものを改めることは、『同じ』であってはならないはずです。どういう形であれ、個人の生活の中に公権力が侵入してきたら、『従うのはいやなんだよ』というのは、民主主義の基本でしょ」


――「新しい生活様式」の「新しい」という言葉には、ポジティブな響きがあります。

 「『新しい』という言葉によって、批判の対象を『旧』におとしめるというマウンティングの歴史の一つですよ。社会に停滞感がある時、人は『新』に飛びつくものです。近衛文麿の新体制が成功したのは革新運動だったからだし、戦後の「革新」も、『古い自民党』を批判して生まれた小泉政権も、戦後を『古いもの』と見なして否定する安倍政権も同じです。維新の会も同じです。『新しさ』に内実は問われない。問わない側が間違っている」


――いまさかんに、コロナ後の「新しさ」が論じられています。

 「僕は『ポストコロナの世界』を論じようとする人を信用していません。問題点が露呈してより悪い世界は確実にきますが、それはコロナがあろうがなかろうがやってくるはずの世界です。何かをチャラにした『新しい世界』なんて来ません。この20年を振り返ったって、『3・11後の世界』とか『9・11後の世界』とか、何回も『これで世界が変わった』『これから来る新しい世界のことを論じよう』と、くり返してきたでしょう。今回だって、きっと、同じ顔ぶれが『コロナ後の世界』を冗舌に語るでしょう。まあ、予算配分が厳しい人文系研究者などは、『コロナ後の世界』をテーマにすれば、結構、研究費が取れそうだなという生々しい話も聞きますが、それを含め、『コロナ後の世界』をいかに政治利用するかという、『新しい』政治が始まるでしょう」


<プロフィール>
 おおつか えいじ まんが原作者。まんが史を軸に戦時下文化研究も行う。まんが原作に「アンラッキー・ヤングメン」「黒鷺(くろさぎ)死体宅急便」などの他、研究書に「大政翼賛会のメディアミックス」など。
(聞き手・田中聡子)


2020年6月20日 朝日新聞DIGITAL 「感染拡大せず『日本スゴイ』・・・80年前と重なる嫌な流れ」から引用

 「暮らしの手帖」という雑誌の編集長だった花森安治という人は、私もメディアで見聞きして知ってますが、リベラルな発言をする人という印象でした。ここに引用した記事によると、大政翼賛会の「新生活運動」に熱心な人だったと言われると意外な感じがします。意外と言えば、国会議員だった市川房枝という人も、戦前から女性解放の運動に取り組んだ人でしたが、戦時体制になれば女性も社会に出て活躍する機会が増えるとの考えから、政府の戦争政策には反対しなかった人だ、と聞いたときも意外に思ったものでした。戦後生まれの我々には計り知れない意外な事例が、けっこうまだ知られていないというのが実情かも知れません。






最終更新日  2020年07月08日 01時00分06秒
コメント(3) | コメントを書く
2020年07月07日
テーマ:ニュース(86510)
カテゴリ:ニュース
新型コロナウイルスの拡大が一段落したと見られた6月22日に、読売新聞は一面トップで「感染症に強い社会を築け」と題して今後の対策を提言している;



1、感染症他作不在から脱せよ - PCR検査能力を1日10万件に
2、コロナ不況脱却に全力を - 資本注入ためらわず大胆に
3、首相直属の本部を設けよ - 感染防止と経済再生を両立
4、国は地方任せにするな - 国による手厚い財政支援
5、休校でも学習機会の確保を - オンライン環境の普及を急げ
6、国際協調の機運を取り戻せ - WHO改革 日本が主導を
7、コロナ差別を許さない風潮を - 啓発活動や救済制度の充実を

この7項目を上げて、記事では次のように述べている;


(前半省略)
 国家の非常事態には、政府が前面に立って総合的な戦略を示し、対処すべきだ。地方任せでは、対策は徹底を欠くことになる。医療体制は大丈夫か。経済や雇用、家計はどうなるのか。何よりも、どう「新たな日常」生活を送ったらいいのか。国民に募る不安を取り除き、安心して暮らせる環境を整えることが求められる。

 国と地方が力を合わせ、危機に強い医療体制を築く時だ。「医療崩壊」を防ぐには、流行時を想定した都道府県の病床確保計画が欠かせない。蔓延(まんえん)期に、医療機関だけで感染者を受け入れるのは不可能だ。重症者や中等症患者を収容する医療機関を事前に指定し、軽症者や無症状者向けの宿泊施設もあらかじめ割り振る必要がある。

 日本は、PCR検査能力が欧米各国に比べて著しく低い。第1波ではすぐに検査を受けられない人が相次ぎ、混乱を招いた。1日10万件の検査体制を構築すべきだ。抗原、抗体各検査を含め様々な検査を受けられるようにすべきだ。マスクや防護服などを中国に依存していたため、国内の需給が逼迫(ひっぱく)した。サプライチェーン(供給網)の見直しで製造拠点の国内回帰を促したい。

 企業活動の先行きは不透明となり、雇用不安も広がっている。政府は、支援ファンドを活用した企業への資本注入などで国内経済を下支えすべきだ。

 10万円の一律給付は、国民の手に届くまで時間がかかっている。マイナンバー法改正で、マイナンバーを振込先の口座とひも付ければ、迅速に給付できる。


2020年6月22日 読売新聞朝刊 13S版 1ページ 「感染症に強い社会を築け」から引用

 この記事に書かれた読売新聞社の提言は、感染症対策から経済対策、教育問題への対策、国際関係、社会に内在する差別問題と、感染症が引き起こすあらゆる分野に目を行き届かせた模範的な提言のように見えます。やはり効果的な感染拡大阻止のためには、感染の実態を具体的に把握する必要がありますから、PCR検査の数は多い方が良いに決まってます。精度が高くないから、少ない検査数でいいんだという理屈は疑問です。ただ、この記事が訴えるそれぞれの項目に、特に問題があるとは思いませんが、広く「感染症に強い社会」を目ざすのであれば、現在政府・自民党が推し進めている全国の病院の整理・統廃合計画を一旦止めて、次の「第二波」に備えるべきであり、そのことも「提言」する必要があるのではないかと思います。また、記事の終わりのところで「マイナンバーを振込先の口座とひも付ければ、迅速に給付できる」などと書いており、確かに我々の常識ではそう思えますが、今の日本政府はどうも我々の常識では当たり前のことが、何故か実行できないという「問題」を抱えていることは、マスク2枚を各世帯に郵送するという単純な作業も2か月以上掛かっているという「現実」が教えているのですから、例え国民がマイナンバーを銀行口座にひも付けても、いざ実行という段階になると、恐らくまた別の問題が持ち上がって、結局「振り込み完了までに半年かかりました」みたいなことになるのが、まるで目に見えるような気がします。






最終更新日  2020年07月07日 01時00分07秒
コメント(3) | コメントを書く
2020年07月06日
テーマ:ニュース(86510)
カテゴリ:ニュース
帝京大学文学部長の筒井清忠氏は、自分が何故東京新聞を好んで読むのか、その理由を6月21日の同紙に次のように書いている;


 私が東京新聞を好むのは都新聞の後裔(こうえい)だからである。都新聞といっても知っている人は少ないと思うが、明治時代から寄席・演芸・花柳界に詳しく、下町の新聞としてよく知られていた。花柳界で最も読まれたともいう。

 それだけに大衆文学との関係は深い。中里介山(かいざん)の「大菩薩峠」が最初に連載されたのが都新聞であった。

 目が不自由でありながら無類に強い剣客・机竜之助は座頭市に至る日本の身体障害者ヒーローの元祖である。こういうヒーローを生み出した国はほかにない。机は全国を旅し、そこで出会う伊勢の旅芸人、間の山のお玉など多くの零落民の無常感こもる姿が、庶民に愛されたのであった。

 また、都新聞の記者には長谷川伸(しん)がいた。長谷川は「瞼(まぶた)の母」「沓掛時次郎」に代表される日本の股旅物の創始者である。長谷川は貧困のため小学校も出ることができず、捨てられた新聞のルビで漢字を覚えたという人だっただけに市井の人々の哀歓を見事に描いた。

 結局日本の庶民の心情を描いた大衆文化、特に時代劇は都新聞が作ったようなものであった。だから庶民目線や口ーカル目線がよく感じられる新聞なのだった。

 庶民目線という点で最近もよい紙面が多かった。大分県の別府は単なる温泉都市ではなく、戦後多くの引き揚げ者が存在し、米軍キャンプがあった。そのことによって独特の戦後史が形成されていたことを明らかにした「占領と引揚げの肖像 BEPPU1945~1956」(下川正晴、弦書房)を紹介した「大波小波」(5月7日夕刊3面)や「読む人」(6月13日朝刊9面)は適切であった。

 また吉永小百合の「青い山脈」を扱った「再発見!日本映画」(5月29日夕刊5面)もよかった。吉永というと「キューポラのある街」が取り上げられることが多いが、同時代の吉永体験からすると、むしろこうした明朗快活作品の方が印象に残っているからである。

 記事では三浦雅士の「石坂洋次郎の逆襲」が取り上げられているが、これは文芸・思想評論の上半期最大の収穫であった。

 石坂洋次郎は1960年代ごろまでは戦後を代表する国民的作家であったが急速に忘れ去られた。しかし三浦は、東北に始まる石坂の軌跡を詳細に検討。その小説の原型には折口信夫らの民俗学に重要な示唆を得た庶民女性の主体性の累積があり、そうした過ぎた時代の美点を未来に移そうとするところに特色があったことを、初めて明らかにしている。

 こうした大衆文化を軸としたローカル色・庶民目線を、東京新聞にはいつまでも持ち続けてもらいたいと思う。
(帝京大文学部長)


2020年6月21日 東京新聞朝刊 11版 5ページ 「新聞を読んで-庶民目線を持ち続けて」から引用

 昨日の欄に引用した「石坂洋次郎の逆襲」の書評を最初に読んだときは、今ごろなぜ石坂洋次郎なんだろうといぶかしく思って、しかしただ捨てるのも勿体ないと思って一応スキャナーでコピーを保存したのでしたが、それがなんと6月の記事で筒井先生が「今年上半期最大の収穫」と絶賛しているので、これは私の日記にも書き残さないわけにはいかないと思ったのでした。上の記事でも、5月29日の夕刊に吉永小百合の「青い山脈」の記事があるとのことですが、夕刊はコンビニで買うわけにもいかず、こういう場合は図書館でバックナンバーを閲覧するのですが、あいにく昨今は新型コロナウイルスの関係で図書館の閲覧室は閉鎖されているし、どのようにしてバックナンバーの閲覧が可能か、調べてみたいと思います。






最終更新日  2020年07月06日 01時00分07秒
コメント(2) | コメントを書く
2020年07月05日
テーマ:本日の1冊(3180)
カテゴリ:読書
三浦雅士著「石坂洋次郎の逆襲」(講談社)について、詩人で小説家の小池昌代氏が3月22日の東京新聞に、次のような書評を書いている;

 石坂洋次郎と聞いて思い出すのは、『若い人』という鮮やかな小説だ。若者の多くは知らないかもしれない。今なら、さしずめメンヘラ女子、江波恵子を主人公とする。私は愛読し、多感で魅力的なこの女学生の、芸術感や狂気、その振る舞いに多大な影響を受けたものだ。当時、私は中学生。1970年代の話である。石坂洋次郎は大人気作家だった。なのに今、なぜ忘れられてしまったのか。

 本書はこの作家に新たな光をあて、その価値を現代に生き生きと蘇らせる。稀に見る情熱の書物である。とりわけ熱いのが第一章「誰も彼をわかっていない」。彼=石坂洋次郎すらも、自分自身のことがわかっていないというかのように、著者は作家の無意識に降り立ち、際立つ特徴を劇的に言語化していく。大衆娯楽作家と軽視され、誤解されてきた作家の本質が、めりめり音をたてて現れる。



 石坂は生涯一貫して、主体的でたくましい女を主人公に作品を描いたと著者は指摘する。戦後の話ではない。『若い人』が「三田文学」に発表されたのは昭和8年。この特徴に、著者は本能的な母系制の神話を見、石坂の母校・慶応義塾で教鞭(きょうべん)を執っていた折口信夫(おりくちしのぶ)や柳田國男(やなぎたくにお)の影響を重ねている。さらに石坂が生を受けた北東北の風土が、女性観を育んだという指摘も興味深い。同郷の、著者ならではの気付きである(第五章1「津軽の気質」)。

 当時の左翼主義も共産主義も、あるいは天皇主義も、この主体的で生き生きとした女のまなざしによって、作品の内側から批判されることになった。石坂はまさにフェミニズムの先駆者だと思うが、当時のフェミニストからは一顧だにされなかったという。

 本書の刊行と同時期に、著者の編集で、石坂洋次郎傑作短編選『乳母車/最後の女』が刊行されている。「最後の女」には驚いた。母系制の迫力を体現する、みや子という女傑が登場する。石坂が、結婚制度を超越した、過激で自由な思想を持っていたことがわかる。本書とあわせて読むと、更に理解が深まるはずだ。
評・小池昌代(詩人、小説家)


三浦雅士著「石坂洋次郎の逆襲」(講談社)2970円

三浦雅士 1946年生まれ。文芸評論家。著書『身体の零度』『青春の終焉』など多数。


2020年3月22日 東京新聞朝刊 9ページ 「読書-女が生き生き 蘇る価値」から引用

 JR奥羽本線・横手駅の電車の出発を告げるメロディは「青い山脈」である。「青い山脈」とは、戦後間もない頃に石坂洋次郎が発表した小説の題名で、これはベストセラーになり映画も大ヒットし、その主題歌「青い山脈」は今もナツメロとしてカラオケで高齢者が歌うらしい。横手駅が「青い山脈」を出発メロディにした由来は、石坂洋次郎が戦前の旧制横手中学校と横手女学校で教員をしていたことに因んでいる。旧制横手中学の石坂洋次郎の教え子には、戦争責任を取ると言って朝日新聞を退社した評論家のむのたけじ(1915年~2016年)氏がいる。私の伯母も旧制横手女学校の石坂洋次郎の教え子であった。1970年頃に東京でクラスメート数名で、石坂先生をお招きして小さなクラス会を開いたことがあった。数十年ぶりに先生にお会いしたのに、こちらから名乗る前に先生から「あなたは、旧姓佐原さんですね」と言われて、ビックリするやら感激するやらだったと話してくれたことがあった。あれは甥の私に対する自慢話だったのかなと、今にして思います。石坂洋次郎の没後数年たってから、横手市は市内に「石坂洋次郎文学館」を建てて、生前に石坂氏が使用した文机や文具、書簡、その他を展示してます。石坂作品の映画化の際は出演する機会が多かった女優の吉永小百合は、近年、JR東日本のコマーシャルフィルムの撮影で横手市を訪れたときに、撮影の合間に「文学館」を訪ねてみると、そこに若い頃の自分が石坂先生宛てに書いた直筆の手紙が展示してあり、自分は若い頃、こういう字を書いていたんだと、懐かしくもあり恥ずかしくもあったと、ラジオの番組で話していたことも思い出されます。






最終更新日  2020年07月05日 07時50分21秒
コメント(2) | コメントを書く
2020年07月04日
テーマ:ニュース(86510)
カテゴリ:ニュース
普段は山奥の秘湯や名所・旧跡の紹介記事を掲載する「しんぶん赤旗」日曜版のコラム「たび」は、6月21日の紙面に、珍しく戦争遺跡を紹介している;


 長野県長野市松代(まつしろ)を訪れました。国内最大級の戦争遺跡・松代大本営跡があります。

 アジア太平洋戦争末期、空襲を避け本土決戦を指揮するため、東京の皇居内にあった大本営の移転計画が浮上。松代が選ばれた理由は東京から離れ、近くに飛行場があり、山に囲まれた盆地で岩盤が硬く、「信州」は「神州」に通じるからなどです。象山(ぞうざん)・舞鶴山(まいづるやま)・皆神山(みなかみやま)に、総延長約10キロメートルの地下壕(ごう)を掘り、政府機関や大本営、天皇が居住する御座所などを移設する予定でした。秘密にされた工事は1944年11月に始まり敗戦まで続きました。

 総延長約5・9キロの象山地下壕の一部(約500メートル)が一般公開されています。松代大本営平和祈念館理事・久保田雅文さんのガイドで見学しました。



 壕入り口に「朝鮮人犠牲者追悼平和祈念碑」が立っています。3ヵ所の工事では最盛期に約1万人が働き、強制連行を含む朝鮮人労働者は多い時で約6500人でした。

 久保田さんは語ります。「地下壕掘削作業の主体は朝鮮人です。厳しい監督下、昼夜兼行の重労働です。食料も乏しく栄養失調になったり、発破や落盤で事故死したりした方も多くいました」

 入壕し5番壕(縦坑)を進むと、前方遠くに朝鮮人労働者の飯場があった、清野(きよの)地区から差し込む外光が見えます。さらに進むと横坑Dと交差。岩に突き刺さったままの削岩機のロット(棒)が残っています。横坑Bと11番壕が交差するあたりに、非公開壕の岩に書いた文字の写真を展示しています。韓国の都市「大邱(テグ)」と読めます。ズリ(砕石)を運んだトロッコのレールの枕木跡も鮮明です。灰色で硬いひん岩の荒々しい掘削跡を見ていると、削岩機やツルハシで岩を削り砕く音、工夫たちの汗や息づかいが脳裏に浮かびます。

 大本営の設置を予定していた、舞鶴山地下壕の入り口も見学できます。近くにぶ厚い鉄筋コンクリート造りの平屋が3棟立っています。宮内省と天皇・皇后御座所として建造し、地下壕には玉座やヒノキの風呂を設置。天皇制の象徴「三種の神器」を保管する地下壕も計画中でした。

 久保田さんは戦争加害・被害の視点から強調します。「朝鮮人の強制労働は加害の側面です。軍民20万人を犠牲にした沖縄戦は、突貫工事で進めた松代大本営建設の時間稼ぎでした。これは被害の側面です」
ツルシカズヒコ


【交通】象山地下壕までJR長野駅から車で約20分。長野駅前からバス便もあり
【問い合わせ】松代大本営祈念館  電話:026(228)8415


2020年6月21日 「しんぶん赤旗」日曜版 21ページ 「たび-国内最大級の戦争遺跡、松代大本営」から引用

 いつも温泉の記事を読んでるページに、いきなり戦争遺跡が出てきたのには驚きましたが、それにも増して「松代大本営」が戦後そのまま保存されて、今も見学が出来るとは知りませんでした。考えてみれば、掘ってしまった穴を元に埋め戻すためには掘ったときと同じ労力(もしくは、それ以上?)が必要になるし、中途半端に埋め戻してそこが地下壕だったことを記憶した人がいなくなると予測できない事故を招くことにもなりかねないことを考えれば、これは歴史遺跡としてしっかり管理していくことが最善の方法であることが理解できます。






最終更新日  2020年07月04日 01時00分07秒
コメント(3) | コメントを書く
2020年07月03日
カテゴリ:ニュース
新型コロナウイルスの流行で失業者増え生活保護の申請件数も増えていることに関連して、安倍首相が「困窮した人はためらわずに申請してほしい」と答弁したと6月21日の「しんぶん赤旗」が報道している;


 新型コロナウイルス感染対策で積極的な活用が求められている生活保護-。ところが自治体の窓口で、生活保護申請をさせない「水際作戦」が横行しています。この問題をとりあげた日本共産党の田村智子副委員長の追及(15日、参院決算委員会)に、安倍晋三首相は「ぜひためらわず申請していただきたい」と明言しました。


 貧困問題に取り組む支援団体には「所持金が40円」「住むところもない」といった命にかかわる深刻な訴えが寄せられています。こうした支援団体の要望を受け、家賃を代理で自治体が支払う住居確保給付金の対象拡大などを国は進めています。加藤勝信厚生労働相は、それでも足りない場合は「生活保護もしっかり活用していただく」と述べました。

 ところが、生活保護の申請に来た人を窓口で追い返す事例が相次いでいます。

 田村氏は、収入が激減した漁業者に自治体が「漁船を売ったら20万円ぐらいになるから、生活保護は無理」と言ったケースや、「自宅を売れば生活できる」と迫った事例を紹介。「漁船を売れというのは生業を手放せということ」「収入がなく食べるものに困る人に自宅売却の商談をしろというのか」と告発しました。

 ドイツでは新型コロナの対応として政府が”生活保護はあなたの権利です”と呼びかけています。田村氏は「日本でも『生活保護はあなたの権利だ』と国民に向け広報するときだ」と迫りました。

 安倍首相は「田村委員がおっしゃるように(国民には)文化的な生活を送る権利があるので、ぜひためらわずに申請していただきたい」「国民に働きかけを行っていく」と答弁しました。

 新型コロナの影響で解雇・雇い止めが増え続けるなか、どう雇用を守るのかが切迫して問われています。

 田村氏は「休業者が失業者になるかの瀬戸際に、政府が経済界に雇用を守ってほしいと強力に要請すべきだ」と求めました。

 安倍首相は「雇用を守っていくことが政治の最大の責任だ」と述べました。

 6月末に派遣労働者が契約を更新されず、休業手当が払われずに収入が絶たれる事態になることが心配されています。加藤厚労相は、派遣会社の業界団体に対し、派遣先企業への契約継続や、派遣元が雇用を継続し雇用調整助成金を活用することなどを要請したと説明しました。

 田村氏は「派遣会社だけでなく、労働者にも『辞めさせられない道がある』『休業手当を受け取る権利がある』と知らせてほしい」と求めました。


2020年6月21日 「しんぶん赤旗」 6ページ 「安倍首相が明言『ためらわず申請を』」から引用

 この記事に書かれた安倍氏の発言は一国の総理大臣として模範的な発言であり、普段からこのような発言で国民を啓蒙することも総理大臣として大事な役目ではないかと思います。外国のことは分りませんが、日本では生活保護に対する世間の偏見がひどく、昭和30~40年代は「生活保護を受けている家庭の子女が高校に進学などもってのほか」という認識が一般的だったため、子どもが高校に進学しても生活保護が打ち切りにならないように、子どもを知り合いの養子にするなどという、今から思うとウソのようなことがまかり通っていましたが、その後、世の中の認識も改められて、高校進学を理由に生活保護を止めることはなくなったと聞いております。それでもなお、生活保護と聞くと「不正受給」と条件反射する人はまだまだ多いのが現状で、社会に対する啓蒙活動はこれからも必要と思います。






最終更新日  2020年07月03日 01時00分04秒
コメント(11) | コメントを書く
2020年07月02日
テーマ:ニュース(86510)
カテゴリ:ニュース
防衛大臣が突然、イージス・アショア配備計画を停止すると宣言したことについて、文芸評論家の斎藤美奈子氏は、6月17日の東京新聞コラムに次のように書いている;


 河野太郎防衛相がイージス・アショアの配備計画のプロセスを停止すると唐突に表明した。

 イージス・アショアに関しては、もともと批判が百出していた。なぜ秋田と山口なのか。

 秋田は北朝鮮とハワイを結ぶ線上に、山口は北朝鮮とグアムを結ぶ線上に位置している。ほんとは日本の国土ではなく米国の防衛のためなんじゃないの? あまりにおもしろすぎるので、いまでは日本中の人が知っているイージス疑惑だ。

 配備候補地の選定に際し、防衛省の調査報告書に事実と異なるデータが記載されているとスクープしたのは秋田魁新報。昨年の6月5日だった。これで秋田の世論は反対に傾き、7月の参院選でも野党統一候補の寺田静氏が当選。2019年の日本新聞協会賞は、同社のスクープと一連の報道に与えられている。

 河野防衛相はゴチャゴチャ言い訳しているが、要は「高い・危ない・使えない」ってことですよね。わが国の弾道ミサイル防衛には絶対必要だと強弁してきたが、じつはそうでもなかった、と。

 「高い・危ない・使えない」ならほかにもある。オスプレイとか、ステルス戦闘機F35とか。もちろん沖縄県名護市辺野古に建設中の新基地も。

 政権は絶対違うというだろうけど、結果的には民意の力。強気だった政権でも、支持率が下がればサプライズが起きるのだ。
(文芸評論家)


2020年6月17日 東京新聞朝刊 11版 27ページ 「本音のコラム-これも民意」から引用

 付近の住民に迷惑が掛かるような余分な軍備を断念したのは朗報であるが、防衛大臣が与党に根回しもしないで、首相の了解をとっただけで唐突に「計画停止」を発表したのは、不思議な話だ。費用が掛かる、住民に被害が出る危険がある、実用性に問題があるという理由であれば、他にもそれに該当する案件はあるのに、河野大臣は何故、秋田と山口のイージス・アショアに限って民意を聞き入れる気になったのか、実に興味深い。






最終更新日  2020年07月02日 01時00分07秒
コメント(9) | コメントを書く
2020年07月01日
テーマ:ニュース(86510)
カテゴリ:ニュース
最近の新聞を読んだ感想について、法政大学教授の上西充子氏は14日の東京新聞に、次のように書いている;


 このところ各紙の記事中の「反発」の文字に目が留まる。「誤解を招くこととなりおわびしたい」という釈明と同様の違和感があるのだ。

 「誤解を」という釈明には、「誤解したそちらの側に問題はあるのだが、仕方がないのでこちらが頭を下げてやろう」という思いが感じられる。同様に「反発」という文字からは、「わけも分からず感情的にいきり立って、やっかいな人たちだ」という目線を感じるのだ。

 検察庁法改正案の今国会断念を伝える5月19日の朝刊各紙1面には「反発」の見出しが並んだ。

▽「政府、世論の反発受け」(朝日新聞)
▽「『定年特例』反発受け」(読売新聞)
▽「世論反発で転換」(毎日新聞)。

東京新聞も「定年延長 反発受け」との見出しを掲げた。東京新聞には「うねる民意 首相追い込む」の見出しもある。だが本文には、「世論の反発が強まっていた」「世論の怒りや反発が想定以上だった」との文字が並ぶ。

 広く拡散したツイッターのハッシュタグは「#検察庁法改正案に抗議します」であっだのに、なぜ「抗議」が「反発」に置き換わるのか。他方で、同日のしんぶん赤旗には「民主主義の底力示した」の大きな見出し。本文にも「反発」の文字はなかった。

 記者としては、「野党は反発」「世論は反発」と記しても見下しているつもりはなく、簡潔な表現として用いているだけかもしれない。しかし、では「検察OBも反発」と書くだろうか。

 6月9日の東京新聞朝刊から、類似の含意を持つ言葉を試しに拾ってみよう。「野党は(予備費十兆円計上について)追及を続ける構えだ」(―面)。「野党の追及を受けて経産省が(持続化給付金の契約の実態を)少しずつ明らかにしてきた」(2面)。「政府が新基地建設に固執することに野党から反発が出ている」(3面)。「(コリン・パウエル氏はトランプ大統領の対応を)『米憲法を逸脱している』と批判」(8面)。「内田聖子共同代表は(スーパーシティ法に)驚鐘を鳴らす」(21面)。

 いかがだろう。「抗議」「批判」「追及」「反対」「反論」「警鐘を鳴らす」等々、表現のしようはいくらでもある。

 新聞は世論をとらえるとともに世論を形成する役割を負う。読者に記事を届ける際には、読者の知性への信頼が本来、欠かせない。その新聞が、読者の見解を「抗議」や「反対」ではなく「反発」と表現するとき、そこには、「今後とも丁寧な説明に努めていきたい」と繰り返す政府と歩調をそろえる姿勢が、無意識のうちに潜んでいないだろうか。

 この機会にぜひ、「反発」という言葉を用いてきた文脈を問い直していただきたい。
(法政大教授)


2020年6月14日 東京新聞朝刊 11版 5ページ 「新聞を読んで-『反発』と見る目線」から引用

 上西先生のこの指摘は、中々興味深い。「反発」と聞けば「大した問題じゃないのに、この人たちは意味もなく騒いでいる」というニュアンスが込められているから、そういう目線で検察庁法案の審議が取り下げられた記事を読めば、総理大臣が検察人事に介入できるようにするという重大な問題を含んだ法案への反対の声だったという肝心な部分が「目隠し」されてしまいます。「反発」という言葉に限らず、全体として政府と歩調をそろえようとする無意識の姿勢が、安倍政権の長期化を後押ししてきたのではないでしょうか。






最終更新日  2020年07月01日 01時00分05秒
コメント(6) | コメントを書く
2020年06月30日
カテゴリ:読書
都知事選に合わせて文藝春秋社から「女帝 小池百合子」を出版したノンフィクション作家の石井妙子氏は、26日の「しんぶん赤旗」で、執筆の意図を次のように説明している;


◆どういう人物か知るべきだ

 これまで、男性優位の日本社会で努力と研鑽(けんさん)を積んで一事を成した近現代の女性たちの評伝を書いてきたノンフィクション作家の石井妙子さん。今回、『女帝 小池百合子』を出版しました。なぜ小池百合子東京都知事を対象としたのか。本書で明らかにした、その半生と実像を聞きました。
(平川由美)


 2016年、女性初の東京都知事となった小池百合子氏について書いてほしいと、ある雑誌から依頼を受けたのがきっかけです。それまでは共感できる女性を書いてきました。小池氏については、がんを乗り越えた都知事選の対立候補を「病み上がりの人」と誹謗(ひぼう)したことなどに違和感があり、人として信頼できるのか疑問を持っていました。しかし都知事であり、女性初の総理にもなるかもしれないという。どういう人物かを国民は知るべきだと考え、本書を執筆しました。

 3年半かけて100人以上の関係者に取材し、小池氏の著作や発言録、新聞や雑誌の記事など大量の資料を読み、精査しました。氏にも3回、取材を申し込みましたが断られました。

◆権力を目指す半生から見えてくる社会の歪み

 裕福な家庭に生まれ育った芦屋(あしや)令嬢、外国語に堪能な才女といった生い立ちと経歴を売り物にしてきた小池氏ですが、この自分語りの矛盾は数え切れません。国立カイロ大学を日本人女性で初めて、しかも首席卒業、という学歴詐称疑惑は、過去を塗り変えてきた氏の半生を象徴する一例です。




◆やりなおして本当の人生に

 私のもとに、氏とカイロで2年間同居していた早川玲子さん(仮名)から「(小池氏は)カイロ大学では1976年の進級試験に合格できず、従って卒業はしていません」と記された手紙が届いたのは2018年2月でした。

 私は早川さんが住むカイロへ行き、面会を重ね、当時の手帳、日記、手紙など全て譲り受けました。小池氏より10歳ほど年上の早川さんは「生きているうちに、百合子さんが嘘(うそ)によって現在の地位を得たことを公にしなければ、自分も罪を抱えたまま死ぬことになる」と言い、「きちんと当時、注意しなかったことを後悔している」と自分を責めていました。そして「今からでも遅くない。人生をやり直してほしい。本当の人生にしてほしい」と。

 小池氏は「卒業証書も卒業証明書もある。カイロ大学も卒業を認めている」と繰り返しますが、証書の矛盾や疑問点も本書で触れています。エジプトには日本から、氏が国会議員だった2016年度までに無償資金協力1568億円を含む多額のODA(政府開発援助)が投入され、カイロ大学にも一部が渡っています。こういった事実と併せて、読者に判断を託したいと思います。

◆弱者や女性に冷酷な仕打ち

 小池氏には社会的弱者や女性への冷酷な言動も顕著です。阪神・淡路大震災後、地元芦屋の被災女性たちが氏を訪ねて窮状を訴える中、マニキュアを塗り続け一度も顔を上げず、「もうマニキュア、塗り終わったから帰ってくれます? 私、選挙区変わったし」と言ったこと。小池氏も参加した北朝鮮拉致被害者家族の会見が終わった後、バッグがないと慌てて会場に戻ってきた氏が「あったー、私のバッグ。拉致されたかと思った」と叫んだこと。

 小泉政権で環境大臣だった時は水俣病患者とアスベスト被害者の救済には無関心で、クールビズと風呂敷に入れ込んでいました。

 前回の都知事選で東京五輪や築地市場移転の利権と癒着の構造を追及し「ジャンヌ・ダルクになる」「崖から飛び降りる」と訴え支持を集めながら、就任後、築地の女将(おかみ)さんが「負けないで築地を守ってください。私たち小池さんをジャンヌ・ダルクだと思ってます」と声をかけると、「ジャンヌ・ダルクはね、火あぶりになるからイヤ」と突き放したといいます。

 「政治家としてやりたいことはなく、ただ政治家がやりたいんだと思う」「政治哲学も信条もなく、ただ注目を浴びたい。だから時の人気者や実力者にぱっぱっと乗り換える」といった証言は多くありました。過去には自民党批判をしながら、自民党入りする時には「自民党を外から壊すのではなく、内から壊すほうが早いと思った」と言う。上を目指しているだけで理由は後からつけられます。

◆メディアの罪 有権者の責任

 なぜ小池氏はここまで上りつめたのか。ミニスカート姿で自身を「政治改革のチアリーダー」と称したりする新奇さに飛びついて、氏が語るままを検証もせずに報道してきたメディアの罪は大きい。女性議員をお飾りや広告塔のように利用する政治のあり方も問題です。本質を見ないで上辺(うわべ)のファッションやパフォーマンスにつられて投票する有権者にも責任があるのではないでしょうか。

 小池氏の半生からは社会の歪(ゆが)みも見えてきます。権力を握れば人は寄ってくるし思い通りになる。人を信用できない荒野のような孤独の中で、ひとり生き抜いてきた女性の姿も浮かんできて哀(かな)しみを覚えます。

<いしい・たえこ> 1969年神奈川県生まれ。白百合女子大学卒、同大学院修士課程修了。著書『おそめ』『原節子の真実』(新潮ドキュメント賞)、『日本の天井 時代を変えた「第一号」の女たち』ほか


2020年6月26日 「しんぶん赤旗」 1ページ、9ページ「『女帝 小池百合子』出版、ノンフィクション作家 石井妙子さんに聞く」から引用

 都知事選の公示日を前にしてこの本が店頭に並べられれば、人々の耳目を奪いベストセラーになるのは必至ですが、しかし、こういう書籍に興味を示すのは初めから小池氏に批判的な人々に限定されるためか、普通の書籍よりは売れるとは言え、選挙の情勢を変えるほどの威力はない様子なのは残念なことです。石原慎太郎のときも不思議に思いましたが、都民は小池都政の何が気に入って再選を支持するのか、まったく理解できません。






最終更新日  2020年06月30日 01時00分06秒
コメント(5) | コメントを書く

全5825件 (5825件中 1-10件目)

1 2 3 4 5 6 >

PR


Copyright (c) 1997-2020 Rakuten, Inc. All Rights Reserved.