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2008/10/29(水)23:17

北朝鮮の非核化-日本は安保の応分負担を(28日の日記)

政治問題(2275)

 朝鮮半島非核化に向けて米国政府が朝鮮に対する「テロ支援国家」指定を解除したことに関連して、静岡県立大学教授・伊豆見元(いずみはじめ)氏は13日の朝日新聞で次のように述べている;  米国が北朝鮮に対するテロ支援国家指定を解除した。解除が実現した背景には、ブッシュ政権が、北朝鮮にあえて一定の譲歩をすることになっても、核交渉の継続を図ることが不可欠だとの判断に至ったからだ。焦点だった核施設の検証は、申告された施設では実施に移されるものの、未申告施設について「相互の合意」が必要となる。米国は明らかに譲歩したのである。  私は9月下旬から1週間はどワシントンを訪れ、ブッシュ政権の高官や政策担当者たちと意見を交わした。議論を通じて痛感させられたのは、米国の観点からすれば、健康悪化説が伝えられている金正日(キムジョンイル)総書記が「機能不全」に陥ることは、極めて好ましくないということであった。  金総書記が政策に関与できなくなると、北朝鮮は米国との核交渉に終止符を打つかもしれないとの懸念を、ブッシュ政権は少なからず抱いてきた。9月に入って北朝鮮が寧辺の核施設の凍結を解く方向に踏み出し、とりわけ再処理施設の再稼働に手を着け始めたことは、こうした懸念に一段と現実味を与えていた。  今回のテロ支援国家指定の解除を受けて、北朝鮮はふたたび核施設を凍結し「無能力化」作業を再開する。これにより、年末までに、非核化への「第2段階措置」がぼば終了する見通しも出てきた。  解除発表を受けて、日本の国内では、拉致問題を解決するための有力なテコが失われてしまったとの指摘があり、先行きについての不安も広がっている。だが、ここで以下の2点を冷静に確認しておく必要があるだろう。  □ ■ □  第一は、米国が北朝鮮を「テロ支援国家」と認定した理由の一つに「拉致問題に対する不誠実な態度」が含まれていた時ですら、拉致問題は進展しなかったという事実である。このことは、指定解除が拉致問題の解決にマイナス効果を及ぼす可能性がないことを、十分に示している。  第二は、拉致問題の解決に北朝鮮が真剣に取り組むよう求める項目が入った「北朝鮮人権法」の改正を、9月22日に米上院が承認したことである。改正では同法に基づく人権問題担当特使の権限が大いに強化された。パートタイムだったのが常勤になり、ランクも大使級に引き上げられた。特使の任命には米上院の承認も必要となり、米議会の関与の度合いも強まる。  当然のことながら、「北朝鮮人権法」は政権を超えて効力を発揮する。米国が拉致問題の解決に向け、北朝鮮に働きかけ続けることを担保するものである。われわれは、米国の支援協力が継続されることを忘れるべきではない。  □ ■ ロ  オバマ政権であれマケイン政権であれ、米国の新政権が北朝鮮の核問題でまず取り組むべき課題は、再処理をすれば約8キログラムのプルトニウムを抽出できる使用済み核燃料8千本を、国外に搬出させることである。  搬出できずに再処理を許せばどういうことになるか。核兵器1発の製造には最低でも4キログラムのプルトニウムが必要とされるので、北朝鮮は1~2発の核兵器を新たに手にしかねない。テロリストに売却する可能性も出てくる。  また、抽出したプルトニウムを使えば、核兵器の小型化に必要な核実験を複数回、行うことができる。そうすれば「核弾頭」の製造が視野に入り、北朝鮮が「核ミサイル」を手にすることが現実味を帯びる。日本の国土のすべてを射程内におさめる「ノドンミサイル」を実戦配備していることは、まず間違いない。 「ノドン」が「核ミサイル」になるとなれば、日本にとって大変な軍事的脅威が生じるのである。  燃料棒の国外搬出が実現すれば、わが国の安全は確実に高められる。必要な経費は3億ドル(約300億円)と見込まれる。安全保障に寄与することが産めて明快な措置に対しては、進んでその費用を負担すべきではないだろうか。確かに日本政府は、北朝鮮を非核化に導くための「6者協議」の合意に関し、「北朝鮮へのエネルギー・経済支援は、拉致問題の進展があって初めて実行に移す」との独自の立場を貫いている。米国、中国、韓国、ロシアの4カ国はそれぞれ、すでに約1億5千万ドル(約150億円)のエネルギー支援を行ったが、日本は一切拠出していない。  だが、こと燃料棒の国外搬出にかかわる経費は、北朝鮮への支援ではない。北朝鮮による核の脅威を確実に減少させるための経費なのである。  拉致問題の進展を生み出す努力を重ねることは言うまでもない。だが安全保障と拉致問題とは切り離して考えるべきだ。テロ支援国家指定の解除を受けて非核化に向けたプロセスが軌道に乗っていけば、こうした姿勢がさらに求められるだろう。 2008年10月13日 朝日新聞朝刊 13版 8ページ「私の視点-北朝鮮の非核化 日本は安保の応分負担を」から引用  伊豆見氏が指摘するように、米国がテロ支援国家指定を解除した今となっては、安全保障と拉致問題は切り離して対応していくべきであり、日本政府には柔軟な発想が求められている。

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