自民党が報道機関の幹部を公然と呼びつけて恫喝するという民主主義社会にあるまじき事態について、慶応大学教授の粂川麻里生(くめかわまりお)氏は3日の東京新聞コラムに、次のように書いている;
近ごろ、自民党の政治家が報道機関の重役を”どう喝”したというようなニュースをよく目にする。最近も、4月17日にNHKの堂元光副会長と、テレビ朝日の福田俊男専務が自民党の情報通信戦略調査会に呼び出されて、非公開で事情聴取された。
だが、東京新聞は意外にクールだった。4月21日の『こちら特報部』では、「圧力は政治の常道」「弱腰のメディア側」と、政権与党からの「圧力」を「今も昔もあること」とし、むしろメディア側に批判や抵抗の姿勢がないことを問題視していた。ごもっともである。
たとえテレビの許認可権は政府が握っていようとも、メディアにはその姿勢を広く公衆に問う手段が与えられているのだ。言論で戦わなければ、報道機関は敗北主義に堕すのみである。
他メディアを批判するだけあって、東京新聞の戦う姿勢は、頼もしい。同紙は4月22日の朝刊1面で、自衛隊による他国軍支援が国会の事前承認を必要とするのは、「国際平和支援法」(仮称)の対象となる、比較的危険度の低い事態「のみ」であることを報じた。
「武器供与」などについては「重要影響事態安全確保法」(仮称)が、さらに重大な「武力行使」には「武力攻撃事態法」(改正案)がそれぞれ適用され、これらのより危険度の高い事態においては、「例外的に国会の事後承認が認められる」というのである。しかも、この3つの事態の境界は、かなり曖昧だというのだ。この日の東京新聞は1面のみならず、「核心」(3面)や社説(5面)の欄なども用いて、この問題を詳しく論じていた。
もちろん事は国防であり、戦争である。あらゆる決定が国会の承認を経なければならないのでは、らちが明かないのは当たり前だ。しかし、だからこそ、自衛隊の派遣には慎重な歯止めがなされなければならない。今のままでは結局、「いざとなったら、われわれの判断に全面的に任せてください」という政府に、事実上、白紙委任状を出すのと同じことになる。
驚くべきことに、このような重大事をきちんと指摘していたのが、私の知る限りでは東京新聞ただ一紙だったのである。他の大手紙はそろって、「例外なく事前承認が必要になった」と書いていた。まさに「御用記事」である。われわれ一般国民は、権力と癒着して「報道ごっこ」でお茶を濁す輩(やから)と、毅然(きぜん)たる批判精神を貫くジャーナリストをしっかり区別し、後者を支えていかねばなるまい。
私の職場などでも「苦情」や「クレーム」を恐れる風潮は、強くなっている。しかし、ファイティングポーズを取らなければ無条件で負けになるのは、ボクシングだけではないのだ。
(慶応大学教授)
2015年5月3日 東京新聞朝刊 11版S 5ページ「新聞を読んで-両拳を高く掲げよ」から引用
戦前の新聞は負け戦も「勝った」と報道して政府と軍部に忠実に行動して国民を欺いたのであったが、その姿勢は現代にも受け継がれて、今また「赤旗」と「東京新聞」以外は自民党と政府に都合の良い記事を書いて国民を騙しているわけだ。騙すほうも騙すほうだが、騙される方も騙される方である。安倍政権の目的は、今はいい加減な言葉を羅列してとにかく憲法違反の「戦争法案」を次々と成立させて、その後でこれらの法律と矛盾することが書いてある憲法はおかしいから改正するべきだ、と言い出す作戦だ。こういうくだらない作戦に騙される国民が過半数を超えないことを祈るのみである。