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2015年07月29日
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テーマ:ニュース(74126)
カテゴリ:歴史認識
 日本軍「慰安婦」問題解決全国行動共同代表の梁澄子(ヤンチンジャ)氏は、韓国の慶北大学法学専門大学院教授の金昌禄(キムチャンロク)氏と、東京大学名誉教授の和田春樹(わだはるき)氏と3名で、月刊誌「世界」7月号で座談会を開き、慰安婦問題の解決のためにこれまでにしてきたことと今後の展望について、次のように語っている;


◆「法的責任」とは何か

 -今年は日韓基本条約締結から50年ですが、日韓関係か改善する糸口が全く見えません。最大の課題は「慰安婦」問題です。この問題には長い経緯がありますが、2014年6月2日、第21回「日本軍『慰安婦』問題アジア連帯会議」は、解決に向けた具体的な内容を「日本政府への提言」(以下提言、287頁参照)としてまとめ、政府に提出しました。


  まずこの提言に至る経緯からお話ししたいと思います。2011年8月30日に韓国の憲法裁判所で、「慰安婦」問題解決のために努力していない韓国政府の不作為は違憲であるという内容の判決が出ました。これを受けて韓国政府が動き出し、同年9月、11月の2回、二国間協議を申し入れる口上書を日本政府に渡しました。日本政府は公にはそれに対して答えませんでしたが、水面下でいろいろな動きがあって、12年5月の北京での野田首相と李明博大統領の首脳会談に向けて、「佐々江案」とのちに呼ばれる案が日本政府から韓国政府に示されていたという報道もありました。その内容について、日本で「慰安婦」問題に携わっている私たちも様々なルートから知り、議論しました。そこで問題になったのは、これまで「法的解決」を被害者、被害国側はずっと求めてきたわけですが、それは具体的にはどういうことなのか。運動の過程で韓国側から出て来た言葉だったので、実は私自身もその具体的な中身をずっと知りたいと思っていたのです。

 2000年、民主党が野党の時代に「戦時性的強制被害者問題解決促進法案」という議員立法が提案され、民主党、社民党、共産党の3党でその法案を国会提出した時に、被害国各国を回って韓国でも各地の支援団体などに全部説明をした。それは、決して100%諸手をあげて賛成できるような内容ではないけれども、前文に書かれている認識は、これが法律としてきちんと制定されるのであれば、その立法は韓国で被害者が求めてきた「法的解決」だと受け止め得るだろう、と判断したと聞いています。ところが2009年に民主党が与党になったら、小沢一郎幹事長が政府・与党の二元的意思決定を一元化するために議員立法は原則禁止だとして、政府提案に限ることを決めました。結局、立法解決によって法的解決を実現する道は閉ざされてしまったのです。

 それでも、いまとりあえず韓国で司法や政府の動きがあるわけですから、日韓を動かそうと日本側も運動関係者(日本軍「慰安婦」問題解決全国行動)と法律家、金昌禄さんもメンバーですが韓国側も挺対協(韓国挺身隊問題対策協議会)と法律家で、最初はタスクフォース(TF)と言って、公にはせずに、2012年7月から翌年8月までの間に4回、両国を行き来しながら議論を続けました。提言の下地になるようなおおよその考え方は、その4回の会議で導き出されたと言えます。

 被害者たちが真っ先に何を求めているのか。それは、事実をありのままに認めてほしいということです。その事実、自分たちの経験に対して政治家が否定的なことを言ったりすると、彼女たちは眠れないわけですね。そういうことがないように、きちんと事実を、自分たちが被害者だったということを加害国の日本政府が認めること、それが第一だ、と。そして、認めたらその認めたという事実に則った謝罪、理由のない謝罪ではなく、なぜ謝るのか、その理由を明確にした謝罪、そして謝罪をしたらそれが本当だと信じられるような賠償。どこの国の被害者でもこの3つを必ず言うわけです。

 この被害者の要求に照らして、また、4回の会議に参加して私が理解したのは、犯罪を犯した国家が何をやったのか具体的に認めれば、それは法的な責任を認めたことになるのだということです。ですからそれを反映させて、提言のもとになるような結論をいったん日韓TFで出しました。最終的には日本側でまとめた文書を韓国側に預けて、結論については韓国側で議論してもらうという段取りまで行ったところで、ちょうど第12回「日本軍『慰安婦』問題アジア連帯会議」の開催に当たりました。だったら韓国側の最終結論を待っているだけではなく、アジア連帯会議で集まった8力国全体で議論しようということになりました。すでに第二次安倍政権が発足していて、もう日韓が突破口という政治状況でもなくなったということもあり、本来「慰安婦」問題は日韓だけの問題ではなく、アジア全域、オランダにまで被害者がいる間題である、全体解決を目指すという姿勢に立ち返ってアジア連帯会議で共有し、さらに内容を詰めて日本政府に対する提言として出そうということになったのです。

  現在、「法的責任」が「慰安婦」問題の中心的なテーマのようになっていますが、そもそもはそうではなかったと思います。「慰安婦」問題が最初に公になったのは1990年代初頭ですが、その時から現在まで被害者たちが求めてきたものは同じであって、犯罪の事実を認めよ、真相究明せよ、それから謝罪、賠償、歴史教育、慰霊事業、責任者処罰です。これらを主張しながら、被害者あるいは支援団体が、最初の段階では「法的責任を取れ」とは言っていなかった。

 ご承知のように、当初日本政府は「慰安婦」について業者がやったことだと、日本軍による犯罪という事実そのものを認めなかったわけですが、91年に朝日新聞で吉見義明教授の発見した資料が報道されて、そのあと加藤官房長官がお詫びと反省を表明した。また日本政府が調査をして、その結果に基づいて1993年に河野談話が出たということですね。

 河野談話では軍の関与という事実を認めましたが、関与したということは、責任があることを意味するのであって、事実と責任の存在を認めたわけですね。しかし法的には解決済みという立場だった。法的責任は解決済みだけれど、しかし何かやらなければいけないので、「道義的責任」をとるために、女性のためのアジア平和国民基金を発足させるということになりました。

 つまり、「道義的責任は取るけれども法的責任は取れない」と日本政府から発信されたのですが、それは被害者側から見ると、どういう意味なのかよくわからない。責任があると言っているのか、ないと言っているのか。結局、日本政府はちゃんとした責任を認めないということだと受け止められて、多数の被害者が国民基金を拒否したという経緯です。

 「法的責任」という言葉が中心になったのは、こうした流れの中でのことです。被害者は、最初は「法的責任」という言葉自体は使っていなかった。しかし日本政府の「道義的責任しか取れない」という対応によって、「法的責任」という言葉が中心に浮上してきたのです。

 しかし同時に、実は、被害者側が内容として求めていたのは、そもそも法的責任に当たることなのですよ。一体、法的責任とは何なのか。被害者たちが求めてきた要求事項こそが法的責任に当たるのです。

 国際法律家委員会(ICJ)、クマラスワミ報告、マクドゥーガル報告等々、国際機関のいろいろな報告書がありますが、その内容も大体被害者たちの要求事項と同じです。事実を認めて謝罪をして賠償して、責任者を罰せよ、と。それこそが法的責任なのです。つまり最初から法的責任が求められてきたのに、日本政府の対応によって、何か別のものがあるような議論になってしまった。今回の提言は、それをもう一度整理したということだと、私は受け止めています。

  今回の提言の中に法的責任を取れという文言がなかったために、「挺対協は方針を転換した」とか「下ろした」と報道されたのは全く間違いで、最初から一貫して言ってきたことを今回整理して述べた。それは法的責任を取れということです。金さんの言われたように、ある時期、日本政府によって出された「法的責任」という文言が大切であるかのように、運動側も誤解していたのかもしれません。だから私も「法的責任」の中身とは何なのだろうという疑問をずっと持っていたんですね。一年間議論してみて、その中身は最初から言っていたことだと理解できたので、改めて整理して出した。ところが自分たちの理解の過程が十分に伝わらずに、メディアでも「法的責任」の文言がなくなったという一点で、要求がなくなったと受け止められてしまった。

  法学者の立場から見ると変わったことは何もありません。そもそも「法的責任」が求められてきたのですから。


岩波書店「世界」2015年7月号 158ページ「『慰安婦』問題の解決とは何か」から一部を引用

 慰安婦問題が何故いつまでも未解決のままなのか、この記事を読むとよく分かります。90年代に被害者が名乗り出るまでは、日本政府は従軍慰安婦は民間業者が営利目的で勝手にやったもので、そんなものにまで政府が責任をとることはないという認識で、韓国政府もよく調査をせずに、そんなものだろうと、深く考えずに65年の日韓基本条約を締結しています。ところが、被害者が名乗り出て、慌てて政府保管の公文書を調べると、次々に日本軍が関与したことを示す公文書が発見され、日本軍どころか警察や外務省も便宜を図っていたことが明るみに出るに及んで、これは政府としても責任を認めざるを得ないということで河野談話が出たと、こういうわけですから、今後日本政府は河野談話で述べた項目を忠実に実行して、被害者の名誉回復を行なう義務があると思います。








最終更新日  2015年07月29日 16時43分41秒
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