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2016年05月11日
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テーマ:ニュース(99392)
カテゴリ:歴史認識
 インパクト出版会から刊行された『沖縄戦場の記憶と「慰安所」』について、フリーライターの山城紀子(やましろのりこ)氏は8日の「週刊金曜日」に、次のように書評を書いている;


 沖縄には「慰安婦」に関連する3つの碑がある。不法滞在者になった元「従軍慰安婦」に対して、1975年、入国管理局が在留特別許可を出したとする新聞報道で存在が知られることになったぺボンギさん(91年死去)。97年、彼女が「慰安所」生活を送った渡嘉敷(とかしき)にアリランの碑が建った。また「慰安婦」被害者に対する碑文を刻んだ「恨(はん)の碑」が読谷村(よみたんそん)に。そして、宮古島にも「慰安婦」を見た住民の提案を機に2008年、「慰安婦のための碑」(「アリランの碑」とアジア太平洋戦争期に「慰安婦」とされた女性たちの12カ国の言語で碑文を刻んだ碑「女たちへ」)が建てられた。

 2月半ば、宮古島を訪ねた。本書に登場する与那覇博敏(よなはひろとし)さん(82歳)に初めてお会いした。子どもの頃、「慰安婦」にされた女性たちに会った人である。「坊や、坊や」と与那覇さんを呼んだ女性たちの話をしてくれた。与那覇さんの家の前を通ってツガガー(宮古の方言で井戸)で洗濯をするため行ったり来たりを繰り返していたという。クース(唐辛子)をあげて喜ばれたこと、軍主催の演芸会の時に女性たちが歌った「アリラン」の歌を覚えたこと、大人になって女性たちが宮古にいたことの意味を知ったことなどを語ってくれた。自宅そばの大きな石は、彼女たちが洗濯の行き帰りにいつも休んでいた石である。

 著者は与那覇さんと会った時の様子を本書の第9章で描いている。「彼は何もない野原の中の『慰安婦』が休んだ場所にぽつんと大きな石を置き、その周りの小さな花たちに水やりをしていた。『慰安婦』たちを記憶にとどめようとしていたのである」。まさにその石が「アリランの碑」である。

 日常の暮らしの場が戦場となり、住民の4人に1人が犠牲になった沖縄では、長いこと沖縄戦の記憶が沈黙の中にあった。生存者や体験者が文字や言葉で伝えるようになったのは沖縄戦から「33回忌」を経た70年代後半からである。「性暴力」や「性被害」について語りあうのはさらに時間を必要とした。ジェンダーの視点から社会や歴史を問い直し、議論を積み重ねた90年代に入ってからである。

 44年3月に第32軍が創設されてから沖縄戦が始まるまでの1年間に、のベ145か所の慰安所が作られたことがわかっている。日本軍が配備された場所には必ずといっていいほど慰安所が設置され、日本軍の移動に伴って慰安所もまた移動した。

 本書は韓国の若い女性の学者が10年以上にわたって韓国、東京、沖縄を行き来しながら「沖縄戦」と「慰安所」を中心に聞き取り調査をしてまとめた学術書である。「陣中日誌」や市町村誌を読み込み、沖縄戦や慰安所に関する論文や書籍に目を通すなど、気の遠くなるような労に挑み、一冊の本として刊行されたことに大きな拍手を送りたい。

 住民の見た「慰安所」の記憶にこだわり続けた視点が生きている。文字を追いながら「慰安婦」にされた戦場の中の女性たちのさまざまな姿を想起させられる。兵隊と共に命がけで戦場を逃げ惑う姿、「朝鮮ピー(性器)」と蔑まれる様子、戦闘が激しくなってからは補助看護婦として働かされていたことも記憶されている。

 戦時下、そして軍隊との関わりで女や子どもに何が起こるか、「慰安婦」に出会った人たちの証言は普遍的な意味を持つ。5兆円という過去最大の防衛費予算が組まれ、安保関連法が施行されてしまった今だからこそ、手にしてほしい一冊である。

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2016年4月8日 「週刊金曜日」1083号 50ページ「住民の見た『慰安所』の記憶にこだわり続けた視点」から引用

 慰安婦問題に関する学術分野の研究は日々進歩しており、具体的な事実が次々と明らかになっているにも関わらず、日本政府の認識は河野談話を発表した時点で政府が確認した史料のみであり、その後も政府機関が保管している史料の中なら新たな史実がでてきても目を向けようとしていません。しかし、そのような姿勢では国際社会の趨勢について行けなくなりますから、やがては河野談話よりも踏み込んだ「談話」を発表しなければならない事態が到来することでしょう。その時までに、私たちは歴史と率直に向き合う能力をもった政府を用意したいものでございます。







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最終更新日  2016年05月11日 18時55分52秒
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