赤旗編集局編「語り継ぐ 日本の侵略と植民地支配」(新日本出版社刊)について、5月22日の「しんぶん赤旗」は次のような書評を掲載した;
本の宣伝コピーにある「過去の過ちと真撃(しんし)に向き合ってこそ未来がある」との言葉が、アジアの国々に対して、敗戦後70年の日本がとるべき姿勢の全てを物語っている。
「前事不忘 後事之師」。現代を生きる日本人一人一人が、曽祖父母・祖父母の時代に、アジアの国々に対し何をしてきたのかを忘れることなく、近代の歴史を見つめ反省してこそ、平和な未来への展望が開けてくる。
若い記者たちが当事者しか語り得ない戦場での事実、被害と加害、その両方に光を当てて聴き取り、記録された証言が並んでいる。「庶民の語る歴史」、オーラルヒストリーの「重い言葉」が詰まっている。「日中アヘン戦争」「ソ満国境要塞(ようさい)建設の強制労働」「重慶爆撃による被害」など、これまでの歴史書ではあまり伝えられなかった貴重な証言もある。
戦争は謀略で始まる。戦争をやりたくてたまらない老人・金持ちが戦争を始め、若者や子ども、女性が犠牲になる。戦争を始めた老人・金持ちは、誰も責任を問われない。関東軍による「満洲事変」しかり、ブッシュによる「イラク戦争」しかり。
記事の終わりに略年表が添えられてあったり、図版や地図も多く、視覚的にも理解を深める工夫がなされている。さらに、「大日本帝国の侵略地図・近代侵略年表」が冒頭に備えられていたならば、近代史を学ぶ若い読者の理解がより一層深まるのではないだろうか。
「侵略の歴史」「戦争による負の遺産」を学ぶ書として、この本を多くの若者にぜひとも読んでもらいたい。過去の過ちを真摯に見つめ、歴史の真実に迫る、導きの良書である。
(今井雅巳・高校講師)
赤旗編集局:阿部活士、栗原千鶴、小林拓也、本田祐典、本吉真希、若林明記者ら
2016年5月22日 「しんぶん赤旗」日曜版 29ページ「戦争による負の遺産を学ぶ」から引用
敗戦から70年も経ってしまって、戦争を体験した人たちは年々少なくなっていく今日、体験者の記憶を記録に残すことは大変貴重な作業になりました。また、後世の人たちも昔どんなことがあったのか、具体的に認識する上で役に立つ資料となるので、今後も精力的に聞き取り調査を行い、こういう本をどんどん出版してほしいと思います。