より良い明日をめざして

2016/08/27(土)20:19

自分の権利を国家に売り渡すな(27日の日記)

 ジャーナリストの林信吾氏は、イギリスのEU離脱を決めた国民投票と日本の憲法改正を決める国民投票の共通点について、7月22日の「週刊金曜日」に次のように書いている;  かなりの程度まで予想されていたことではあるが、先の参院選において、自民党を中心とする改憲勢力が3分の2の議席を占めた。  今こそ、去る6月23日に英国で行なわれた、EU(欧州連合)からの離脱を決めた国民投票に、あらためて注目すべきではないだろうか。  言うまでもなく、わが国でも改憲の発議から国民投票へ、という動きになることが、現実味を帯びてきたからである。  なにより、離脱決定後の英国の混乱ぶりを見るにつけ、後悔先に立たず、とはこのことだ、との思いを強くするのであり、近い将来、改憲の是非を問う国民投票があったような場合には、断じて英国の轍(てつ)を踏んではならぬ。  まず、離脱派のスローガンは、「国家を我らの手に取り戻せ」であったが、ここで早くも、「日本を取り戻す」という安倍内閣のスローガンを連想した読者も、決して少なくないであろう。そう。両者の発想は、実はかなり似通っているのだ。  そもそもEUとはなにかと言えば、端的に、二度の大戦を経験したヨーロッパ大陸諸国が、戦争の恐怖から永久に解放されたいと願い、国家の主権を制限し、国境を有名無実化する「国境なき国家連合」を目指したというものである。  これに対して英国には、冷戦時代でこそ、西欧諸国がひとつにまとまることに意義があったが、今さら通貨や国境の管理権までEU委員会という官僚機構に譲り渡すべきではない、と言って憚らない政治家が多い。  事の当否を論ずる前に、占領軍に押しつけられたものだから、という理由で、まずは改憲ありきの議論を展開する人たちと、どこか似通って見えるのである。  始末の悪いことに、どちらも自分たちを真の愛国者だと信じて疑わない、という共通点もある。  さらに言えば、EUから離脱すれば、分担金を福祉に回せるとか、離脱派の主張は嘘八百と言って差し支えないようなものであったことが、今になって次々と暴露されている。 ◆投票率の縛りは国難  こうしたことを受けて、ハーバード大学のケネス・ロゴフ教授は、「投票率が70%だった現実を踏まえると、有権者のわずか36%が離脱キャンペーンに乗せられたに過ぎない」 「英国のEU離脱について、ハードルはより高くあるべきだった」  と主張する(『週刊東洋経済』7月9日号より抜粋)。  たしかに日本でも、憲法改正をめぐる国民投票については、投票率の縛りをかけておくべきではないか、との議論はある。  仮に、昨今の国政選挙並みに、投票率が50%そこそこであったなら、有権者の25%程度の賛成でも「改憲派が多数」となってしまうからだ。  しかし、著名な憲法学者である石川健治・東京大学教授は、こう語る。 「投票を義務化している国もありますが、日本はそうではない。純粋に権利ですからね。権利を行使しなかった者は黙って結果を受け容れる。そういう制度設計になっている以上、あらかじめ投票率の縛りをかけるのは、ちょっと無理でしょう」  今はなき菅原文太氏は、 「政治の役割は二つある。ひとつは国民を飢えさせないこと。もうひとつは、戦争をしないこと」  と喝破した。  有権者の役割も二つあるのではないだろうか。  ひとつは、政治家の嘘に乗せられないこと。もうひとつは、自分の権利を国家に売り渡さないことだ。  しかも消息筋によれば、官邸は今後「9条は変えない。戦争はしない」と強調しつつ「震災を想定しての」緊急事態条項を通そうとする可能性がある。まずは改憲の既成事実を作りたいのだろう。 はやし しんご・作家、ジャーナリスト。 2016年7月22日 「週刊金曜日」 1097号 26ページ「自分の権利を国家に売り渡すな」から引用  イギリスのEU離脱は歴史の進歩という観点からみて「是」なのか「否」なのか、素人にはなかなか判断が難しいところであるが、林氏のように「国家連合を組織することによって国境をなくすことが歴史の進歩である」という明確な価値観を持っている人の目には、いろいろと見えてくるものがあり、EU離脱を主張する政治家は「国家を取り戻す」と言い、憲法改正を主張する日本の政治家は「日本を取り戻す」と主張している。そう言われてみれば、確かにこれは偶然の一致というにはあまりにも一致しすぎており、政治家の嘘に乗せられてはならないという「警鐘」は耳を傾ける価値があると思います。日本を取り戻すなどと言うと、まるで今は奪われているとでも言いたげですが、私たちの日本は誰にも奪われてはいません。安倍氏が取り戻したいのは戦争に負けて解散させられた軍隊なのであって、その本音を隠すために「日本を・・・」と言っているに過ぎない。そういう嘘に私たちは乗せられてはならないと思います。

続きを読む

このブログでよく読まれている記事

もっと見る

総合記事ランキング

もっと見る