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2017年03月22日
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テーマ:ニュース(99404)
カテゴリ:ニュース
バラク・クシュナー著「思想戦-大日本帝国のプロパガンダ」について、京都大学教授の佐藤卓己氏は、2月26日の東京新聞に次のような書評を書いている;


 もっぱら国内向けに善かれる昭和史本が多い。その視野狭窄(しやきょうさく)を矯正してくれる快著だ。著者はナチ占領下フランスの映画史で卒論を書き、現在はイギリスで東アジア史を講じるアメリカ人研究者である。そのグローバルな視座から、戦時宣伝のリアルが浮上する。



 「戦時下日本の対外宣伝は効果が乏しかった」とする常識を評者も疑ってはいなかった。真珠湾攻撃以後の日米戦争に限っていえば、そうかもしれない。だが、それは中国や東南アジアでどう受容されたのか、日本の戦後復興にどれほど寄与したか、と時空を拡大してみると「ナチスを凌(しの)ぐプロパガンダ」の威力が確認できる。そうした宣伝の効果なくして、「十五年間にわたり安定して戦争を支持し続けた」国民意識は理解できない。日本にはヒトラーやムソリーニのような独裁者もいなかったが、独伊で発生した規模の抵抗運動も存在しなかった。

 日本国民は「近代アジアのリーダー」という自己PRに積極的に参加し、戦争を主体的に選び取り、その延長上に戦後の経済成長を達成したのだという。戦後も活躍した広告技術者、知識人、芸能人、官僚の歩みを丹念に検証し、「前向き」の戦時宣伝に「成功した失敗」という秀逸な表現を与えている。戦時下でも世論調査は行われており、警察当局も民意の動向を注視していた。東条内閣退陣でも世論の影響は無視できない。だとすれば、一般大衆も「大本営発表に騙(だま)された被害者」として免責されるはずはない。

 第五章「三つ巴(ともえ)の攻防」が特に興味深かった。日本の宣伝は中国人には効果なく失敗だったいうのが通説だが、それなりの影響力はあったようだ。さもなくば広大な占領地の維持は困難だった。他方で、中国やアメリカが日本人捕虜を宣伝に活用したの対して、日本は中国人捕虜を宣伝で利用することはなかった。民族的偏見を助長した「近代アジアのリーダー」という宣伝パラダイムは今日に続く問題である。
(評者 佐藤卓己=京都大教授)


バラク・クシュナー著「思想戦-大日本帝国のプロパガンダ」(井形彬訳、明石書店・3996円)
Barak Kushner 英国ケンブリッジ大アジア・中東研究科准教授。


2017年2月26日 東京新聞朝刊 9ページ「国内外で続いた宣伝効果」から引用

 この本も、なかなか興味深いテーマを扱っており、斬新な論理展開が魅力的である。戦前の政府が戦争遂行のために行ったプロパガンダは、完璧に国民の心に染み渡った結果、十五年戦争の間、国民の間には目立った抵抗運動など起きなかったのは事実であり、そのプロパガンダは戦争が終わってもなお、国民の心にそのまま残り、戦後の経済成長を成し遂げる原動力となったという見方は、それほど見当違いな見方とは言えないのではないかと思います。そう言えば、東京オリンピックを目前にして東海道新幹線を成功させたのは、ゼロ戦を設計・製造した技術陣だったという話を思い出しました。





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最終更新日  2017年03月22日 20時17分58秒


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