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2019年10月03日
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テーマ:ニュース(99446)
カテゴリ:ニュース
集英社新書から「歴史戦と思想戦-歴史問題の読み解き方」を出版した戦史・紛争史研究家の山崎雅弘氏が、9月1日の「しんぶん赤旗」のインタビューに応えて、次のように述べている;


 在野の立場から歴史を分析してきた戦史・紛争史研究家の山崎雅弘さん。新著『歴史戦と思想戦-歴史問題の読み解き方』(集英社新書)が、週刊ベストセラーに入るなど話題です。山崎さんに、新著に込めた思いを聞きました。
<田中倫夫記者>


 本屋に行くと、「反日」「南京虐殺のウソ」「慰安婦問題のデタラメ」「自虐史観からの脱却」。・・・こんなタイトルの本が並んでいます。これらの本を読み解くキーワードは「歴史戦」です。

 最初に「歴史戦」という言葉が登場するのは、2014年に産経新聞社が連載した記事のタイトルです。先の戦争中に大日本帝国が行った非人道的行為(慰安婦問題など)に対する韓国人の批判を、根拠のない不当な「反日攻撃」と解釈した上で、韓国が仕掛ける歴史を武器にした戦争=歴史戦に日本は勝たなくてはならないと訴えています。

 これ以降、次々と「歴史戦」というワードがタイトルに入った本が出されました。『米中韓が仕掛ける「歴史戦」』(黄文雄著)、『反日同盟 中国・韓国との新・歴史戦に勝つ!』(ケント・ギルバート他著)、『「歴史戦」はオンナの闘い』(河添恵子、杉田水脈著)などです。



 ここで用いられる「歴史戦」という概念は「歴史問題における、思想や宣伝を武器にした戦争」の意味ですが、この言葉に私は既視感を持ちました。戦前の大日本帝国にも、今の「歴史戦」とよく似たロジックやトリックがあったからです。

 それは軍部と政府が展開した「思想戦」です。「思想戦」とは物理的な戦争とは異なる次元で展開される、宣伝(プロパガンダ)などによる「心理戦」の一形態です。当時の軍部と政府は、国内における共産主義や社会主義の思想に共鳴する人々を弾圧する口実として、ソ連などが日本に対して「思想戦」を行っているという解釈を拡大し、また国際社会に向けては大日本帝国の行動を正当化するプロパガンダを「思想戦」として展開しました。

◆「慰安婦」「南京虐殺」問題部分の否定で史実を否定

 「歴史戦」や「思想戦」に共通するのは、大日本帝国は過去に何も悪いこと、恥すべきことはしていないという、大日本帝国を擁護する結論です。「大日本帝国は立派な国だった」という結論ありきで、それを正当化する理由や、批判を打ち消す理由を積み上げていく「歴史戦」の手法は、歴史的事実から出発してその詳細を検証していく歴史研究の手法とは全く違います。それゆえ、彼らは勝ち負けの論理で過去の歴史に光を当て、大日本帝国に不都合な内容を事実と認めない口実を探します。それを事実だと認めれば、不利になると理解するからです。

 たとえば、中国政府が主張する「30万人」という南京虐殺の犠牲者数や、韓国政府が主張する「20万人」という「慰安婦」の人数に、スポットライトのように光を当て、その信ぴょう性に疑問を差し挟むことで、「南京虐殺はなかった」「慰安婦はそれほど多くなかった」と話を飛躍させます。全体のごく一部の信ぴょう性を否定することで、あたかも全体が否定されたかのように見せかけ、宣伝するのが「歴史戦」でよく使われる手法です。

◆1945年の敗戦を機に社会の価値観は変わった

 最近、愛知県で開催された「あいちトリエンナーレ」の一部展示物が「日本国民の心を踏みにじる」(河村たかし名古屋市長)などの理由で激しく攻撃され、展示中止に追い込まれました。この展示物を同様に攻撃した政治家たち(松井一郎大阪市長、吉村洋文大阪府知事など)に共通するのも、「歴史戦」と同じ、つまり「大日本帝国の名誉を守る」という問題意識です。

 私はこの本を書くにあたり、「歴史戦」の思考形態や使われるロジックを単に外から批判するだけでなく、内在的論理を踏まえた上で、その目的や人を錯覚させるトリックを読み解こうと試みました。一見すると荒唐無稽に見える彼らの主張ですが、情緒的な言葉のトリックで包んで社会に拡散されると、なんとなく同調する日本人は決して少なくないように思います。

 こうした「歴史戦」のトリックにだまされないために必要なのは、さりげなく使われる言葉に対する鋭敏さです。例えば、日本の名誉を守る、という理屈で、戦争中の大日本帝国の非人道的行為を「なかった」と否認する言説は、もっともらしいですが、実際にそれで守られているのは「大日本帝国の名誉」です。そして、「慰安婦」問題の非人道性を現在の「日本国」の国民が否認してしまうと、日本人は今も女性の人権をないがしろにしても平気なのか、という疑問を、諸外国の人々に抱かせることになります。

 戦後の「日本国」は、人権を軽視する「大日本帝国」時代の価値観を否定して、人権の尊重を憲法の柱の一つにしている社会です。1945年の敗戦を機に、社会の価値観は変わり、大日本帝国の名誉を守る必要はもうないのだ、という事実を、多くの国民が改めて理解する必要があるように思います。

 「慰安婦」問題に関する韓国の批判や、南京虐殺などに関する中国の批判も、その対象は「戦争中の大日本帝国」と「その精神を継承して擁護する一部の日本人」であり、現在の日本人全体を標的とした「攻撃」などではありません。しかし、「大日本帝国の名誉」に執着する人々は、あたかも「日本人全体への攻撃」であるかのように事実をねじ曲げ、被害者意識をあおります。

 戦中の「思想戦」は、結果として「大日本帝国」の人々を戦争と破滅に導きました。再びそのような道に日本人が連れていかれることを回避するためにも、われわれの国が過去にどんな形で道を誤ったのかという批判的な検証が必要です。


2019年9月1日 「しんぶん赤旗」日曜版 4ページ 「『大日本帝国』を守りたい人たち」から引用

 産経新聞が連載する「歴史戦」にどれくらいの支持者がいるのか知りませんが、人命軽視の「大日本帝国」思想は、万葉集にも歌われた「海行かば」などにも現われていると言えます。そのような「価値観」は、私たち日本人が1945年8月に決別したものであって、教育勅語と同様に過去の遺物というほかありません。そのような昔の価値観に惑わされることなく、歴史を正しく評価してこそ未来志向の展望が開けてくるということを自覚する必要があると思います。





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最終更新日  2019年10月03日 01時00分08秒


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