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2024/06/14(金)01:00

「外国人使い捨て」の法案(14日の日記)

ニュース(3793)

今国会に政府が提出した「入管難民法改正案」は、名称こそ「改正法案」となっているが、実質的に中身を見るとこれは「改正案」ではなく「改悪案」と呼ぶほうがより内容を正確に伝える、そういう内容である。そのことに危機感を持った川崎市の市民団体が、政府提出の法案にどのような「問題」が含まれているのか、専門家を招いて講演会を開催している。登壇した二人のうち、移住者と連帯する全国ネットワーク事務局長の山岸素子氏の発言について、5月26日の神奈川新聞は、次のように報道している;  外国籍者を差別的に扱う入管難民法改正案が国会で審議されている。法案の問題点と真の共生社会の在り方を考える学習会が22日に川崎市内で開かれた。登壇したNPO法人「移住者と連帯する全国ネットワーク」の山岸素子事務局長、市民団体「『ヘイトスピーチを許さない』かわさき市民ネットワーク」の崔江以子さんの講演には、私たちが歩むべき針路が示されている。 (構成・石橋 学)  日本には移民や難民、外国ルーツの人々が400万人以上暮らしており、既に移民社会といえる。だが政府は移民政策を取らないと言い続けている。  外国人政策の根本は戦後一貫して変わらず、人管法による入国・在留管理に大きく偏ったままだ。外国人の権利保障や支援のための基本法は制定されず、移民政策もない。結果、外国人は日本人と同等に人権が保障されていない現状がある。1993年の研修・技能実習制度の創設以降、法・制度の改正のたびに管理と排除の強化が積み重なり、ヘイトスピーチに表れている排斥の風潮も強まっている。  今回の法改正では現代の奴隷制度と批判されてきた技能実習制度を廃止し、代わりに育成就労制度を創設する。だが名前が変わっただけで、仲介機関の存在など構造的な問題は残る。会社を変える「転籍」が認められるようになったというが、厳しい制限付きだ。  さらに問題なのは制度創設に併せて、永住許可を取り消せる制度が盛り込まれたことだ。入管法の義務を怠り、在留カードを携帯していないだけで取り消される。税金や社会保険料を納めなかった場合や住居侵入や暴行、傷害といったよくある事件で1年以上の拘禁刑に処された場合も対象になる。条文上はちょっとしたことで永住許可を失ってしまうことになる。  有識者会議の報告書にも言及がなく唐突に出てきた。つまり事前の検討や議論が不十分だ。  立法事実もない。育成就労制度の導入で永住につながる外国籍者が増えると想定しているが、果たしてそうか。外国籍者が日本国籍者と比較して滞納が多いというデータもない。にもかかわらず、軽微な義務違反で外国籍者の生活基盤を揺るがすという差別的な法案になっている。  滞納や刑法違反に対しては日本国籍者と同様に滞納処分を行い、刑罰で対応すれば十分だ。差別的な扱いにより外国籍者への差別や偏見をさらに助長する。  難民・非正規滞在者の排除を強化した2023年の法改正、今回の改正案と、外国人を管理して労働者として使い捨てる政策が次々と推し進められている。真の共生社会のために求められているのは、外国人を定住・永住する移民として社会に受け入れる包括的な政策だ。入管法を抜本的に見直し、外国人の人権保障法や人種差別撤廃基本法、難民保護法を制定する必要がある。  自治体でも多文化共生施策を推進し、私たちが市民・住民として地域社会や職場で共生の取り組みを進めていくことも重要だ。 2024年5月26日 神奈川新聞朝刊 9ページ 「時代の正体・差別禁止法を求めて-入管法改悪と多文化共生」から一部を引用  今年の春先に有識者会議が入管難民法改正案に関する答申を政府に提出したとき、確か朝日新聞だったと記憶するが、今まで奴隷のような過酷な労働を強いられていた技能実習生も、これで労働環境が改善されるだろうから、より多くのアジアの若者が日本に来るようになってほしいなどと、妙に楽観的な記事を読んで、これを書いた記者は政府の回し者ではないかと疑いたくなる気分であったが、案の定、政府から出てきた「改正案」は、立法事実もないのに、如何様にも難癖をつけて、気に入らない労働者を国外追放できるという、正に「将来に禍根を残す」代物であることが判明した。このようなデタラメな立法活動に対し、私たちは黙認するのではなく、大声で異議を申し立てるべきである。

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