日頃から週刊新潮に右翼気取りの変な記事ばかり書いている高山正之が、いきなり朝鮮半島にルーツを持つ俳優や作家に対するヘイト記事を書いたことについて、雑誌編集者の篠田博之氏は3日の東京新聞コラムに、次のように書いている;
ついこの間までアメリカの話と思っていたが、外国人排斥をめぐって日本でも分断が深まっているようだ。参政党の躍進に危機感を抱いた既存メディアでは同党への批判がさらに拡大している。
『サンデー毎日』8月10日号では特集にも「排外主義に市民権を与えてはいけない」(元外務審議官・田中均さん)といった記事が載っているほか、青木理さんはじめ、コラムの多くが参政党批判だ。
『週刊文春』8月7日号は前号に続いて「参政党の化けの皮」という特集を掲載。「神谷ファミリー企業の資金源は『在日は死ね』ヘイト経営者だった!」「安藤裕参院議員 美熟女タレントとW不倫証拠メール」と、カネと女で攻めているのが同誌らしい。
『週刊新潮』8月7日号も「大躍進『参政党』と『マルチ商法』はやけに似ている」と特集記事で同党批判を続けている。
最近の同誌の参政党批判はかなりの熱を帯びているのだが、ただここへきて物議をかもしているのが巻末の右派論客・高山正之さんのコラム「変見自在」だ。8月7日号では、参政党批判を続けるTBS『報道特集』の山本恵里伽キャスターを「露骨な偏向報道」と非難している。
物議をかもしているのはその前号で、同コラムが「日本人を装って日本を貶(おとし)める外人」として俳優の水原希子さんや作家の深沢潮さんらをやり玉にあげたことだ。コラムニストの武田砂鉄さんはSNSで「俳優と作家の名前を唐突に出し、出自から揶揄(やゆ)するあまりに酷(ひど)い内容」と批判した。作家の間でも反発が広がっており、深沢さんは近く抗議の会見を開くという。
「週刊新潮」は元々、右派雑誌で、高山さんのコラムはその名残と言えるのだが、この10年ほど同誌の誌面は変わりつつある印象を受ける。参政党をめぐって同じ誌面に論調の違う記事が載るのもその反映かもしれない。
そもそも深沢さんは新潮社からデビューした作家だ。以前から新潮社の文芸部門と雑誌部門は別会社と思われるほど乖離(かいり)していると指摘されてきたが、今回の件は、展開によっては新潮社に深刻な事態をもたらすかもしれない。
(月刊『創』編集長・篠田博之)
2025年8月3日 東京新聞朝刊 11版 15ページ 「週刊誌を読む-俳優・作家の出自、やり玉」から引用
新潮社と言えば、日本でも指折りの一流作家の作品を出版する会社ということになっているが、一皮むけば週刊誌に高山正之みたいな者の記事を掲載して、要は金に汚い出版社という「正体」を隠して商売をしているというのが実態なのである。この会社は何年か前にも、結構人気のある文芸雑誌に杉田水脈のヘイト丸出し記事を掲載して世論の反発を買い、結局その雑誌を廃刊にするという事態を引き起こしている。この度の事態もそれと似たようなものだから、新潮社としては日本でも指折りの文学出版社の矜恃という意味で、週刊誌編集部を全員懲戒解雇して世間に対してけじめをはっきりさせるべきだと思います。