新年を迎え、一部野党の協力を得て新年度予算の早期成立を見込んでいる高市政権について、5日の東京新聞「社説」は次のように論評している;
高市早苗首相が5日、三重県伊勢市の伊勢神宮を参拝します。日本の総氏神、天照大御神に「日本列島を強く豊かにしていく」と新春の祈りをささげるのでしょう。首相が昨年10月の就任以来掲げてきたスローガンでもあります。
就任直後の所信表明演説では、冒頭のこの言葉に続き「力強い経済」と「力強い外交・安全保障」の実現を訴えました。高市自民党のキャッチフレーズは「日本列島を、強く豊かに。」。首相の国家目標は「令和の富国強兵」と言い換えることもできます。
「強さ」へのこだわりに共感する人も多いようです。高市内閣の支持率は昨年12月の共同通信世論調査で67・5%でした。年代別では30代以下73・7%、40代72・4%、60代以上59・6%。若い世代ほど支持率が高く、この傾向は報道各社の調査に共通です。
◆ 下落が続く国際的地位
50代以下の大半はバブル経済崩壊後に社会人になり、強い日本経済を経験したことがありません。かつて米国に次ぐ国内総生産(GDP)2位たった日本は中国、ドイツに抜かれ、国際通貨基金(IMF)によると、今年はインドに次ぐ5位になる見通しです。
防衛力は経済力にほぼ比例します。ストックホルム国際平和研究所(SIPRI)によれば、日本の防衛費は1993年には米国に次ぐ世界2位でしたが、2000年代初頭から順位を落とし、24年は10位。GDP比1%程度に抑えていた90年代の方が、国際比較では防衛費が多かったのです。
現役世代は長期の経済低迷「失われた30年」で自信も失ったように映ります。伸びない実質賃金、少子高齢化で増す税と社会保険料の負担に疲弊し、中国には経済、軍事の両面で圧倒されています。「強い国」を唱える首相が頼もしく見えるのかもしれません。
その高市首相が、新年に取り組むべき最優先課題は、26年度予算案の早期成立です。通常国会は今月23日に召集され、審議が始まります。野党の国民民主党も予算案に賛成する方向なので、年度内成立への視界は良好でしょう。
物価高対策と成長投資で実質賃金が持続的な上昇に転じ、景気回復により増税しなくても税収が増える。そんな「強い経済」に向けた好循環が視野に入れば、高市人気の基盤はさらに固まります。
賃上げや減税の効果を超えて物価がさらに高騰し、景気が冷え込むシナリオもあり得ます。
26年度予算案の一般会計は過去最大の122兆円に膨らみ、国債頼みの財政運営が続きます。首相の積極財政路線を受け、長期金利は上昇し、円安基調も止まりません。財政政策が市場の信認を得られず「日本売り」が進めば、輸入物価はさらに上がります。
春以降は「強い安全保障」の議論も本格化します。政府・与党は国家安全保障戦略など安保関連3文書を年内に改定する方針で、殺傷兵器の輸出拡大、非核三原則の見直し、防衛費のさらなる増額など論点が尽きません。
中でも国民の懐に直結するのが防衛費です。25年度の防衛関連予算は補正も含めてGDP比2%の約11兆円。単純計算では国民1人当たり年9万円余の負担です。関連予算を仮にGDP比3・5%に増やせば、国民の負担は年約16万円に膨れ上がります。
巨額の防衛予算を賄うための増税は難しいでしょう。手取りを増やす減税の効果が帳消しになるからです。国債に依存すれば財政悪化の懸念が高まり、日本売りの要因になります。無理を重ねる「強い安全保障」は、経済を弱める危険性をはらんでいるのです。
首相の「強い外交」が「勇ましい外交」になっていることも憂慮せざるを得ません。台湾有事を巡る国会答弁が代表例です。自らの不用意な発言で中国の日本に対する敵意を煽りながら、安保環境の悪化を口実に防衛費を増やす。そんな負担増に喜んで応じる国民がいるのでしょうか。
◆ 身の丈に合う未来像を
明治の富国強兵は欧米列強が東アジアに進出する中、日本の独立を守りましたが、領土拡張主義に陥り、破滅的な敗戦に至った歴史も忘れてはなりません。戦後の日本は「強兵」を捨て、「富国」に専心することにしました。
少子高齢化が進み、労働力人口の減少が避けられなくても、日本には世界に誇れる美点がたくさんあります。強がって経済成長や軍事力強化を目指さなくても、身の丈に合った未来像を考える。そんな新春にしたいと思います。
2026年1月5日 東京新聞朝刊 11版 4ページ 「社説-『令和の富国強兵』の行方」から引用
この社説は、冒頭で伊勢神宮を日本の総氏神であると言っているが、これは事実に相違する。日本には、それぞれの地域にそれぞれの氏神信仰が存在し、それぞれ独自に人々に信仰されて来たのであって、伊勢神宮が本部となって全国の神社を統括したのは、明治になって政府が人民統治に宗教を利用する意図で作り上げた「創作」に過ぎず、現代の日本国憲法では国家が特定の宗教を行政的に利用することを禁止しているのだから、その憲法上の「政教分離の原則」を蔑ろにするような表現は、メディアが用いる表現として「不適切」だと思います。
また、この社説は「物価高対策と成長投資で実質賃金が持続的な上昇に転じ、景気回復により増税しなくても税収が増える。そんな「強い経済」に向けた好循環が視野に入れば、高市人気の基盤はさらに固まります」などと、初夢の続きの「寝言」みたいなことを言ってますが、「物価高対策と成長投資」が「実質賃金の持続的な上昇」をもたらす可能性などありはしないことは、これまでの「失われた30年」が証明している。労働者の努力で企業収益が増大しても、増益となった部分は経営者と株主に還元されるだけで、労働者にはほとんど還元されずに来たのがこれまでの30年間でした。それは、経営者に言いくるめられて、スト権を確立した賃上げ交渉をしなかった労働組合にも責任の一端があるとは言うものの、メディアが新年の社説で、高市政権でうまく行けば労働者の所得も増える、などという「幻想」を振りまくメディアの責任も重いと言わざるを得ません。
そして、日本の司法と違って正義感の強い韓国の司法当局は、昨年暮れに統一協会の最高幹部を逮捕し、同協会の違法な活動を裏付ける膨大な「証拠書類」を押収し、その一部がメディアに公開されると、その中にかなり多くの日本の政治家の名前が挙がっており、「高市早苗」の名も30数回出てくることが明らかになった。にも関わらず、その件を日本で報道するのは「週刊文春」と「しんぶん赤旗」「日刊ゲンダイ」だけという。他の大手新聞やテレビは、一切口をつぐんでいる。こういう偏ったメディアの在り方が、腐敗した与党・自民党の存在を許してきたのだ、という現実を、よく見据えて、私たちは、今後の対応の仕方を考えるべきだと思います。