ニューヨーク市民が市長選挙で民主的社会主義を標榜する人物を選出したことについて、横浜国立大学名誉教授の萩原伸次郎氏は、1月18日付「しんぶん赤旗」日曜版に、次のように書いている;
「民主的社会主義者」のゾーラン・マムダニ氏が、米国の経済中枢であるニューヨーク市の市長選で当選し、話題になっています。
トランプ大統領が「共産主義者を市長にしてはならない」と必死に訴えたにもかかわらず、有権者は、民主的社会主義を実践することを公約に掲げたインド系ムスリム(イスラム教徒)である34歳の政治家マムダニ氏を選びました。彼は、無料の公共バスサービス、公共の子どもケア、市が経営する食料雑貨店、高騰する家賃の凍結、手ごろな住宅の供給、2030年までに最低賃金を時給30ドル(4650円、1ドル=155円換算)に引き上げるなどを訴え、年収100万ドル(約1・5億円、同)を超える富裕層への増税などを選挙公約に掲げました。
西部ワシントン州シアトル市でも、民主的社会主義者、ケイティ・ウィルソン氏が当選し、ホームレスの解消や市民の生活苦の問題に取り組むとしています。
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これら民主的社会主義者を名乗る革新的政治家たちは、いずれも「米国社会主義者」(DSA)のメンバーです。この組織は、米国に民主的社会主義を実現しようと1982年に創設され、2025年現在8万人以上のメンバーがいます。
DSAが注目され始めたのは、16年大統領選の民主党予備選で、民主的社会主義を政治の前線に打ち出したバーニー・サンダース氏の功績によるところが大きいでしょう。同氏の政策は、1933年に誕生したフランクリン・ルーズベルト民主党政権の政策を踏襲したものでした。公的年金や最低賃金の大幅アップ、金融規制を実施したルーズベルトの政策は、当時「社会主義的」だと批判されたのですが、サンダース氏は、それらの「社会主義的」政策こそ今日米国の中間層の基盤になったのであり、それを壊そうとしているのが、富裕層優遇政策の新自由主義だと訴えました。
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2018年11月の中間選挙では、サンダース氏の提唱する「メディケア・フォー・オール」(すべての人に健康保険を!)というキャッチフレーズで、多くの進歩派民主党議員が誕生しました。この力が、民主的社会主義者、マムダニ氏をニューヨーク市長に押し上げる基盤になったことは重要な点です。連邦議会には、サンダース氏を中心として進歩派議員連盟の議員が多数存在し、革新的な政策を掲げて、米国の政治変革に立ちあがっています。その底流には「99%の普通の国民が政治・経済の主役になる」という「民主的社会主義」思想への共感の広がりがあるといえます。
政治評論家ビル・プレス氏は、議会専門誌ヒル(電子版)へ寄稿(25年11月)し、26年の中間選挙で民主党が連邦議会の多数派奪還を目指すなら「マムダニ氏への支持を拒んだシューマー民主党上院院内総務のような、古くて覇気のない退屈な政治を踏襲すれば敗北する。マムダニ氏のような大胆で新しく活気ある政治から学べば、勝利を手にすることができる」と主張しました。今後の米国の政治情勢が注目されます。
<はぎわら・しんじろう 横浜国立大学名誉教授>
2026年1月18日 「しんぶん赤旗」 日曜版 24ページ 「経済これって何?-『国民が主役』掲げる社会主義に共感」から引用
ニューヨーク市民は「無料の公共バスサービスや公共の子どもケア、高騰する家賃の凍結など」市民生活を支援する政策を主張したマムダニ氏を市長に選出するという賢明な投票行動をとったことは、さすがは民主主義の国アメリカだと、賞賛に値すると思います。一年前の大統領選挙では、それまでの民主党所属の大統領への不満から、ついトランプ氏に投票したというアメリカ国民が多数でしたが、就任後のトランプ氏の言動では、さすがに「これはダメなんじゃないか」と気が付いた点は、優れた政治判断をしたと言えます。その点、少し前までは「解散なんて、考えてるヒマはありません」とか言っていたのに、裏金問題とか統一協会問題とか、自分自身の不祥事が取りざたされ始めると、いきなり「解散」を宣言し、NHKが準備した「テレビ討論」に出演すれば個人的な問題を追及されるのは分かっているからドタキャンするなどと恥知らずな行動をしても、それでも選挙では自民党に入れるという日本人の「民度」の低さは呆れかえるしかありません。