日本の国家財政がどのような状態にあるのか、経済のことは何も知らない高市早苗氏は、誰に吹き込まれたのか「今の日本は行き過ぎた緊縮財政のために、世の中全体が元気をなくしている。高市内閣では積極的な財政に転換していく」などと発言して、経済界からは首相の経済認識を疑問視する声が上がっているとのことで、1月31日の毎日新聞は次のような批判記事を掲載した;
高市早苗政権の財政拡張路線に懸念が強まっている。高市氏が衆院解散を表明した19日の記者会見は「消費減税発言」に注目しがちだが、市場関係者に衝撃を与えた別の発言があった。日本は「行き過ぎた緊縮財政」であり、その「大転換」を主張したことだ。数十年にわたって借金が増え続けた先進国最悪の日本の財政状態を、高市氏は本気で緊縮と認識しているのだろうか。
「これまでの経済・財政政策を大きく転換する。行き過ぎた緊縮志向、未来への投資不足。この流れを終わらせる」。19日の会見で高市氏は、これまで財政政策が「行き過ぎた緊縮財政の呪縛」に影響を受けていたと指摘。持論とする「責任ある積極財政」に転換することが改革の本丸だと強調した。
だが、大きな疑問が残る。日本は本当に緊縮財政だったのか。多くの市場関係者の答えは「NO」だ。歳出増の要因の一つは高齢化に伴う社会保障費の増加だ。さらに防衛費増額や子育て支援の強化に加え、金利上昇に伴う利払い費の膨張ものしかかる。老朽インフラの修繕費などもかさみ「緊縮どころか拡大の一途をたどっている」(経済官庁幹部)のが実態だ。
三菱UFJモルガン・スタンレー証券の六車治美チーフ債券ストラテジストも「市場関係者で、これまでの財政政策を緊縮財政だと思っている人はいるのだろうか」と疑問視する。「仮に、これまでの財政が高市氏の目から見て『行き過ぎた緊縮』だとすると、高市氏が考える財政はかなり反対側にあるのかと思ってしまう」
日本の放漫ぶりは新型コロナウイルス禍で一層、加速した。巨額の補正予算を編成し、2020年度の歳出規模は過去最大の147・6兆円にまで膨張した。その後も踏み込んだ予算の削減策は示せず、歳出が歳入を大幅に上回る財政運営が常態化している。
歳出と歳入の差を埋めるのが赤字国債だ。第2次安倍晋三政権以降、年数十兆円規模の巨額発行を続けた結果、国債発行残高は25年度末に1129兆円に積み上がる見通し。国の経済規模を示す国内総生産(GDP)の約0・3倍にもなる。これは主要7カ国(G7)ではイタリア(約1・3倍の規模)をも大きく引き離し最悪の水準だ。
◆「発言内容、無責任」
財務省内でも「『緊縮』なら、こんな借金だらけの財政になっていない。首相は国民受けが良いから『責任ある積極財政』と言っているだけで、発言内容は無責任なものばかりだ」(幹部)との声が漏れる。
財政拡張・金融緩和路線は国内の「リフレ派」の賛同は得られても、日本国債の売買の是非を判断する海外の機関投資家を中心に警戒感が膨らんでいる。高市氏の会見翌日の20日、東京債券市場では日本国債が売られ、国債の利回りが急上昇した。財政悪化リスクを反映しやすい40年物国債の利回りは07年の発行開始以来、初めて4%の大台を突破。長期金利の指標となる10年物国債の利回りは一時2・380%と27年ぶりの高水準になった。
「債券自警団(国債を売却して財政規律に警鐘を鳴らす投資家)が東京へ/長期金利の急騰は日本により優れた経済政策が必要と警告」。こう題したコラム記事を掲載したのは米紙ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)だ。
コラムでは高市氏の唱える消費減税について「実施する価値があるかもしれないが、明らかに実施に値しない支出が山積している上にさらに追加されるものだ。それには昨年11月に決まった18・3兆円の景気刺激策も含まれる」と指摘。財政の大盤振る舞いと低成長を続けてきた1990年代以降の日本の経済・財政政策を振り返り「日本はあちこちに現金をばらまく習慣を身につけてしまったが、その効果は債務を積み上げる以外に何もない」と切り捨てた。
世界の投資家はWSJも参考に日本の財政状況を判断する。高市氏がいくら国内向けに「積極財政」とバラ色のシナリオを語っても、海外の市場関係者の理解をとりつけなければ今後も日本国債が売り浴びせられる恐れがある。
安倍元首相は2回にわたって消費税率を引き上げるなど、財政規律にこだわる財務省を煙たがりつつ耳も傾けてきた。財政悪化を防ぎつつ政治的に財政出動を大きく見せかける手段として、歳出を伴わない財政投融資を活用する「裏技」も使った。
だが、その安倍氏を師と仰ぐ高市氏は、25年度補正予算で一般会計総額14兆円程度だった財務省原案の大幅拡大を主導し、コロナ禍後で最大の18・3兆円を編成するなど財務省の考えをものともせず、市場の警告も無視して財政拡張を進めようとしている。
◆原理、分かってる?
メガバンク幹部は「高市首相は『円安とインフレは関係ない』『長期金利が上がったのは(放漫財政ではなく)日銀が利上げしたせい』と思い込んでいる節があるのでは」と嘆く。日銀幹部も「高市氏は極めて基本的な市場の原理すら分かっていない恐れがある。誰かレクチャーする側近はいないのか」と危機感をあらわにしている。
衆院選が27日公示されたが、自民党以外の各党の経済・財政政策にも、実現可能性や現状認識に照らせば疑問符が浮かぶ公約が並んでいる。市場が懸念を深める状況は当面、続きそうだ。
【大久保渉、加藤結花、山口智】
2026年1月31日 毎日新聞朝刊 13版 6ページ 「(高市首相発言に)市場、衝撃」から引用
小泉純一郎や安倍信三内閣までは、赤字国債を発行することに対する「本当は良いことではないのだ」という「認識」がありながら、しかし、当面はこれで切り抜けられるからという安易な判断で、歴代内閣は不足する税収を赤字国債発行で切り抜けてきたのでしたが、そんなことを代々続けているうちに、高市早苗のように、とんでもない勘違いからか、財源もないの「積極財政」で世の中を景気よくしようなどと、素人受けする発言で、それに騙された有権者が自民党の議席を全体の3分の2以上にしてしまうという、実に「危ない国」になってしまったと、経済界で働く人たちは事の成り行きを深刻に受け止めているようですが、一般国民にも「事の深刻さ」が理解できるように報道して警鐘を鳴らすのがメディアの役目だと思います。首相批判を「高市さんがいじめられて、かわいそうだ」と受け止めるレベルの有権者を、もう少しレベルアップする努力をしないと、この先ろくなことにはならないと思います。