高市首相は自分自身の裏金問題や統一協会とのつながりを追及されるのがイヤで、衆議院選挙をやってしまえば自分を追及する時間もなくなるだろうとの企みで、突如解散に踏み切ったのであったが、1月25日の神奈川新聞は、憲法の専門家である一橋大学大学院教授の只野雅人氏に取材して、次のような記事を掲載した:
高市早苗内閣は憲法7条に基づき衆院を解散した。解散権は「首相の専権事項」とされるが、果たして自由裁量なのか。議会や選挙制度に詳しい一橋大大学院法学研究科の只野雅人教授(憲法学)は高市首相の判断について「国民の総意を問う必要があると判断される十分な理由を示しておらず、権限の乱用だ」と指摘する。
(聞き手・松島佳子)
――解散権は「首相の専権事項」なのでしょうか。
「憲法解釈上は議論があります。どういう場合に解散できるかを規定するのは69条だけです。不信任決議が可決された際などに内閣が解散を選択できるとしています。一方、首相が理由にした7条は『天皇は、内閣の助言と承認により、国事行為を行う』と定め、その一つに『衆院の解散』を挙げています。天皇は国政に関する権能がないため、助言と承認を通じて、内閣が裁量的に解散を決定し得るという解釈が事実上確立してきました」
――乱用の危険性はないのでしょうか。
「危険性はどうしても生じます。そのため、『解散の条件を69条に限定すべきだ』という議論がなされましたが、『国民の意思を確認することが主眼である』という考えから7条解散が定着しました。ただ、内閣か解散権を行使できるのは、国民の意思を確認することが必要な場合や、解散がどうしても必要な場合に限られる、といった慣行を確立すべきです」
――首相は理由について「日本維新の会との連立合意や積極財政などについて信を問う」と説明しました。
「『信を問う』と言うならば当然、判断材料を提示しなければなりません。それがまさに通常国会だったはずです。予算委員会ではあらゆることが審議されるので、首相が何をやりたいのか、維新と何を目指すのかを明らかにすることができます。野党の立場も明確になるでしょう。全く議論をせず、国会冒頭で解散するのは『判断材料は示さないが、白紙委任をしてくれ』と言っているようなものです。解散権本来の趣旨からして問題です」
――政権発足前に自民党と維新が結んだ「連立政権合意書」は判断材料になり得ますか。
「急場で作ったもので、即席である印象を受けます。議員定数削減が典型です。突然出てきた話で、疑問視している議員は少なくないのではないでしょうか。積極財政を巡っても市場が強い反応を示しており、相当議論しなければならない話です。憲法上、権限行使できることと、実際に行使することは別問題です。フェアプレーのような精神が政治アクターの間で共有されなければ、制度はうまく機能しません。今回の解散は『権限の乱用』と言えます」
――過去にも問題になったことはありますか。
「第2次安倍晋三政権下で問題になりました。2014年に消費増税の延期を根拠に解散カードを切りましたが、内閣の任期を事実上延ばすためで批判が集まりました。17年は野党が憲法53条に基づき臨時国会の召集を要求しましたが、内閣は約3ヵ月応じなかった上、ようやく召集された国会冒頭で衆院を解散しました。どちらも理由が示された、とは言えません。制度上も政治上も安定した基盤を持った首相が選挙で議席を失うリスクを冒すことなく自由に解散を行うことは、恣意的な解散権行使に当たります」
――乱用を防ぐにはどうしたらいいのでしょうか。
「国民の判断が問われていると思います。判断材料がない中でも判断して、問題と感じたら投票で意思表示をすることが大事です。政権が代わらなかったとしても結果は議席に表れます。最近の選挙は交流サイト(SNS)の影響が急速に広がっていますが、SNSは真偽不明な情報があふれ、同じ内容が繰り返される仕組みになっています。何が正しい情報かを見極めることも求められています」
◆69条解散
憲法69条は「内閣は、衆院で不信任の決議案を可決し、又は信任の決議案を否決したときは、10日以内に衆院が解散されない限り、総辞職をしなければならない」と定める。議院内閣制の下、内閣は衆院の信任に基づき存立し、通常は与党が過半数を占めているため、不信任案可決はまれ。現行憲法下で解散に伴う衆院選は26回実施されたが、69条解散はわずか4回。
◆7条解散
憲法7条は「天皇は、内閣の助言と承認により、国事行為を行う」と定め、その一つに「衆院の解散」を挙げる。派閥間の対立や与党が参院で多数を欠くなど一定の対立構造があるときは、首相による専権的な解散権行使を難しくさせた。しかし、対立的・競争的環境を欠いた第2次安倍晋三政権下では歯止めが利かず、恣意(しい)的な権限行使が問題になった。
<ただの・まさひと> 憲法学者。一橋大大学院法学研究科教授。議会制度や選挙制度、フランス憲法を中心に研究している。著書に「選挙制度と代表制」、「憲法と議会制度」など多数。
2026年1月25日 神奈川新聞朝刊 19ページ 「2026衆院選を問う-『解散権乱用に当たる』」から引用
この記事でも触れているように、安倍政権のときは様々なでたらめが横行し、自分の選挙区の有権者を東京の一流ホテルに無料招待して飲み食いの接待をして翌朝は新宿御苑に観光バスでお花見という違法行為から、それまでの歴代政権は抑制的に行使した「衆議院解散権」を、私利私欲のために堂々と行使するなど、ろくな政権ではありませんでしたが、その後継者を自称する高市首相に至っては、ますます悪辣の度が高まっているというほかありません。衆議院解散については、「衆議院解散権乱用防止法」を議員提案で審議して法律として確率するべきだと思います。