「押し活」選挙で一気に巨大与党となった自民党の総裁として「国旗損壊罪を刑法に追加した」などと口走った高市首相について、武蔵野美術大学の志田陽子教授は、2月22日の東京新聞コラムに、次のように書いている;
高市早苗首相は衆院選が公示された1月27日、東京・秋葉原での第一声で「国旗損壊罪」の創設に意欲を示しました。日本を侮辱する目的で国旗を損壊したり、汚したりする行為に刑事罰を科すというものです。
刑法は外国を侮辱する目的で外国旗を損壊した場合、2年以下の拘禁刑などを規定しています。他国との外交に支障が出る恐れがあるためです。この事情は日本の国旗を損壊する行為に当てはまりません。
ただ、公的施設に掲げられている日本国旗を損壊する行為は、器物損壊罪や公務執行妨害罪など現行法で対応できます。新たに法律をつくる必要性は見当たりません。
憲法が定める思想・良心の自由への不当な介入も心配です。国旗を使ったファッションやアートも珍しくない中で、警察が国旗を損壊する行為を取り締まれるようになる社会を想像してみてください。逮捕には至らなくても「なぜこんなことをしたのか」「侮辱でないならどんな理由だ」と聞かれる。まっとうな政権批判や異論を口にしづらい社会に向かいかねません。首相は米国旗の損壊に厳しい姿勢をとるトランプ米大統領と足並みをそろえたいだけかもしれませんが、萎縮効果は確実に生まれます。
格差が広がり、日本という国に「裏切られた」と絶望している人は少なくありません。待機児童問題に苦しむ人が交流サイト(SNS)で発信した「保育園落ちた日本死ね」という言葉が、あれだけの共感を集めたことが物語っています。やり場のない気持ちが国をののしる言葉になり、さらにエスカレートして国旗を傷つけることになったとして、権力側か頭ごなしに「犯罪者だ」と断じられるでしょうか。
理性的な言葉にならない叫びがあったとき、その理由に思いをいたし、政策に落とし込むのも政治家の仕事です。首相は、尊敬する政治家に「鉄の女」と呼ばれた英国のサッチャー元首相を挙げています。それならば、国民の厳しい声や表現を真正面から受け止めても折れない「鉄の心」を持ってほしいものです。
(聞き手・大野暢子)
<しだ・ようこ> 1961年、東京都生まれ。憲法研究者。東京都立大学客員教授。早稲田大学大学院で博士(法学)。日本女性法律家協会幹事。日本科学者会議代表幹事。著書に「『表現の自由』の明日へ」「映画で学ぶ憲法」など。
2026年2月22日 東京新聞朝刊 12版 3ページ 「高市首相に直言-国旗損壊罪より声聞いて」から引用
この記事が指摘するように、国旗損壊罪などというものが出来て警察官が「なぜこんなことをしたんだ」などと大きな口を叩いて威張り腐るような社会になれば、この国は今よりもっと政治的な意見を表明しにくい環境になるであろうことは目に見えていると言えます。そして、現実には、他人の所有物である旗でもフロシキでも、とにかく高価な者を損壊した場合は、そんなことをした者に損害を弁償させる法律は既に存在するのですから、日の丸だけを特別扱いしてもったいなさそうな処罰法を制定する理由など、どこにもありはしません。無駄な刑法を作るヒマがあったら、企業献金禁止法を制定する算段を考えるほうが世の中のためと言うものでしょう。