アメリカのトランプが卑劣な手段でイランと戦争を始めた煽りで石油を輸送する船舶がホルムズ海峡を通過できず、そのため建築資材や日用品の材料となるナフサの輸入がストップして国内の産業が停滞し市場では商品がなくなる危険性が出てきた。高市政権は中東以外の場所から輸入する目途がたったので心配はないと言ってるが、業界の専門家は「大量のナフサを中東以外の場所から調達するのは無理で、このままでは6月には、日本は詰む」と発言して物議をかもしていることを、4月25日の東京新聞「こちら特報部」は、次のように報道している;
中東情勢の悪化で、建築資材や日用品など幅広い製品に使われるナフサの供給が不安視されている。そんな中、資源エネルギー庁の有識者委員を務める「コネクトエネルギー合同会社」の境野春彦氏(57)が、テレビ番組で「このままでは6月に詰む」と発言すると、高市早苗首相がX(旧ツイッター)で「事実誤認」と反論した。政府は国内の必要量が「足りている」とするが、依然として不安の解消までは至っていない。境野氏に発言の真意や政府の対応に対する考えを聞いた。(山田雄之、福岡範行)
◆統計基づく想定
「統計の数字に基づく想定を話した。エネルギー資源に対する危機意識を多くの人に持ってほしかった」。
「こちら特報部」の取材に境野氏は21日、こう思いを述べた。「原油もナフサも他の地域からの代替調達では賄いきれる量ではない。相当にタイトだ」と現状を語る。
世界が消費する約2割の原油がホルムズ海峡を通る。多くのエネルギー資源を輸入に頼る日本は、中東からの原油が輸入量の9割以上を占める。中東情勢が緊迫化する中、米国とイランの協議は難航している。
ナフサは、原油から精製される石油製品の一つ。「石油化学のコメ」とも呼ばれる基礎原料でペットボトルや衣料、医療器具など身の回りの多くの製品に姿を変え、暮らしを支える。
境野氏は大学卒業後、石油元売り大手に20年以上勤務し、石油精製の現場を学び、国内の燃料販売の業務などに携わった。2025年に独立し、現在は液化石油ガス(LPG)の取引適正化を推進するための資源エネルギー庁の有識者グループの委員も務める。
政府統計などによると、国内消費量の約4割を中東から輸入し、国内生産が約4割あるが、原料となる原油の大半が中東からの輸入。計約8割のナフサが中東由来とされる。
3月以降、ナフサの供給状況を懸念する発信をXで始めた。境野氏は「イランへの攻撃が始まった当初の報道は、ガソリンや軽油など燃料が足りなくなる恐れを伝える内容が多く、原料として『物づくりができなくなる』との危機感が世間に伝わっていないように感じた」と振り返る。
4月4日放送のTBSテレビの「報道特集」に専門家として出演。経済産業省が示した中東以外からの輸入を倍増させる見通しでは国内需要を賄うことが難しいとして、「間違いなく今の状況が続いたら6月には詰むんですよ、日本。もうホルムズ海峡を通る一択しかない」とコメントした。
◆ 高市氏Xで反論
これに対し、高市首相は翌5日にXで、番組名は出さなかったが「少なくとも国内需要4ヵ月分を確保している」などとして、境野氏の発言を「指摘は事実誤認」と断じた。
◆ 批判意見100件超
その直後から、境野氏のXには「デマをまくな」「詰まなかったらどうするんだ」との意見が100件以上寄せられたという。番組側もXなどで「『需要に供給が追いつかなくなり、日本にとって深刻な影響が出る恐れがある』という趣旨での発言でした。趣旨を適切にお伝えすることができなかった」などと補足する事態となった。
境野氏は、3月公表の政府統計の国内需要や輸入量、在庫などの数値から「3ヵ月後に供給が需要を賄えなくなる」と想定し、危機感を訴えるために「6月に詰む」という発言に至ったと説明する。高市氏の「国内需要4ヵ月分」との発信について「ナフサから分解された基礎化学品以降の『川中製品』の在庫2ヵ月分をナフサ自体の2ヵ月分に単純に加えており、正確な表現ではない」と指摘。その上で「いまでは『詰む』という表現では甘かったと思っている。既に現実として現場に不足が生じている」と強調する。
◆首相は「事実誤認」と言うけれど
政府は「年明けまで石油の供給を確保できるめどがついた」「(ナフサは)必要な量は確保」と不安を打ち消す発信を続ける。ただ、ナフサを使う現場の企業では製品の新規受注の停止や値上げの動きが広がる。日本塗装工業会は14日、シンナーなど塗装資材の急激な品薄と価格高騰が起きているとして、国土交通省に供給確保を要望。「政府発表と現場のサプライチェーン(供給網)には大きな乖離(かいり)が生じている」とした。
だが、赤沢亮正経産相は会見などで供給が不安定な理由を「流通の目詰まり」「供給の偏り」と表現し、「連絡があればただちに解消する」と強調する。
境野氏は、有機溶剤の不足でユニットバスを入れられずリフォーム工事ができなくなったり、運送会社のインタンク(自家給油設備)への供給が途絶えたりと現場から「悲鳴のような声」が届いているとし、こう訴える。「不安にさせないためにあいまいな発信を続けるのではなく、国民に正確で丁寧に説明して、節約や省エネを呼びかけるべきではないか」
高市首相がXで「事実誤認」と打ち消したのは、不安に駆られた人々が関連商品を慌てて購入する事態となることを避けたいとの思いが背景にありそうだ。官邸関係者は、新型コロナウイルス禍を「トイレットベーパーがうわさで一気になくなった」と振り返り、ナフサ関連でも「買い占められたら困る」と警戒する。
現状では「パニック買い」の動きは、限定的だという。第一ライフ資産運用経済研究所の星野卓也・主席エコノミストがスーパーやコンビニなどの売り上げデータを分析したところ、「洗濯用洗剤類」などで伸びは見られたものの、新型コロナ禍でのトイレットペーパーなどの駆け込み購入と比べると小規模だった。
星野氏は、コロナ禍では外出自粛などの影響が広かった一方、今回は国内の石油備蓄かおり、政府が、事実を踏まえて「落ち着いていい」と発信できた効果があるとみる。ただ、もし混乱が長引けば供給不足が現実味を帯びてくるとし、「(備蓄で)ある程度、時間を稼げる。その間に代替調達を確保することが一番求められている」と語る。
日本総合研究所で原油価格の見通しを担当する栂野(とがの)裕貴研究員は、5月末までにイランでの戦闘が終わってホルムズ海峡が徐々に正常化すれば、高止まりする価格が「6月以降、緩やかにじりじりと下がる」と想定する。だが、先行きは不透明だ。戦闘が泥沼化して供給不足が進み、価格が高騰する「リスクシナリオ」も十分あり得るという。
「不確実性が晴れない限り、(メーカーが)少しずつ生産を落とす動きは止まらない」と栂野氏はみる。こうした抑制が連鎖すれば、流通の川下で供給不足が顕在化する。目詰まりの把握についても、石油製品の供給網は複雑であるとし、「どこで何か起きているのかを特定するのは、かなり難しい」と語る。
栂野氏は「経済を回しながら省エネする施策が次にやるべきこと」と説く。車通勤の人の在宅勤務推奨や高燃費車への買い替え支援といった対策で、景気を悪化させずにガソリン消費を抑え、石油製品依存の低減につなげることができる。
政府の情報発信のあり方に問題はないのか。麗沢大の川上和久教授(政治心理学)は高市氏のX投稿に「国民の不安を抑えたい気持ちは分かる」としつつ。「事実誤認」という言葉がバッシングや分断を招くことを懸念する。「資源を大事に使うことは、政治的な立場を超えて一致すると思う。先行き不透明な時代には、対立しないコミュニケーションが大事だ」
<<デスクメモ>>
赤沢経産相は24日、「ホラーストーリーを語るべきではない」と石油の供給不安を否定したが、境野氏の「詰む」との警鐘は「ホラー」なのだろうか。既に現場で影響が出ているのは、先行きを不安視して抑制する意識が各所で働いているからでは。政府の説明との乖離が気になる。(祐)
2026年4月25日 東京新聞朝刊 11版 16ページ 「ナフサ供給『6月に詰む』・・・境野氏の真意」から引用
70年代の石油ショックのときは、本当にスーパーの店頭からトイレットペーパーが姿を消すという現象を見たのであったが、あの時は「たかがトイレットペーパー」であったが、ナフサの場合は建築資材も無くなって建設業も仕事ができなくなるという大規模なダメージが予想されて、国内経済はかなり大変なことになるかもしれないという不安が過りますが、高市政権の説明は具体的な根拠を示して「大丈夫」と言ってるのとは違って、単なる「大丈夫」という言葉だけだから、専門家にしてみれば「年間これだけのナフサを消費しているのに、それをそっくり代替してくれる供給源が、世界のどこにあると言うのか」という基本的な「疑問」に応えていない点が、大きな問題だと思います。しかし、これは日本にとって大問題には違いありませんが、トランプ氏にとっても、秋の中間選挙へのダメージを少しでも軽減するためには、一日も早く「イラン問題」を解消しなければならないという「切実な問題」であるため、昨日今日のニュースでは「停戦期間を、条件を付けずに延長する」などと言い出しているから、ひょっとすると6月になる前に「ホルムズ海峡の正常化」が実現するのではないか、という可能性が見えてきたような気がする今日この頃です。