79回目の憲法記念日を翌日に控えた今月2日の毎日新聞は、専門編集委員・伊藤智永氏の次のようなコラム記事を掲載した;
正体不明の芸術家バンクシーの新作が4月末、ロンドン中心部に現れたのをニュースで見た。
高さ5メートル以上の立体像らしい。前を閉じたスーツにネクタイの男性とおぼしき体格のいい人物が、右手で大きな旗のポールを掲げ、勇ましく行進している。旗が顔にまとわりつき前が見えないのに、拳を握った左手を大きく振り、いかにも確信ありげだ。
国旗だろうか。スーツ姿の女性なら、高市早苗首相がモデルだと言われても違和感はない。
同じ立像が100体、大通りに並んだら、かなりの威圧感と不穏な空気が立ち上るだろう。
世界とそこに生きる私たちは、今どんな姿をしているか。黙って突きつけられた気がする。
4月27日に首相官邸で「新しい戦い方有識者会議」の初会合が開かれた。外交・防衛・経済の最高指針を定める国家安全保障戦略など安保3文書を年内に改定する。高市氏のあいさつ要旨。
「比較的安定した国際秩序は過去のものとなった。地政学的な国家間競争が激化している。我が国の平和と独立を守り抜くには、防衛力の抜本的強化を主体的に進めなければならない。総合的な国力を徹底的に強くする。新しい戦い方への対応や長期戦への備えを進めなければならない」
実は近衛文麿元首相、いや東条英機元首相のあいさつです、と混ぜっ返しても、誰も笑えない。
2022年に岸田文雄内閣が、反撃能力(旧・敵基地攻撃能力)の保有を認め、27年度までに防衛費をGDP比2%にするための改定を行ったばかり。当時の会議名は「国力としての防衛力を総合的に考える有識者会議」。
改組された今回の正式会議名は「総合的な国力から安全保障を考える有識者会議」。消えたコトバは「防衛力」。高市氏の「主体的に」とは、守るばかりが能じゃないよという意味だろう。
「新しい戦い方」の主な論点は、最新型ドローン兵器の大量生産体制、サイバー戦争の能力向上、何年も戦い続ける弾薬・部品・燃料の調達網、初の原子力潜水艦保有、核兵器の日米共同管理に向けた非核3原則見直し・・・。
よし、戦闘準備万全。いや、まだ大事な論点をお忘れでは。
「日本国民は、平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意した」(憲法前文)
安保3文書より上位の最高法規の書きっぷりが、どうも古臭い? いっそ憲法改定も「主体的に」議論なさったら。明日は施行79年の憲法記念日。
(専門編集委員)
2026年5月2日 毎日新聞朝刊 13版 2ページ 「土記-新しい戦い方と憲法79年」から引用
日本政府が「新しい戦い方有識者会議」という名称の会議を開くのは、憲法の主旨に照らして言語道断であり許されないことです。これは高市内閣が、何もない所からいきなり始めたものではなく、第二次安倍政権が国会に無断で「安保3文書」などというものをでっち上げてから始まった「憲法違反政治」であり、本来は国会と裁判所が立法府の「憲法違反路線」を断罪し止めさせるべきであったものを、テレビも新聞も異議申し立てをせず、国民に警鐘を鳴らすことも怠り、ただ傍観していたために、今日このような事態になったもので、これでは戦前に皇軍が中国大陸を侵略して、捕虜も一般市民も皆殺しにするという暴虐を働いても「勇敢な皇軍兵士」などと持ち上げて、日本国内の新聞発行部数を伸ばして利益を上げた、あの当時の反省をまったく忘却していると言わざるを得ません。この狭い日本列島で、ドローンを大量生産すれば継戦能力が向上するなどという愚かな発想で国を守ることが出来ると思い込んでいる人間の知能指数を疑う。