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小さなえほんとしょかん―ゆめのたね―

小さなえほんとしょかん―ゆめのたね―

晴雨計(第12~14回)

新潟日報 夕刊コラム『晴雨計』第12回 2008.7.17(木)
オワリジャナイ


 マケチャッタ。オワッチャッタ。
 「ゲームセット!」。主審の声がぼんやり耳に届く。整列した子どもたちが泣いている。
 相手の校歌が流れると、肩の震えが大きくなった。母ちゃんたちはもちろん、父ちゃんたちや先生の目にも涙がにじんでいる。
 9日、長男が出場した中学野球の上越地区大会の応援に行ってきた。
 初回。ヒットではなくパスボールで失った1点。どんなに点差が開いても、終盤には追いつき逆転する、そんなハラハラする試合を今まで何度も見てきたので、1点くらいすぐに返せると思っていた。
 案の定、長男のチームがヒットも多く、ミスも少なくて優勢だった。なのに、野球の神様は気まぐれで、どうやら相手チームに微笑んだらしい。ノーアウト満塁のチャンスに、1点も入れられなかったのだから仕方がない。互角、いやそれ以上のいい試合をしたが0対1。初戦敗退だ。
 野球の絵本は以前紹介したので、今回は直接関係のないダンプえんちょうやっつけた(作・古田足日、絵・田畑精一、童心社)という本を選んでみた。
 港町の真ん中にある小さな保育園。個性豊かな年長児9人と、豪快なダンプ園長が野山で繰り広げる大胆な海賊ごっこが楽しい。魅力的な先生、個性的な9人の子どもたち―長男の野球チームとどこか似ている。
 小さな町で低学年から野球を続けてきた3年生9人。対する顧問2年目のダンプ体形H先生は、専門が野球ではなく柔道だ。最初はノックも決まらず、ルールもわからなかったそうだが、「技術は無理でも精神面なら…」と、多くの大切なことを教えて下さった。そのおかげで子どもたちは成長した。絵本でも、怖がりのさくらが、どんどん強くたくましくなっていく姿が描かれていて、意外な共通点に笑ってしまう。
 オワッチャッタ。
 確かに、このメンバーで公式戦に臨むことはもうないけれど、仲間として一生つきあっていける。
 そう。終わりではなく、新たなスタートだ! 辛くなったら、母校というホームに戻ってくればいい。

新潟日報 夕刊コラム『晴雨計』第13回 2008.7.24(木)
幸せのたねまき

 
いよいよあと2回だ! え、何がって?! あはは。この「晴雨計」の連載がである。 
 「締め切りに追われる生活なんて、売れっ子作家みたいでかっこいい!」などという淡い憧れも、始まってすぐに吹っ飛んだ。何とか原稿を書き上げ、編集のTさんと数回メールをやりとりし、やっとOKが出て新聞に載ると、もう次の原稿に取り掛からねばならない。1週間、いや、3カ月なんて、本当にあっという間だ。
 今思えば、家族でかわいがっているウサギのパンダ君のことも、趣味で続けているよさこいのことも…、あれもこれも書きたかった。それに、お気に入りの絵本をたったの十数冊しか紹介できないなんて、とても残念だ。
 もうこの際、今日は、大好きな絵本たちをまとめてたっぷり味わえる、とっておきの絵本ガイドブックを紹介しよう。幸せの絵本』『幸せの絵本(2)(編・金柿秀幸、ソフトバンクパブリッシング)だ。読むだけで幸せになれる絵本が百冊ずつ! 表紙の絵とは別に、最高のシーンがどーんとカラーで載っているところなどはほかのガイドブックとひと味違う。
 ユニークなのは、専門家ではなく、ママ、パパ、先生、ばあば、じいじ…といった読者の生の声で紹介されているところ。インターネットの参加型絵本紹介サイト「絵本ナビ」に寄せられた感想の中から、「この絵本で、子どもとこんなに幸せな時間を過ごしました」という内容のものを選んで編集されている。私の感想も「ぼの」の名前で載っているので、参考にしてもらえたらうれしい。
 私にとって、絵本は人生のバイブルだ。幸せな時はもちろん、仕事につまずいたり、人間関係で悩んだり、子育てで落ち込んだり…。辛い時にふと開いた絵本が、解決のヒントを与えてくれることもしばしば。そして私が家庭や小学校で絵本を読むことは、「幸せのたねまき」だと思っている。
 題名や内容は忘れてしまったとしても、母ちゃん(あるいは上松さん)に読んでもらった絵本は面白かったなーという、幸せな記憶が心の片隅に残ればいい。大人になって人生の壁にぶつかった時、その記憶がちょうど芽が出るようによみがえり、助けになってくれたらいいな。「そうだ!絵本があるじゃないか」と。

新潟日報 夕刊コラム『晴雨計』第14回 2008.7.31(木)
夢を叶えたこの絵本


 明日8月1日は、我が家の双子ちゃんの2歳のバースディーである。
 ―え、そんなに小さな子がいたの?しかも、双子?!―
 頭の中が「?」でいっぱいになっている皆さん、びっくりさせてごめんなさい。実は、この双子、私の絵本ゆうちゃんとれいちゃん改訂版(日本文学館)に出てくるゆうれいの女の子たち。平成18年8月1日、ソフトカバー版を出版してから、明日でちょうど2年が経つ。
 小2の次女が通う小学校で絵本読みのボランティアをさせてもらっている私は、これを、卒業間近の6年生の教室で、他の数冊と一緒に読むことにしている。
 ―顔も形もそっくり、いつでもどこでも一緒。とっても仲良しだけど、好きな遊びも食べ物もまったく違う二人。ある夏の暑い夜、海で泳ぐ姿を、釣りをしていたつりきちさんに目撃されて…?!―
 元々は、次女が2、3歳の頃、瀬名恵子さんのおばけの絵本にはまり(特に、人間のように笑ったり泣いたり、ちっとも怖くないゆうれいの絵本がお気に入り)、何度も繰り返し読んだのがきっかけ。それならいっそのこと、もっとかわいい友達のようなゆうれいが登場したらどうだろう?!と、作った絵本だ。
 この、双子のゆうれいのお話を、中学校という新しい世界へ旅立つ子どもたちに、はなむけの2つのメッセージを込めて読む。
 1つ目は「個性尊重」。双子でさえ、こんなにも好みや性格が違うのだから、他人のみんなが違うのは当たり前。自分の好きな物(こと)を大切にしながら、相手の好きな物(こと)も認められるような人になってほしい。違ってもきっと仲良くできるはず。2つ目は「夢をあきらめないで」。こんなオバチャンでも、決して上手とは言えない絵でも、「絵本を出したい」という夢を持ち続けていたら叶ったよ! 夢は叶えるためにあるんだよ、と。
 3か月間、読んでくださった皆さん、本当にありがとう。いつか必ず、2作目の絵本に挑戦します。これからも応援してくださいね。






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