2019/02/06(水)09:17
『春にして君を離れ』アガサ・クリスティ
記憶の中のミステリーといおうか、15年振りに学校時代の友人ブランチ・ハガードに会ったことから、するすると過去がよみがえり、疑惑が浮上する。
経済力のある弁護士の優しいご主人を持ち、息子、娘2人は立派に成人し、それぞれ独立や結婚している。
何の心配もない幸せも幸せのヒロイン、48歳のジョーン・スカダモア。
ブランチは学校時代から、奔放な女性。『あたしって、昔から悪趣味だったのよ。考えることが』って、ずばずば本音を。
しかしブランチと別れてから、記憶が、『蜥蜴が穴から這い出るように―緑色の蛇がぬらりと胸のうちをのたくって過ぎるように。』『どこからかひょいと現れて』ぞっとしてくる。ブランチの一言で。
場所は広い寂しい砂漠の中の中継地、テル・アブ・ハミドという鉄道宿泊所に災害のため、何日も閉じ込められて...。
ジョーンは広い広い砂漠のなかで考えに考える。
謎は謎を呼び、ご主人のこと、子供達のこと、自分のことに及んで来る。
夫が口ずさんだ詩「春にして君を離れ」ってなんだろう、と。
果たして...。
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アガサ・クリスティの「愛の小説」として、ミステリーじゃないのでメアリ・ウエストマコットの名で出版されたそうだが、ミス・マープル物(私はそれが好み)に繋がっていると思う。
ずっと前に読んだ時「自分とは、誰。何処に自分は居るの。どうしてここに居るの。」と、とても印象が深かった。
昨日、isemariさんのクリスティ話題に書き込みし、むらむらと今日再読。
ちりばめられた言葉がいい。特に、ブランチのセリフが。
ブランチ 『あなたって、ちっとも変わっていないのね。どう見たって三十そこそこじゃないの。これまでどうやって暮らしてきたのよ?冷凍庫にでも入ってたの?』
ジョーン 『いやぁね。ずっとクレイミンスターよ』
ブランチ 『かしこに生まれ、育ち、嫁ぎ、しかしてまたかしこに葬らるか』
ジョーン 『でもそれ、そんなに嘆かわしい運命かしら?』(笑)
やはり是非、お薦めです。