やっぱり読書 おいのこぶみ

2005/04/18(月)20:44

「錆びる心」桐野夏生(文春文庫)

読書感想(317)

桐野夏生さん初短編集という。 虫卵の配列 羊歯の庭 ジェイソン 月下の楽園 ネオン 錆びる心 の5編。どれも力強くて読み応えあり。 桐野さんはつくづくタイトルの妙手であると思う。松本清張さんの何百とある短編の題も素晴らしかったことを連想していたら、解説(中条省平さん)で『錆びる心』が『松本清張に匹敵する腕の冴え』との評。 思うに『錆びる心』の素材、展開は長編に書いてほしいくらい、もったいない。 『錆びる心』…『十年耐え忍んだ夫との生活を捨て家政婦になった主婦。囚われた思いから抜け出してはじめてみた風景とは』(表紙裏より) 不仲な夫婦の長年にわたる忍従といっても、10年間も復讐を秘めて暮らしている図は恐い。外にでてみれば、家政婦という仕事に就くことによって、他人のより複雑な暗い人間関係に立ち合ってしまう。その人間性のダークさによって、自分のダークさに気がつく皮肉。 実に面白いと私は思うが、この暗さと重さは現実にありそう、いやあるので辛いかもしれない。

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