やっぱり読書 おいのこぶみ

2006/10/22(日)13:03

読みやめられない本

読みたい本、注目の本(32)

『打ちのめされるようなすごい本』米原万理(文藝春秋) 読子さんのお知らせもあって注目していたこの本。米原万理は『不実な美女か、貞淑な醜女』しか読んでいないが、ユーモアにつつまれた雄雄しいきっぱり感が嬉しくて、著書を全部読みたくなった作家。特に書評は如何に?と思っていたのだ。 10月15日の発売を待って、2,400円という値段に多少躊躇したものの購入に踏み切り(おおげさ)、私が読み知っている本についてなんて書いてあるかと、パラパラとめくっていたらこれがとまらない。 第一部は週刊文春に連載されていた「私の読書日記」。第二部は1995年から2005年までの時々の書評全部が網羅されているという。帯の「最初で最後の書評集」がしんみりする。 500ページの部厚い本だし、こま切れの書評が一気に読めるとは普通続かないのだけれど、歯切れのよさ、ユーモアに次は、つぎは?と読んでしまう。 本職がロシア語の通訳なのでロシア関係の本も多いが、猫好き動物好き、旺盛な好奇心によって選ばれる本の数々、ジャンルの豊富さにはものすごく刺激を受けた。あのエッセイの面白さはこの知識欲の塊から来たものなのね、と納得。 でも、多い書評の骨頂はかもされる面白さ。「む、ぐ、ふふふふ」と笑い出したくなる文章のセンスがいいのが好き。 「私の読書日記」の最後のほうは、やはりガン関係の本が多く哀切をよぶが、泣き言はなく冷静さを失っていないところがらしいので、安堵する。 井上ひさしの解説に 「書評は常に試されている。まずその書物を書いた著者によって、その書評に誘惑されて書物を買った読者によって試されている。誉めれば甘いと叱られ、辛口にすればたぶん一生恨まれ、ほどほどにしておけば毒にも薬にもならない役立たずと軽んじられる。…」 という仕事を、こんなに嬉々とされていた米原万理、ばんざい!! まだ全部は読んでいないが、途中でこの感想を書きたくなった。私が読みたくなった作家がまた増えた。その名は斉藤美奈子、奥田英朗。まだまだ出てくるかもしれない。

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