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やっぱり読書 おいのこぶみ

2021年10月01日
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カテゴリ:読書メモ
『日本アパッチ族』(小松左京)



まずこの表紙絵に度肝を抜かれた。
鉄色のアパッチ人みたいなのが腰かけた洋便器からパチンコ玉みたいなもの(鉄)が流れて・・・印象は気持ち悪い。けれども読み進むとそれが思いもかけない展開でだんだん面白くなってくるのだ。

警察に失業罪(働かざる者食うべからずの社会か)という変な追放罪で広大な囲い地に放り出された主人公。そこは瓦礫累々の廃墟、人っ子一人いない。犬に食われそうになったりいろいろあって、もう野垂れ死にかと思いきや、アパッチ族という食鉄人(鉄を主食とする)に助けられ、仲間に入るところから始まるのであった。まあね、初めて鉄を食べるところの描写は、いい気持ちしないんだけど。

それからの奇想天外のお話というより、現代社会機構の矛盾を突く運びにつれて、辛辣になってくるのが古びていないテーマなのだ。国家権力、マスコミの仕組み、民主主義の煩雑さ、裏社会、底辺の人々の抜け目なさ等々、筆運びはユーモアに富んだ掛け合いで、なかなかのもの。

鉄がらみで、鉄の成分とか、鉄鋼業界とか、微に入り細を穿つ説明もわたしには半分しかわからなかったが、『日本沈没』より『復活の日』より前にかかれた初長編ということ、並び称される作品だと思う。​






最終更新日  2021年10月30日 13時02分11秒
コメント(6) | コメントを書く
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Re:小松左京のSF(10/01)   alex99 さん
小松左京氏は
京大の学生時代
京都市の左京区に下宿していたので
ペンネームにしたらしいです

彼の作品
い篇ぐらいは読んだだろうとは思うのですが
思い出せません

おなじSFでも
星新一氏の作品なら数編読んだ記憶があるのですが
ただし、内容は、やはり、覚えていません
私にとって日本のSFは、そんなものかもしれない
どこか、嘘くさい感じがして
まあ、実際、嘘なんですけれど(笑)
自分が住んでいる日本のリアルライフがあまりにリアルなので
その日本を舞台にすると、SF的展開が不自然に思えて


ポーランドのレムの作品は印象的
現地で現地語の本を買ったこともあるけれど
もちろん、読めません(笑)


(2021年10月01日 19時39分11秒)

Re[1]:小松左京のSF(10/01)   ばあチャル さん
alex99さんへ

>京都市の左京区に下宿していたので

なるほど
というか、わかりやすい


ところで、この小説の舞台は主に大阪城のそばにあった大阪砲兵工廠跡地の廃墟にがれきがまだあったところから始まるのです。

戦後の後が色濃い時代を思いが起こし、大阪城から見る夕暮れの東区杉山町、もとの城東線やら街々のネオン・・・という情緒豊かなプロローグを読んで、近場の方は懐かしいのではないか、と思いめぐらし(もちろんわたしはわからないんだけど)

高村薫さんの刑事ものや、田辺聖子さんの小説に登場する地名からも醸し出される雰囲気がおもしろくて興深く感じました。

それは何でも東京、東京中心のような雰囲気で育って、今も余生をおくっていて、当然執着はありますが、人それぞれの気持ちを本当に理解していたかと言うとまだまだ足りないなとしみじみ思いました。

人間のふるさとは地名ではなく人間の心にあるのだなあと。それは日本でもなく、世界でもなく、地球でもなく。

そんな風だからこうしてつながっていけるのですね!
(2021年10月02日 09時12分56秒)

Re:小松左京のSF(10/01)   alex99 さん
大阪の軍需工場跡から鉄屑を持ち出す”泥棒部落”、”アパッチ族”とも呼ばれた集落を取材し、『日本三文オペラ』

これは開高健の作品ですけれど「日本アパッチ族」と同じ舞台です

私も生まれは大阪市内ですが
このような大阪城に近い軍需工場跡では生まれていません(笑)
生まれてしばらくして疎開で阪急沿線の郊外に移住
阪神間の阪急族として完結した世界で育っちました
(佐藤愛子さんとその点、ほぼ同じ)
この阪急圏の世界というものは
東京の人には理解してもらえないだろうと思いますが
確固として存在していた世界です

したがって、大阪環状線(昔は省線と言いました)の中へは
立ち入る機会が無く、必要も無く(笑)
ただ、幼少時に何らかの機会にこの省線電車に乗った記憶があり
その車窓から、この空襲の犠牲になった軍需工場跡の
荒れた光景を記憶にとどめています
あの当時は、開発以前でもあり荒れたままの
相当ガラの悪い場所(笑)と言っていい
開高健はあの近辺で育ったようなことを書いていて
そういえば彼の大阪弁も郊外や北摂の言葉とは全く違う
「日本三文オペラ」は、自伝的要素があるようです
(2021年10月02日 12時19分20秒)

Re[1]:小松左京のSF(10/01)   ばあチャル さん
alex99さんへ

>阪神間の阪急族として完結した世界で育っちました

そうでしたね、佐藤愛子さんや須賀敦子さんの世界です
この小説の舞台とは別世界なのはわかりますよ

わたしたちはなんとなくしばしば西圏、東圏でひっくるめてみてしまうけど
知れば知るほど一緒ではないのですね

東京圏も同じ、東京と言えど広し、江戸っ子も、山の手も一つの種類、他地方からの一世二世三世が複雑に作る世界です



開高健の『三文オペラ』も読もうかなと思ってました
『日本アパッチ族』の解説に
開高健、高橋和巳、小松左京が知り合いで仲良くて
作品に影響し合っているとありました

わたくし高橋和巳作品も好きなので、それも再読しようかなと
(2021年10月02日 17時37分57秒)

Re:小松左京のSF(10/01)   alex99 さん
ばあチャルさんへ

関西って、私鉄が非常に発達していて
その各私鉄が沿線にそれぞれ文化圏を持っている
そんな感じです

阪急文化圏は
扇の要の大阪梅田駅が東端にあり
そこから3本の路線が伸びており
・ 北西方面へ京都線が
・ 西へ宝塚線が
・ 同じく西へ宝塚線と並行して(海岸沿いに)神戸線が
まあ、この三本の路線からいろいろ支線が伸びていますが

この阪急文化圏の他にいろんな私鉄が

・ 梅田から神戸へ阪急神戸線と並行して阪神電鉄が
  (阪急より庶民的 田辺聖子さんの世界)
・ 梅田近辺から京都への京阪電鉄
・ 南の難波から和歌山への南海電鉄
  (阪急は北大阪をカバーするが
   南海は南大阪をカバーする文化圏)
  (気性が荒い)(笑)
・ 難波から名古屋への近鉄電鉄
  (大阪と名古屋をつなぐ接点)

それぞれ独自の文化圏なので
他の電鉄に乗るだけで雰囲気が違います
(これは私の米国人の義弟も強く感じたと言ってました)

それに他の電鉄に乗ることはほとんどありません(笑)
特に阪急族は、ほかの私鉄はガラが悪いと、乗りません(オイオイ)
私の場合、幼児期に、甲子園球場へ行くためにたまに阪神に乗るぐらいでした

阪急族にとっては
買い物は梅田の阪急デパートで
京都散策・紅葉は京都線で
宝塚歌劇・動物園・遊園地は宝塚線で
神戸港・中華街・海水浴へは神戸線で
生活圏が完結してしまうわけです
それが阪急族を阪急文化圏に閉じ込める
小林一三の陰謀でした(笑)

(2021年10月05日 23時56分25秒)

Re[1]:小松左京のSF(10/01)   ばあチャル さん
alex99さんへ

とてもよくわかりました!
教えていただいてすっきりしました。

沿線によって人の雰囲気が変わるというのは、東京圏も土地勘あればおのずと感じることもありますので。

そういうことが、例えば生まれ育ったひとの人柄や小説などに醸されるのですよね、それももう幻想となるかもしれませんが…。


阪急デパートと言えば、数寄屋橋に支店(数寄屋橋阪急)がありまして、3~40年前までは何と申しますか、ゆったりした高級店の穴場でした。

その古いビルも今は超モダンな総合商業ビルに建て替わり、まだ行ってはいませんが、どうなっているのでしょうかね。

先日、用事があり2年ぶりで出た銀座はもちろん昔の面影は一切なしでございまして、後は思い出のみ…。
(2021年10月07日 09時58分34秒)

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