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カテゴリ:読書日記
最近読んだ本。
いしいしんじさんの最新刊「みずうみ」。 表紙の美しい青が印象的。 今までの作品とは少しちがう(と言っても、いしいさんの小説は、ひとつひとつが全部別の作家の小説のように違うのだけれど)。 抽象画のような世界。 次々と転換する場面が、「みずうみ」を通じて深いところでつながっている様子は、どこか多和田葉子を思わせる。 こういう文章を最後まで読ませるには、ほとんど人智を超えた筆力が必要。 特に1章の秀逸さは鬼気迫る。 すごいなあ、いしいさんは! 何がすごいって、ギリシャ神話や竹取物語の時代にもう出尽くしたと思われていた「物語の原型」を、次々と惜しみなく生み出してしまうところが、本当にすごい。 泉を掘り当てたのだ、彼は。 4年くらい前に買った、星野道夫さんの写真集セットを、あらためてしみじみと眺めている。 「オーロラの彼方へ」に始まり「大いなる旅路」で終わる5冊セット。 何度みても、いい。 特にシロクマの写真、何度みても泣いてしまう。 星野さんの著書にもたくさん出てくることだけれど、自分が満員電車に揺られたり会社でパソコンに向かったりしている間、別の場所ではオーロラが煌めいたり、クジラがはねて海を揺るがしたり、クマが森を歩き回ったりしているんだ。 その神秘。その許し。その奇跡。 考えるだけで、何か大きなものにひれ伏したいような、泣きたいような、深呼吸したいような、ふしぎな気持ちに胸が満たされる。 星野さんの写真から伝わってくるのは、アラスカの自然への深い愛情と尊敬。 自分の存在がいつしか自然の中に溶け込んでしまうほどの、圧倒的な安らぎ。 この写真集はきっと、おばあちゃんになってもずっと、わたしの宝物だ。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2007.04.09 20:37:04
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