596312 ランダム
 HOME | DIARY | PROFILE 【フォローする】 【ログイン】

本読みのひとりごと

本読みのひとりごと

【毎日開催】
15記事にいいね!で1ポイント
10秒滞在
いいね! --/--
おめでとうございます!
ミッションを達成しました。
※「ポイントを獲得する」ボタンを押すと広告が表示されます。
x
X

PR

Free Space

読むこと、書くことが大好きなbiscuitです。
夫、元気すぎる2人の息子と4人暮らし。

新聞記者を経て、フリーランスライター/エディターに。

Profile

biscuit5750

biscuit5750

Comments

biscuit5750@ Re[1]:木々との対話(09/12) >micoさん こんにちは!すっかりご無沙汰…
mico@ Re:木々との対話(09/12) bisさん、こんにちは。まずは次男くんのご…
biscuit5750@ Re[1]:さようなら、クウネルくん(01/27) >micoさん お久しぶりです! コメントを…
mico@ Re:さようなら、クウネルくん(01/27) クウネル。新装された表紙を見てお別れし…
biscuit5750@ Re[3]:子どもを持つことの不自由と、自由(11/17) >バーソロミューさん お久しぶりです! …

Rakuten Card

Archives

2024.11
2024.10
2024.09
2024.08
2024.07

Category

2007.06.28
XML
カテゴリ:読書日記


田辺聖子「私的生活」を読む。

デザイナーで、薄化粧にTシャツとジーンズが好きな乃里子は、財閥の御曹司、剛と結婚する。
豪華なマンションで始まる、ふたりきりの甘い生活。
お菓子の家で暮らす小人のようなその生活は、乃里子の「私的生活」を犠牲にすることで成り立っていた…というお話。

乃里子の「私的生活」を象徴しているのは、彼女が仕事場にしていた大阪のマンション。
そして、かつて彼女の仲間だった画家や芸術家たち。
夫は乃里子に何不自由ない、(剛が考える)女として満たされる生活を与えてくれるけれど、彼女が「私的生活」の中で満たしていた自尊心が、結婚生活の中でゆっくり押しつぶされ、からからに渇いていくことには気づかない。
気づいていても、片目をつぶり見ないふりをする。
乃里子が私的生活の片鱗でも見せようものなら、子供のように腹を立て、ふて腐れる。
剛はたぶん、こわいのだ。
ふたりの生活の危うさに、動物的な勘でうすうす気づいているから。

乃里子もわかっていながら剛の感情に振り回され、自分の感情に振り回される。
感情に振り回されると、現実は思いがけない、とんでもない方向に流れていく。
それは剛の甘えだけれど、同時に乃里子の甘えでもある。
甘えの中で、ふたりはがんじがらめになっていく。

ああ、わかるなあ。
文庫の初版が出たのは25年前だけれど、全然色あせない。
もっとさかのぼれば、イプセンが「人形の家」を書いたときから、女性が抱えるジレンマは何も変わっちゃいないのだ。
乃里子はノーラ、剛はトルヴァルだ。

ラストはフランスの映画のような気だるさ。
決して明るくはないけれど、乃里子の変化を予感させる。
「私的生活」は3部作の真ん中なので、これから1作目の「言い寄る」、3作目の「苺をつぶしながら」も読むつもり。






お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう

Last updated  2007.06.29 17:11:35
コメント(0) | コメントを書く
[読書日記] カテゴリの最新記事



© Rakuten Group, Inc.
X