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カテゴリ:読書日記
とても長いあいだごぶさたしてしまいました。 年の瀬を、みなさまいかがお過ごしでしょうか。 わが家は夏にぶじ引っ越しをすませ、あたらしい街での暮らしにもようやく慣れてきました。 友達も、お気に入りの場所もできました。 ちびくまは1歳4ヶ月になり、とことこ歩きまわったり、名前を呼ぶと手を上げてお返事したり、自分でスプーンを持ってごはんを食べたり(まだまだ失敗も多いですが)、できるようになりました。 クリスマスは、家族で伊勢神宮へ。 ずっと行きたかった場所なので、本当に楽しみにしていた。 宇治橋をわたったとき、ああ、ここはふだんわたしたちが暮らしている場所とは別の世界なんだ、と感じた。 参道には、年とった神さまみたいな木が無雑作にたくさん生えていて、歩いているだけで、背筋から頭のうしろあたりがすーっとするような、笑い出したくなるようなすがすがしさ。 現世に生きる悩みも迷いもなくなったわけじゃないけれど、すべてひっくるめて、今ここにいる、伊勢の森に抱かれている自分が最高に幸せ、という思いがこんこんとわいてきた。 旅行最終日には、雪国の友に再会。 打ち合わせたわけじゃなく、たまたま同じ時期に伊勢への旅を計画していた。 電車の時間があったから、すこしの時間だったけれど、顔を見て話をして、手のぬくもりを感じて、何だか涙が出そうになった。 この人とは、離れていても、頻繁に連絡を取り合わなくても、特別な約束をしなくても、大事なときにちゃんと会えるようになっている。そういう気がする。 帰り道、宇治山田駅でお弁当を選んでいたら、向こうから、おばあさんとその娘さんらしいふたり連れがやってきた。 「まあ、なんてかわいらしい!」とちびに声をかけてくれて、ちびがにっこり笑い返した。 「あら、笑ってくれたの、ありがとう」とちびの手にチュウをしたおばあさんは、ひょっとしたらすこし涙ぐんでいたかもしれない。 かばんからお財布を出して、「これで何かおいしいものでも食べて」とちびに千円札をにぎらせてくれた。 くまとわたしは仰天して「いやいやいやいや!通りすがりの方にそんなことしていただくわけには!!」とあわてて返そうとしたけど、娘さんがおばあさんの肩を抱くみたいにして、「じゃあね、ありがとう」と急ぎ足で行ってしまった。 わたしたちにはわからないけど、ひょっとしたら、ちびは何か、おばあさんとちびにしかわからない、秘密の言葉を彼女に伝えたのかもしれない、と後でふと思った。 田口ランディ『サンカーラ』を読む。 自分にとって特別になる、ずっと手もとに置いて折にふれ読みかえすことになる本は、手にとって数ページ読んだところで「ああ、そうか」とわかる。 指をはさんだまま本を閉じ、深呼吸する。 特別な出会いを、きっとどこかにいる本の神さまに感謝する。 4章で、自分が人生かけてやりたかったことを思い出し、体がふるえた。 そして震災の後、家族を守らなきゃ…と必死に暮らしていて気づかなかった、というより気づかないふりをしていたが、自分がとても傷ついていたのだと気づいた。 本をひらいたまま、子どもみたいにわあわあ泣いた。 失ったものをなつかしみ、悲しんでいいのだと、ようやく自分に許すことができた。 6章、自然に惚れられた人びとの言葉。 7章、問いを立て、考えつづけることの本当の意味。 魂こめて書かれた言葉が、読み手の奥深くまで届いて、無意識を変容させる。 そういう力のある本だと思う。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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