2016/03/31(木)10:29
『リリーのすべて』
90年ほど昔のデンマークでの実話をもとに
レミゼラブルのフーパー監督が作った映画。
その実話とは、世界初の性別適合手術を受けた人の話。
風景画を描く夫と肖像画を描く妻という画家夫婦で、
モデルが休んだので代役を妻に頼まれた夫が、
トウシューズを履いて、バレエの衣装をつけてみたら
自分の内側に潜むモヤモヤに気づいてしまった。
そして、ほどなく「リリー」という女性として過ごす
ことが多くなった夫の苦悩、妻の戸惑いが始まる。
このあたりの静かな進行が、見ていてじわじわと迫ってくる。
二人の住んでいる部屋のシンプルなインテリアや衣装が
時代を超えた良さを感じさせて興味深く、ステキ。
夫と妻ではなくなっても互いの愛情は変わらないのが
なんとも切なくて、深刻な気分になる。
完璧に女性となるために挑戦した二度目の手術で
帰らぬ人になった。
丘の上に立った妻のシフォンのスカーフが風に乗って空高く
飛んでいくラストが印象的。
ドラマでありがちなベタ演出なのに、この映画にはしっくりきて
美しく、天に召された夫のもとに気持ちが届くかのように見えた。