スタンフォード式最高の睡眠 西野精治 ◎
スタンフォード大学で睡眠を専門に研究している著者が、科学的な根拠や研究結果をもとにどうすれば質の高い睡眠をすることができるかを書いている。
また、睡眠時間が十分に確保できない人のために最低限の眠りを確保するためにはどうすればいいかも記載している。
睡眠は眠り始めの最初の90分で決まる。
最初の90分さえよければ残りの睡眠も比例して良質になるが、逆に最初の90分の質が悪いと自律神経が乱れて日中の活動にも支障が出る。
研究結果によると、死亡率が一番低いのは7時間眠っている人たちであった。
それより短時間睡眠でも長時間睡眠でも、6年後の死亡率が1.3倍高いという。
また、短時間睡眠は肥満や糖尿病、高血圧などの生活習慣病に直結する。
眠らないとインスリンの分泌が悪くなって血糖値が高くなる。
食べ過ぎを抑制するレプチンというホルモンが出ず太る。
しかし、1日1時間以上の昼寝は糖尿病リスクを高めるというデータもあるそうなので、昼寝には注意すること。
また、週末の寝だめでは睡眠不足は解決しない。
普段から適切な時間を寝ておくことが肝腎である。
眠りにはノンレム睡眠とレム睡眠の2種類があり、寝ている間に90〜120分の周期で交互に繰り返す。
混同しやすいのだが、ノンレムが深い眠りでレムが浅い眠り。
ちなみに「レム」というのは「ラピッド・アイ・ムービング」のことで、浅いレム睡眠の間に眼球が高速で動いているそうだ。
眠り始めてから最初の90分間に深いノンレム睡眠に入るのだが、とりわけ最初の90分間が睡眠全体の中でも最も深い眠りとなる。
健康な人の場合は、目を閉じてから10分未満で入眠し、入眠後には比較的短時間でノンレム睡眠に入る。
最初の90分の質が悪ければ気分や体調・自律神経機能が整わない、といった典型的なうつ症状が現れるから注意だ。
逆に最初の90分の質を整えることで自律神経を整えたり成長ホルモンが分泌されて脳のコンディションも整えられる。
もしどうしても徹夜しなければならない時は、まずは夜眠気がある時に90分間だけ寝てしまおう。
仕事を終えてから明け方に睡眠を取るというのは、地球に反したやり方である。
夜、90分だけ深い眠りをすることは明け方に寝るよりも体調が大幅に異なってくる。
良い眠りのためには皮膚温度と深部体温の差が縮まっていることが重要。
皮膚温度を上げて熱放散すると深部体温は下がり入眠する。
入浴により皮膚温度を変化させること
。
入浴後、90分後に体温が一番下がるので、寝る90分前に風呂に入る。
通常、就寝する時間の直前から2時間前あたりまでは「睡眠禁止ゾーン」として眠りづらいことが実験によって明らかになっている。
いつもより早く寝ようとしても眠れないのはこのためである。
寝る時間はいつも通りにして、睡眠時間を1時間削る方が睡眠を確保できる可能性が高い。
光の刺激は脳の活性化に影響を与える。
夜間の豆電球の明かりが、肥満や脂質代謝異常のリスクを増やすという発表もある。
朝は太陽の光を浴びることで覚醒する。
朝に冷たい水で手を洗う、朝食を取るというのもリズムを整えるのに効果的である。
夕食を食べないとオレキシンの分泌が促進されて、食欲が増大する上に覚醒して眠れなくなる可能性が高い。
また、オレキシンは交感神経の活発化や体温上昇も引き起こす。
夕食抜きは百害あって一利なしである。
14時ごろに眠くなるのは、昼食のせいではない可能性がある。
人間のリズム的にその時間帯に眠くなるようになっている。
もし会議中に眠くなってしまった場合は、発言や質問をする。会話は覚醒のスイッチである。
また、30分未満の昼寝も有効である。3
0分未満の昼寝をする人は、昼寝の習慣がない人に比べて認知症発症率が7分の1になる。
本書は良い睡眠を実現するためのノウハウが科学的に説明されているため、納得して理解することができた。
しかし私の疑問はまだ幾つかある。
・体温を下げるために寝る前に冷たい水を飲むのは有効か?
・寝ている間に扇風機の風に当たることは睡眠の阻害要因となるか?
・車の音などの外部騒音は睡眠の阻害要因となるか?
もし、ご存じの方がいれば教えてください。
スタンフォード式 最高の睡眠【電子書籍】[ 西野精治 ]