読書とパイプの日々

[今日読んだ本] カテゴリの記事

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• うむむ

  更新のラスト一日となったのに、きちんと読んだ本がない伊坂幸太郎の『ゴールデン・スランバー』は読みかけだし、篠田真由美を初めて読んで、この頭の悪いキャラと頭の悪いプロットに気持ち悪い文章は何と思ったのをラストにしたくないし、岩崎書店のジュヴィナルＳＦを読んで久しぶりにＳＦを読んだ感を覚えたのもちょっと何だし、北方謙三を最近読み始めたというのも恥ずかしいし、ネタがない。酒見賢一で始めたので、彼の『中国雑話中国的思想』# 文藝春秋 (2007/10) ISBN:9784166605965が出ているのを気がつかなかったので、買いに行きますで本のエントリは終りにしておこう。読書とパイプの日々と揚銘しながら、本のエントリがさほど多くなかったのは、ひとえに書くよりも読む方が好きな怠け者であるせいである。

  2007.12.31

• 三木原慧一『合衆国解放 2』

  中央公論新社 (2007/12)ISBN:978-4125010120『超弩級空母大和シリーズ』以来最長となる、三木原慧一のクリムゾンバーニング・シリーズ最新刊。前巻が出たときに、続きが出て欲しいと書きましたが無事に出版されたようです。それだけでなく巻末の予告によれば来月に３が出てシリーズ完結となるようです。まずは目出度い。山ほどある架空戦記物ですが、その書き手の中でも古株の一人に佐藤大輔という困った人がいて、非常に面白い話を書くのですが、物語が佳境に入ると何故かそのシリーズを放置して別のシリーズを始めたりする悪い癖があります。そんな困った人にシリーズ新作をお預けされている読者から、敬愛をこめて御大と呼ばれている佐藤大輔のシリーズの中でも元祖架空戦記物元祖のようなシリーズがレッドサン・ブラッククロスです。レッドサン（大日本帝国）とブラッククロス（ドイツ第三帝国）が世界の覇権をかけて（このエントリー書きかけ）佐藤御大の話を出したら、当日に完結出来ませんでした、あな恐ろしや遅筆の呪い！えー、佐藤御大のレッドサン ブラッククロスでもアメリカ大陸が戦場となりますが、パナマに侵攻し、本土で激戦が続いてる段階で放置されてます。そんな煉獄に置かれた読者を、このクリムゾンバーニング・シリーズは些かなりとも救済してしてくれるのではないかと思います。アクの強いキャラにシェイクスピアの引用、超兵器の激突。三木原さんの方が派手ですし、アメリカ大陸でこれだけやってくれればお腹いっぱいだから、怠け者の御大はもう寝てていいよ！って気にならんでもないです。あと三木原作品の特徴としてアニメ・ネタがあります。それもオールド・タイマーに理解可能な範囲から出してくれるのがありがたい。種ネタ使われても分からんからね。

  2007.12.27

• まあ一度は

  と思って、アメックスのカードを申し込んだ。１年間会費無料のセール中だったから、当然一年後には退会である。むか～し、大友克洋の『気分は戦争』という本があって、その中のエピソードで確か金のなさそうな男が後でアメックスを出して、てめアメックスかよみたいな事を言われるシーンがあった（なにせ昔のことだ、別の本かもしれぬ）以来、一度は持ってみたかったんだよね。昨今じゃアメックスもプラチナぐらいでないと値打ちがないみたいだけで、まあそれはそれで（笑

  2007.12.25

• 

  押井守『立喰師、かく語りき。』

  評価（★★★→無印→☆☆☆７段階評価）：☆徳間書店 (2006/04)ISBN:9784198621605押井守の幾つかの作品は大好きで、『うる星やつら２ ビューティフル・ドリーマー』『イノセンス』『機動警察パトレイバー2 the Movie』『赤い眼鏡』『トーキング・ヘッド』あたりの名前はすぐに出てくる。駄菓子菓子、彼の発言には違和感を抱く物も少なくなかった。この本を読んで、さらに感性の断絶というか、世代の差を感じさせられた。押井守によると、学生運動とか活動家は嫌いだそうだ、それにもかかわらず、かつては学生運動の真似事に加わり、かつこの本で広い意味で学生運動と関係ない話題と言えば、僅かばかりの犬の話ししか残らない。嫌い嫌いといいながら、全共闘をネタにグチグチ言ってるような本である。そういった意味で、ああこの人は上の世代の人だったと、あらためて感じさせてくれた一冊であった。ぬるいファンであればあるほど、1785円は高いと思う一冊でもある。押井ファン用温度計替わりにどうぞ

  2007.12.04

• 

  Aquacadeのパンフ

  eBayで間違って落札しちゃった（1934年のシカゴと1939年のニューヨーク万博を間違えた）博覧会のパンフ。届いて分かったのだが（もう少し落ち着いて行動しましょう＞自分）これはニューヨーク万博のパンフじゃなくって、出し物の一つのAquacade(アクアケイドでいいのかな？）のパンフだった。丁寧にプラスチックの保護ケースに納められて届いた。メリケンの業者にしては気配りが行き届いてたので、褒めておく。Aquacadeは、興行師のBilly Roseが企画した水上ミュージカルみたいなものらしい（BillyはミュージカルJumbo等のプロデュースで有名）本当かどうかは知らないが、ニューヨーク万博で一番受けた出し物とも言われている。Billy Roseは、多分このパイプを咥えたオッサンいかにもアブラギッシュである。Aquacadeに出演したオリンピック金メダリストのEleanor Holmに手を出して結婚して即離婚したらしい。表紙と同じく、いかにもなピンナップこんなお姉さんが何十人も巨大なプール舞台で踊ったらしい巻頭にあったペプシの広告今の壜と相当違う巻末にあったチェスターフィールドの広告まあ安かったし、けっこう楽しめた。

  2007.12.03

• 時代は時代劇

  最近は時代劇小説（まあリアルじゃないのでチャンバラ小説だわな）を読んでる。今まで読んでなかったジャンルなので、未読の本が楽に見つかるのが利点だ。書店で今まで目を向けてなかった棚、作家に目をやれば、けっこうな数が出ている。20冊も読めばマンネリっぽさも感じてきたが、軽く読み捨てる分には支障ない登場人物がやたらと酒を飲んでるので、これまで飲まなかった日本酒も飲み始めた（食い物飲み物に関しては、割と読んだ本に影響を受ける質なのだ）0.5合ぐらいだけど（笑ただ一つ困ったことは、これで俺もいよいよオッサンかなあと思ってしまう事。

  2007.11.24

• ヘタこいた！

  アメリカのＳＦ作家にウィルスン・タッカーって人がいます、いや去年亡くなられたので、いましたかなその人の『超能力エージェント』って作品があるんですが、序盤、幼い主人公が家出をして万国博覧会を見物に行く場面があって、下宿での薄っぺらいサンドイッチの食事とか、色々と印象に残ってます。ふと思いついて、World fair NY で検索してみると、いかにもアメリカンなおねーさんが表紙の万博パンフがあったので、深く考えず入札したら落札してしまいました。その後、確認すると…、作品に登場したのは1939年のニューヨーク博じゃなくって、1933年のシカゴ博でしたorzまた、ヘタこいた～まあ千円ぐらいなら、関係ねえで済ましてもいいかな、いいかもしれない、いいですよね、そうだいい事にしよう無駄使い道の明日はどっちだ！

  2007.11.23

• 三木原 慧一 『合衆国解放 1―クリムゾンバーニング』

  評価（★★★→無印→☆☆☆７段階評価）：☆☆中央公論新社 (2007/10)ISBN:9784125010052数年前は山ほど出版されていた架空戦記物、その中でも三木原慧一はリアル系にアニメネタを混ぜ込む独特の芸風でお気に入りの作家の一人でした。架空戦記物を含めた新書サイズのノヴェル出版点数が劇的に減少し、三木原慧一のクリムゾン・バーニング・シリーズも2004年の『クリムゾンバーニング-五大湖決戦』以来、続刊が出ず、ひょっとして打ち切り？などと不吉な予感を憶えつつありましたので、まずは刊行おめでとうございます。共産化された合衆国対日英同盟の世界戦争世界が舞台です。いよいよ合衆国本土への侵攻作戦が開始され、あと１・２巻であろう完結までは、出版社も根性を見せて欲しいものです。作中話で「マルクスはメイドスキー」なんてのを書けるのは、この作家ぐらいのものです。売れて、続刊が出て欲しいなあ

  2007.11.04

• ウォーハンマーノベル・シリーズ

  評価（★★★→無印→☆☆☆７段階評価）：☆☆ホビージャパンより３冊が刊行中『ドラッケンフェルズ』ISBN: 9784894256033『吸血鬼ジュヌヴィエーヴ』ISBN: 9784894256040『ベルベットビースト』ISBN13: 9784894256057不死の吸血鬼ジュヌヴィエーヴを中心に、架空世界がいくつかのエピソードでつないで語られる。元はテーブルトークゲーム用の世界設定らしいが、中世ヨーロッパとビクトリア朝ロンドンを混ぜたような世界設定が妙に面白い。続刊に期待。

  2007.10.23

• 気がついた事

  ３月４日の記事の本 『赤朽葉家の伝説』 では、長女が不良少女をモチーフした漫画で人気作家になるのだが、ぼんやりとペリカンロードがモデルかと思ってた。ちょっとストーリーとか調べなおしてみたら、紡木たくのホットロードの方だよねと気づいた次第。この土日の成果がそれだけというのは、我ながらいかがな物かとは思う。

  2007.10.15

• 樋口有介『船宿たき川捕物暦』

  評価（★★★→無印→☆☆☆７段階評価）：☆筑摩書房 (2007/08)ISBN-13:9784480423573ちょっと不良でシニカルな男が探偵で、知り合いの美女殺人をちょっと勝気な被害者の妹（関係者）とともに解決する、ある意味どれを読んでもいっしょな感のある樋口有介ですが、この本は時代劇なので目先が変わって楽しめました。まあ時代劇でもやってる事は同じなんですがね。ああ、それにしても１０月というのに暑い。まだキツイ日差しが窓から差し込んできて、窓際族の身には厳しいなあ

  2007.10.04

• ジェイン・アン・クレンツ『緑の瞳のアマリリス』

  評価（★★★→無印→☆☆☆７段階評価）：無印早川書房 (2007/9/7)ISBN: 9784150116330なんじゃ？このロマンス小説みたいなＳＦは！と怒ってはいけない。たまたま早川ＳＦ文庫に収録されてはいるが、この本はＳＦの体裁を取ったロマンス小説なのだ。立ち読みでパラパラと斜め読み出来るにもかかわらず購入してしまった読者がいたとしたら、それは読者自身の責任なのだ＞俺の事（笑

  2007.09.20

• 北極星号の船長 ドイル傑作集2

  評価（★★★→無印→☆☆☆７段階評価）：☆☆東京創元社から刊行されている、ホームズだけじゃないコナン・ドイルと銘打った傑作集の第２弾。コナン・ドイルが心霊現象に強い興味を持っていたり、本人はホームズより歴史小説で評価されたがっていたのは知っていましたが。こういった非ホームズ物の短編をまとめて読むのは初めてです。●収録作品「大空の恐怖」「北極星号の船長」「樽工場の怪」「青の洞窟の恐怖」「革の漏斗」「銀の斧」「ヴェールの向こう」「深き淵より（デ・プロフンディス）」「いかにしてそれは起こったか」「火あそび」「ジョン・バリントン・カウルズ」「寄生体」ですが、一読して驚いたのは、どれもクトゥルフ神話の作品として扱われても不思議じゃないテイストを持っていたこと。特に冒頭の「大空の恐怖」などは、行方不明になった冒険家の遺稿から超自然の恐怖体験が明らかにされる展開が、神話体系特有の雰囲気を醸し出してくれます。ひょっとすると映画『宇宙大怪獣ドゴラ』の発想って、この辺から来てるのかなと想像してしまいました。現在、第３弾のクルンバーの謎まで刊行されています。こちらも『チャールズ・デクスター・ウォードの事件』に似た、クトゥルフ・テイストが強い物が収録されています。先々の刊行が楽しみです。

  2007.09.16

• げっ

  知らなかった昨年、３０年以上続けてきたＳＦマガジンの購読をついに止めてしまった。そのために全くの無情報状態で、先ほど知ったのだが今月末からワールドコンが横浜であるやん！World Science Fiction Convention 通称ワールドコン（アメリカの年に一度のＳＦファンのお祭りのようなもの、似たようなものは各国で開催されています。日本でも日本ＳＦ大会が４５回開催されてます。アメリカのものをワールドコンと言います。アメリカ１国のくせに何で世界大会なのかというと、アメリカが現代商業ＳＦの本家であったことや、その手のおバカなお祭りをしてたのがアメリカだけだったことなどが理由です。アメリカメジャーリーグの優勝チーム決定戦なのにワールドシリーズと言うようなもので、深く考えるべきではないでしょう）ほぼＳＦファンダムからは引退した口なんで、もういいやと思わないでもないし、いいや当日券で１日だけでもという気持ちが無いでもない。眼前でヒューゴー賞（世界初のＳＦ専門誌『アメージング・ストーリーズ』を創刊したヒューゴー・ガーンズバックを記念してファンから贈られる賞、当然この手のものとしては世界最古の賞）が発表されるのを見る、おそらく最後のチャンスだろうしなあ（基本的に出不精なので海外旅行なんてマンドクセなので）交通機関が確保出来るかどうか確認してから考えよ…寝る

  2007.08.17

• 松宮 宏『燻り亦蔵』

  評価（★★★→無印→☆☆☆７段階評価）：☆☆マガジンハウス (2007/7/19)ISBN-13: 978-4838717651定年間際の独身窓際族かつチェーン・スモーカーの樺沢亦蔵は、毛深く毛ガニとも揶揄される醜男であったが、過去の悲哀を心に秘める武道家でもあった。そんな彼が、己の剣先の湿りを自覚した時に取った講堂とは、翌日辞職して嫌煙厳しきニューヨークへ渡る事だった。ニューヨークで嫌煙条例を憚らず、美味そうにタバコを喫った彼は留置場に放り込まれる。釈放された彼は、留置場の外でまたタバコを喫って…タバコ産業、ワシントンの政治屋、ＦＢＩ等を巻込んで、樺沢亦蔵の周りは次第に騒然となってきます。それに前作の主人公がからんでと、一気に読ませていただきました。前作とは独立してます。私も前作を読んでいませんでしたが、問題なく読めました。青空にタバコを喫ってみたくなる一作でした。ちなみに樺沢亦蔵は、Ｘ-MENのウルヴァリンを頭に思い浮かべながら読んでました。

  2007.07.29

• アン・マキャフリイ『竜と竪琴師』

  評価（★★★→無印→☆☆☆７段階評価）：☆☆☆アメリカの女流ＳＦ作家アン・マキャフリイによるパーンの竜騎士シリーズ日本翻訳最新作。惑星パーンでは、不定期に近づく赤い星から、全ての有機物を食い尽くす恐ろしい糸胞(Thread：薄い銀色のフィラメントと形容されます）が降りかかるため、空を飛び硫化水素の炎で糸胞を焼き尽くす竜とその相棒の竜騎士がパーンを守っている。パーンの竜騎士（惑星パーン）シリーズは、この竜騎士達の活躍を縦糸とし、サブキャラクターの竪琴師や療法師のエピソードを描く巻を横糸として成り立っています。この本はサブキャラの中でも最重要人物ロビントン師の生い立ちと、シリーズ第１巻の初めに繋がるまでが描かれています。第１巻を早川の銀背（新書サイズのハヤカワ・ＳＦシリーズ、背表紙の多くが銀色な事か銀背と呼ばれる。文庫より高額だったため、高値の花だった）で読んだのは、もう３０年も前でしょうか。第１巻の、あの情景にいたるまで、どんな事があったか、また裏側からシリーズ・オープニングを描いてもらって、正直感動しました。このシリーズは10冊以上出てますが、この巻において一周して初巻の情景に戻ったわけです、感慨深いものがありますねえアン・マキャフリイは、職人芸の人って感じがします。1926年生まれの作家が、これだけの物語を紡ぎ出せるのも凄いですが、この作品を描いた時点で70歳を越えて、80歳を越えた最近でも、息子と共著ではありますが作品を発表しているようです。素直に敬意を表して☆三つとしたいと思います。

  2007.07.29

• 某論文

  たまたま、古いドイツ語の博士論文をいくつか手に取る機会があったのだが、どの論文にも巻末に略歴が載っている。前に見た、日本語の博士論文には無かった気がする。で、この略歴部分が異様に詳しい。最近の物になるほど簡略化されてくるのだが、それでも何処で、何年何月何日に生まれたて、どこの学校に通ったかをズラズラと書いてある。戦前の論文になると、何故ここまでと思えるほど詳しい。まず何々の（銀行員とか官吏とか）の父××と、旧姓は××である母××との間に生まれた私は、××の地から××の学校に通い、××に進学して云々と延々書いてある。本人特定の資料としてはありがたいし、昔は博士というものに、それだけの重みがあったんだろうと思うと感慨深い。それはさておいて、そのような論文の１冊に、生まれた地名が書いてあるけどよく分からないものがあった。分からないのも道理で、そこは現在ポーランド国内で、ポーランド語の地名がついている。第２次世界大戦後、ソ連はポーランド西部の領土を大幅に分捕り（ポーランド戦でナチス・ドイツと分割した部分の既得化）、ポーランドはドイツのオーデル・ナイセ川以東を分捕った。このドイツが取られちゃった領土の広さは、日本の北方領土が針の先に思えるほど広大なものだ。それはさておき、この旧ドイツ領に生まれた某博士は、名前にvonがついてるで多分貴族様である。戦争中は陸軍ポツダム連隊を経て空軍へ移り、なんと！降下猟兵師団に所属して、終戦時の階級は少佐（大隊長？）であり。アメリカ軍の捕虜としてイタリアで終戦を迎えている。その後、経済学で博士になるぐらいだから主計畑にいたのかもしれないが、それでも降下猟兵部隊だからなあ（空挺部隊はどこの軍隊でも精鋭中の精鋭）おまけにイタリアだから、クレタ島とかゴシックラインとかの激戦地が連想されるわけですよ。略歴の最後にIch bin deutscher Staatsangeh?riger.って一文が唐突に書いてあって、なんじゃコレと思ったんですが、こうしてみると納得ですね。超訳すると『私はドイツ人であります！』で、いいのかな

  2007.07.12

• 『十八時の音楽浴―漆黒のアネット』

  海野十三原作、ゆずはらとしゆき著小学館 (2007/6/19)ISBN-13: 978-4094510133評価（★★★→無印→☆☆☆７段階評価）：☆☆日本古典ＳＦの傑作、「十八時の音楽浴」と「火葬国風景」を合わせて翻案したもの（著者本人の命名では『跳訳』だとか）元は独立した２つの短編だったものを上手く繋いでいるのと、大正・昭和初期のエロ・グロな妖しい雰囲気を上手く漂わせているので☆二つとしました。『火星の土方歳三』／吉岡平のように、人の架空世界で遊ぶのも楽しいですが、この作品のように換骨奪胎物も新しいジャンルを開くのではないでしょうか原作は青空文庫で読めるそうです。という事は、著作権切れですね。あと10年もすれば、大物作家も著作権切れが増えますので、この手の話は増えるのかな？

  2007.06.25

• 『フィッシュストーリー』

  評価（★★★→無印→☆☆☆７段階評価）：☆伊坂幸太郎新潮社 (2007/1/30)ISBN-13: 978-4104596027今までに単独で発表された短編に加筆して、連作短編集にしたもの。このところ伊坂幸太郎の新作がやや低調か（それでも水準は越えていたが）と思っていたので、この本を読んでちょっとホッとした。まだ、伊坂ワールド全開とは言えないし、大半は過去に書かれたものが元だけど、一番面白かったのが、この本のために書き下された『ポテチ』だったので、完全復活へ向けての希望を持っておこうと思う。

  2007.03.05

• 『赤朽葉家の伝説』

  評価（★★★→無印→☆☆☆７段階評価）：☆☆桜庭 一樹東京創元社 (2006/12/28)ISBN-13:978-4488023935ストーリー出版社 / 著者からの内容紹介「山の民」に置き去られた赤ん坊。この子は村の若夫婦に引き取られ、のちには製鉄業で財を成した旧家赤朽葉家に望まれて輿入れし、赤朽葉家の「千里眼奥様」と呼ばれることになる。これが、わたしの祖母である赤朽葉万葉だ。――千里眼の祖母、漫画家の母、そしてニートのわたし。高度経済成長、バブル崩壊を経て平成の世に至る現代史を背景に、鳥取の旧家に生きる３代の女たち、そして彼女たちを取り巻く不思議な一族の血脈を比類ない筆致で鮮やかに描き上げた渾身の雄編。2006年を締め括る著者の新たなる代表作、桜庭一樹はここまで凄かった！旧家を舞台にすると、粘着質な暗い話になりがちですが、桜庭一樹らしくサラリと仕上げてます。恩田陸の『光の帝国』が頭にありましたが、こちらは全然明るいです。ヤンキーだった２代目が少女漫画家になるとは、意表をつかれて笑ってしまいました。

  2007.03.04

• 大槻ケンヂ『縫製人間ヌイグルマー』

  評価（★★★→無印→☆☆☆７段階評価）：☆☆☆メディアファクトリー (2006/11)ISBN:484011756X個人的には、大槻ケンヂにハズレ無しです。宇宙人がぬいぐるみに憑依して戦うぶっ飛んだ設定ですが、読ませます、泣かせます、感動させます。

  2007.02.19

• 誼 阿古（よしみ あこ）

  『クレイジーカンガルーの夏』ＧＡ文庫(2006/11/14)ISBN:4797337834評価（★★★→無印→☆☆☆７段階評価）：☆☆☆『クレイジーフラミンゴの秋』ＧＡ文庫(2007/2/14)ISBN:978-4797340600評価（★★★→無印→☆☆☆７段階評価）：☆☆☆いい！すごく良い！夏を読んだ時も読み応えがあるなと思ったけど、夏で中学生男子の青春を、秋で女子中学生をと書き分けられて正直まいったと思った。ライトノベルとして出版されているけど、合冊で一般単行書として出版される資格があると思う。男の子バージョンがアウトドア、女の子バージョンがインドアと対称的な舞台になってる。登場人物も共通しているので、ぜひ併せて読んで欲しい名作。夏は１１月に星２つで書きましたが、秋を読んで☆を追加しました。p.s.余談ですが、今年からISBNが９桁から１３桁に増えてます。

  2007.02.19

• 原点

  幼き頃を想いだしてみると週刊少年キング近所の本屋が親に、こんな雑誌が出たんだがと売り込みにきて定期購読するようになったらしい（そんな悠長な時代だったんだね）幼稚園の時に読んだサイボーグ００９が記憶に残る。平凡社　絵本百科　全５巻大判のグラフィカルな百科事典、これと次の全集が今の私を形づくったといっても過言ではない。小学館　少年少女世界の名作文学　全５０巻（後に５５巻バージョンとかも出たらしいが、私にとっては５０巻バージョンこそが本物）この全集が活字中毒元凶！、子どもにこんな本を読ませちゃいけませんよ、お母さん方（笑中身は国立情報学研究所のコレ↓でも見てもらうとしてhttp://webcat.nii.ac.jp/cgi-bin/shsproc?id=BN07309374赤毛のアンはともかく、アルト＝ハイデルべルクやラブレーのガルガンチュア、ルナールのにんじん、ヘルマン・ヘッセやドストエフスキーを園児に読ませれば、性格が歪むだろ普通（笑日本編なんか、空腹のあまりダリアの球根を齧る路傍の石とか入ってるし、谷崎潤一郎や太宰が入ってないのは、せめてもの良心か、あっ、編集の川端康成も入ってない。川端も最初に読んだのが眠れる美女だったりする私からすると、幼少向きにはいかんだろ作家の一人だ（笑実は、この全集が最近寄贈されて職場に入った（しかも美品）大変うれしい。

  2007.02.08

• 黄金時代

  格言Ｑ：ＳＦの黄金時代は？Ａ：１２歳で、自分の本読みとしての黄金時代が何時だったかを振り返ってみた。５歳から６歳までの僅か２年間だった、orzこの時期にだけ、１冊の本を持ったら最初から最後の頁まで本の世界に浸りきる集中力を持っていられた。周りの世界が全て消えて、読書にだけに生きられた至福の記憶が仄かに残る。６歳の半ば、ジュヴィナル向けにリライトされたルブランの『奇巌城』を一気に読みとおせず、ああもうダメだと思った。その時をもって、黄金時代は終わったのである。ＳＦマガジンを購入し始めた１３歳ごろが第２のピーク、銀の時代だったかもしれない。指輪物語もＳＦマガジン内の広告で予約したんだっけ。その後は坂道を転がる落石の如く。銅の時代は、あったのかどうかさえ判然としない。今は記憶も錆びつく鉄の時代であろうか…

  2007.02.07

• ラノベ２冊

  ソフトバンククリエイティブＧＡ文庫より２冊千田 誠行 (著), しらゆき 昭士郎 (イラスト) 『レディ・ジェネラル 淑女騎士団』ISBN:4797335580評価（★★★→無印→☆☆☆７段階評価）：★★★公式サイトの紹介によれば『封印された龍の力を巡る超武術アクション！高校生・緋影宗保にとって、武術修行は平凡な日常生活に過ぎなかった。だが兄の突然の死によってその日々は突如終わりを告げる。兄が殺されたことを知った宗保は仇討ちを誓い、巨大な敵、楊家将に立ち向かって行く！ 宗保を待ち受ける運命とは!? 』という事だけど、なんかダメダメ、最後まで読み切れなかった。飛ばして読んでも、目が泳ぐ。中国武道オタクが書いたゲームシナリオみたいな感じ。世界の命運を握るような重大事に関わる戦闘なのに、一人一人名乗りを挙げてファイト！みたいいな。ＲＰＧにおける遭遇戦ですな、再戦はあるし（笑ＧＡ文庫はラノベ界では新参のブランドですが、あんまり良い作品がないのかなあってイメージがあって、この作品でその感を一層強くしたのですがもう一作、おなじＧＡ文庫から誼 阿古 (著), 藤本 みゆき (イラスト) 『クレイジーカンガルーの夏』ISBN:4797337834『あの少年の夏の日が、鮮やかに蘇る大人と子供の間でさまよう中学時代。精一杯の毎日と、いつも一緒にいる友人達。今そこにしかない、だからこそ輝き続ける中学校の夏休み。ノスタルジックで胸にしみいる、“帰らない日々”の物語です。』評価（★★★→無印→☆☆☆７段階評価）：☆☆ええ作品や、同じ文庫。同じく第１作で、どうしてこうも差がつくかな？才能って残酷なものと感じ入った１冊。映画『スタンド・バイ・ミー』みたいな、少年から青年へ移り変る時期の揺れる心と経験を描いた作品です。王道というか、定型を踏んではいるんだけど、マンネリを感じさせない筆力は立派なものです。似たような、少年達のひと夏を扱ったものとして、ハヤカワ文庫の川端 裕人 (著) 『川の名前』ISBN:4150308535これを挙げておきます。ちょっと長いので☆ぐらい。

  2006.11.19

• 選択

  西尾維新の〈戯言シリーズ〉限定コンプリートＢＯＸが地元の書店にも入っていましたが、西尾維新は卒業気味なのでパス。かわりに、吾妻ひでお『夜の帳の中で―吾妻ひでお作品集成』チクマ秀版社 (2006/08)を購入。奇想天外とかＳＦマガジンに連載したりしてのってた頃の傑作短編集といった感じです。1,800円しますし中には持ってる作品も混じってますが、分厚くてずっしりとした手応え、いい紙を使ってます。久しぶりに、読む用、保存用、予備買いをしてもいいかなっと思った１冊でした。評価（★★★→無印→☆☆☆７段階評価）：☆☆☆

  2006.10.11

• 京極夏彦『邪魅の雫』

  評価（★★★→無印→☆☆☆７段階評価）：★長い　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　妖怪話、民俗潭などを山盛に並べて、不思議空間に浮遊放り込まれていればこそ、京極本の厚さも語りによって誤魔化されているけど、フツーの世界で物語を展開されると、いかにも長い、手に重さがキツい。正直、～の～シリーズはこの先辛いのではないかと思った１冊であった。

  2006.10.04

• 

  『グレート・スモーカー』

  祥伝社新書編集部編『グレート・スモーカー―歴史を変えた愛煙家たち』祥伝社 (2006/08)ISBN:4396110510評価（★★★→無印→☆☆☆７段階評価）：☆紙巻、葉巻、パイプと章立てて、其々に有名な人物のエピソードを並べた本です。ところどころに、煙草に関する解説が挿み込まれてます。それぞれの人のエピソードが並べられているだけなので、漫然とした感じは免れませんが、煙草のトリビアを寝る前にちょっと読むには良い本だと思います。

  2006.09.02

• アンドリュー・パーカー 『眼の誕生』

  カンブリア紀大進化の謎を解く評価（★★★→無印→☆☆☆７段階評価）：☆☆出版社: 草思社 ; ISBN: 4794214782 ; (2006/02/23)カンブリア紀初頭に多様な生物が爆発的に登場して来たのは、ＮＨＫがバージェス頁岩の化石群を紹介する番組を作ってから良く知られてきたところですが、その元ネタになったグールドの名著『ワンダフル・ライフ』ではカンブリア紀の生物登場が紹介されてましたが、なぜ爆発的進化が起きたのかは謎とされていました。この本は、その後の研究を踏まえて、なぜ爆発的進化が発生したのかを考察した本です。多くの写真を交えて、読みやすく面白く読めました。生物学や進化論に興味のある方にオススメです。

  2006.06.20

• 『素数の音楽』

  評価（★★★→無印→☆☆☆７段階評価）：☆☆☆新潮クレスト・ブックス出版社: 新潮社 ; ISBN: 4105900498 ; (2005/08/30)素数＝１と自分自身でしか割り切れない数、に取組んだ数学者達の物語。四色問題とかフェルマーの大定理とか、数学の難問が次々と開明されましたが、まだ難攻不落の「リーマン予想」。数学を取り扱った一般書の中では出色の出来だと思います。数学者が何百年に渡って、何を疑問に思い、どう取組んで来たかを、数学者意外にも理解出来るように書いてます。映画『ビューティフル・マインド』のモデルになったジョン・ナッシュも登場します。天才数学者といわれたラマヌジャンについて名前は知っていましたが、どう天才だったのかこの本を読んで初めて分かりました。単行本ですがペーパーバックです、そのわりに2520円もしますが、オススメの一冊です。

  2006.06.18

• 

  諸星大二郎 『グリムのような物語 : トゥルーデおばさん』

  評価（★★★→無印→☆☆☆７段階評価）：☆☆出版社: 朝日ソノラマ ; ISBN: 4257905468 ; (2006/02/23)宵越しの金は持たぬその日暮らしで、本をバンバン買っていましたが、さすがにマズいというので節約モードに入っていたのですが、諸星大二郎の作品とあっては買わずには入られません。グリム童話をアレンジした短編が集められています。グリム童話を描いたものとしては、大友克洋の『ヘンゼルとグレーテル』という大傑作がありますが、あれ程の凄味は感じないものの、何となく薄暗く埃っぽい闇を想起させる絵柄を小一時間楽しむ事ができました。

  2006.05.19

• 伊坂幸太郎 『終末のフール』

  評価（★★★→無印→☆☆☆７段階評価）：無印出版社: 集英社 ; ISBN: 4087748030 ; (2006/03)2xxx年。「8年後に小惑星が落ちてきて地球が滅亡する」と発表されて5年後。犯罪がはびこり、秩序は崩壊した混乱の中、仙台市北部の団地に住む人々は、いかにそれぞれの人生を送るのか? 傑作連作短編集。伊坂幸太郎にしては、ちと弱い。短編である為もあるのかと思い返したが、『死神の精度』はもっと密度が高かったと記憶している。優れた作家だけに、私の基準がむやみと上がってしまっているようだ。映画に合わせて陽気なギャングシリーズの２も出ているようなので、今後ともの奮起に期待したい。映画化された、陽気なギャングが世界を回すも観に行きたいのだが、２５km以上離れたシネコンへ行かないとやっていない。

  2006.05.13

• J.R.R.トールキン『新版 シルマリルの物語』

  評価（★★★→無印→☆☆☆７段階評価）：☆☆☆評論社 ; ISBN: 456602377X ; 新版 版 (2003/05) 買ってきたMorettiに火入れするため、長時間読める物をと思って、選びました。旧版で読んでたので、斜め読みして本棚に放り込んでいたのですが、じっくり読んでみると、大判になった事もあって旧版より格段に読み易くなってます。映画『ロード・オフ・ザ・リング』で有名になった第３紀の物語に先立つ、第１紀の世界の始まりから、邪悪なマイア、メルコールの追放される第２紀までが主たる話で、それに『ロード・オフ・ザ・リング』以前の第３紀までを扱った、伝承集の体裁をとっています。膨大な人名と地理名が出てくるのでメモを取るか、『The Atlas of Middle-Earth 「中つ国」歴史地図 ― トールキン世界のすべて』あたりをあわせて参照した方が混乱しないでいいでしょう。一番印象に残ったのは、周囲に迷惑をかけるだけかけて、大した見せ場もなく退場したフェアノールのＤＱＮ振りでした（笑何度もじっくりと読める、良書だと思います。

  2006.05.05

• 訃報

  スタニスワフ・レムさん（ポーランドのＳＦ作家）２７日、ポーランドのクラクフで死去、８４歳。（アサヒ・コムのニュース）（毎日新聞ニュース）非英米圏のＳＦ作家としては，ロシアのストルガツキー兄弟にならぶ有名な方だと思います。映画「惑星ソラリス」の原作者として，むしろレムの方が有名かもしれません。『泰平ヨンの航星日記』とか世界ＳＦ全集に納められていた『砂漠の惑星』に感銘を受けました。私にとっては，思索型ＳＦの巨人といったイメージの人でした。ご冥福をお祈りします。

  2006.03.29

• 蜜飴

  米原 万里『旅行者の朝食』 文春文庫出版社: 文藝春秋 ; ISBN: 4167671026 ; (October 2004)今日読んだ本というわけではないのですが、先日観た映画『ナルニア物語 ライオンと魔女』の中に出てくるお菓子ターキッシュ・デライトは、この本の中に書いてあるトルコ蜜飴（ハルヴァ）と同じものかなあと思ったので挙げてみました。確認しようと思ったけど、本棚に埋もれて、どこにあるのか分からない（笑ロシアの通訳をしてた人（エリツィンの通訳とかもした有名な人）なのでロシアを中心に思わず、お腹がすくようなエッセイを集めた本です。食いしん坊にお勧め。

  2006.03.13

• 海亀

  ナルニアを観たので異世界・異種族繋がりトーベ・ヤンソン絵のアリスで、So-wさんの書き込みがありましたので、グリフォンとにせ海亀とアリスの場面です。

  2006.03.11

• 

  『不思議の国のアリス』

  ルイス・キャロル 著トーベ・ヤンソン 絵村山由佳 訳メディアファクトリー ; ISBN: 4840115109 ; (March 2006)評価（★★★→無印→☆☆☆７段階評価）：★あのトーベ・ヤンソンがあの不思議の国のアリスに挿絵をつけていた！それだけで、買った本です。では、挿絵を見てみましょう。うん、トーベ・ヤンソンそのものですね。公爵夫人と豚に変わる赤ん坊、癇癪持ちの料理人の場面ですが、後ろにいるムンクの叫びみたいなのがアリスです。まあ、これだけならコレクションの１冊として楽しく本棚にならべられるのですが、村山由佳の訳がクセがあるというか何というか、既訳との違いを出したかったのか個性なのか分かりませんが、今までアリスを読込んだ人ほど違和感があるかもしれません。「チェシャ猫さん」は、まだいいとして、最初に会った時には「チェシャにゃんにゃんこさん」なんで、ルビはふってませんが、そう読まなくちゃいけないんでしょか（笑気違い帽子屋は大阪弁（河内弁とか細かい差異は分かりませんので、とりあえず）だし、チェシャ猫にしても「イカレポンチ」なんて言うし『ホビット ゆきてかえりし物語』ダグラス・Ａ・アンダーソン注　山本史郎訳　原書房刊もそうですが、クセのある訳をする人って、どうして死語を使いたがるのでしょうか、ナンタルチア！（山本訳では、ガンダルフがこう叫びます）　

  2006.03.09

• 佐藤 賢一『褐色の文豪』

  評価（★★★→無印→☆☆☆７段階評価）：☆☆文藝春秋 ; ISBN: 416324610X ; (January 2006)『三銃士』『モンテクリスト伯』等で超有名な文豪アレクサンドル・デュマ（大デュマ）を扱った佐藤賢一の新作。デュマの父を扱った、『黒い悪魔』文藝春秋 ; ISBN: 416322050X ; (August 8, 2003)の続編？になるんでしょうか、むしろこの本を書く為に『黒い悪魔』が書かれたような気がします。『カポネ』と較べると、やはり佐藤賢一はフランスを舞台に書かせた方が面白いなあと夜中の１１時過ぎからさわりだけでもと思って読み始めたのですが、真夜中２時頃まで一気に読みあげてしまいました。豪胆な生涯をおくった作家という事は知っていましたが、こうして通して生涯を読むと、やはり巨人という言葉がふさわしいような気がします。愛書狂とかなんとかのタイトルのアンソロジーで、デュマが書物収集癖にのめり込む契機となった事件をデュマ自身が書いた短編を読んだ憶えがあるのですが、そのエピソードもこの本の中に登場していて、思わずニヤリとしてしまいました。作中とは微妙に違いますがデュマがパリに上京したばかりの頃、劇場で出会った紳士が卵料理のレシピを熱心に読んでいるので声をかけたところ、別に料理に興味があるわけではなく、こういった類いの本は台所でぞんざいに扱われるので逆に稀覯本となっている事。出版社のエルゼヴィール（現在でも存在するエルゼビアの前身）社は社票や装丁をコロコロと変えるので、愛書家達の論議のタネになってる事。知合いの愛書家とこの本の遊び紙が何枚かで論争をしていたが、私の勝ちだははははと言われて、デュマがやれやれ私は書物収集家にだけはなりませんよと答えたが、数年後、パリでも有数の書物収集家になっちゃったというオチでした。映画『アマデウス』を思わせる、モーツアルト役のデュマに対して、サリエリ役の幼なじみの貴族も登場しますが、豪快なデュマの生涯が『アマデウス』のような重苦しさを感じさせないのは救いです。友達もサリエリよりはひねくれてないし。小説・映画『ナインスゲート』でも取り上げられた、『三銃士』シリーズの協力者or下書き人、マケも取り上げられてます。『三銃士』のほとんどはマケの下書きによるものですが、それでもデュマが剽窃者と呼ばれないのは、マケの現行をデュマと読み比べた研究者が口を揃えて面白くないと証言するからでしょう。美味しい料理を作ったのが、材料の野菜を作ったお百姓さんでなくって、それを加工して並べただけのコックさんであるようなものでしょうかね。

  2006.02.18

• 橋本 紡『半分の月がのぼる空』

  評価（★★★→無印→☆☆☆７段階評価）：反則出版社: メディアワークス 電撃文庫この２月に出た６巻でシリーズ完結しました。王道ですまっしぐらですもうね，何と言うか反則ですよ。病院で偶然出合った絶世の美少女最初は性格最悪だけどツンデレ女で，おまけに心臓病持ち取り立てて才能のない，お調子者だけどまっすぐでケナゲな男の子のボーイミーツガール・ストーリィー『これはなんでもない話だ。男の子と女の子が出会う、ただそれだけの話だ。付け加えることはなにもない。もちろん――。僕たちにとっては、本当に本当に特別な話だけれど。』っていう冒頭が全てを表してます。人生も後半のオッサンが読んで，泣いて，似合う本であろうかいや（ry評価（★★★→無印→☆☆☆７段階評価）：☆☆☆

  2006.02.15

• 石渡 治『白兵武者』

  評価（★★★→無印→☆☆☆７段階評価）：☆☆副題：―戦国近接戦闘僧兵伝―原案：蝶野正洋小学館いゃ～面白かったです。マンガ喫茶で、たまたま新刊のコーナーに最終巻があって手に取ったのをキッカケに、１巻から一気読みしました。戦国末期、戦難を逃れた先で母を亡くした幼子・蝶野正之進は、養い親も戦乱の中で失う。本人も殺されかけた所を、素手で鎧武者をあっというまに倒した禅僧に救われ、但馬の国に移る。但馬の国には、組み打ちのみで武者を倒す白兵武者の技が寺に伝えられていた。彼等は故郷を守る鬼、白兵武者達だった。蝶野正之進は、その技を学び戦国の世に生きることとなる。が、…ただの戦国マンガじゃありません。スターウォーズ＋プロレスなんですよこれが、かつて白兵武者の技を極め闘神と呼ばれた、「猪木」だの、寺の管長「坂口」だの、忍者が何故かプロレスのマスクを被ってるだの息子よ、私がお前の…だの、暗黒面の力に目覚めろだのええ、技の方も１人で城を落としたり（城兵全員を失神させて、１人も殺さず）だの、理気道に目覚めると岩をも砕いたりして、そりゃ派手で無茶な展開をしてくれます。（大爆笑戦国＋プロレス＋スターウォーズ、こんな話が読めるのも日本だけでしょうね。あらためて日本人に生まれて良かったと、本読みとしては思うわけです。p.s.原案の方って、プロレスラーだったんですね、納得。

  2006.02.05

• 浦沢 直樹『20世紀少年―本格科学冒険漫画』

  評価（三つ星採点）：☆☆☆小学館 ; 2000-いやー面白い。ここ暫く日記の更新もしないで何をしていたかというと、マンガ喫茶でこれを読んでたんですね。２０世紀側の少年時代と２１世紀側の二つの時代を取り混ぜながら、地球滅亡の大陰謀とそれに立ち向かうヒーロー達を、絵空事でない雰囲気で描く傑作です。地球終末ものでは『ＡＫＩＲＡ』以来のワクワク感を感じました。漫画評論家その他をやってる大塚英志はなんでコレが嫌いなんだろう？副題の『本格科学冒険漫画』がいいなぁ。20巻もあるから完結してるんだろうと思って読み始めたら、クライマックス一歩手前だったよ、続きが実に待ち遠しい。

  2006.01.18

• 岡田斗司夫『オタク学入門』

  評価（三つ星採点）：☆太田出版 ; ISBN: 4872332792 ; (1996/05)久しぶりに、ひっぱり出してきて再読。初めて読んだ時は、おお！とか思ったものですが、今となっては流石に粗が目立ちます。今の視点から考察すると、この本の目的は、ええとこのボンであるにもかかわらず「デブなおたく」としか世間で見られなかった岡田斗司夫が、一丁口先三寸で世の評価を変えてみせたろかと企んだプロパガンダ本なんだろうと思います。そして、その意図はある程度成功して、先端的でクールなオタクは世界の憧れみたいなイメージを世に配信することが出来ました。その為か、この本をオタクの目指すべき道を示したバイブルであるかのように語る人を時々見かけますが、まあ程々にねと言いたいです。著者はＳＦ芸人の時代から、見事に一発芸を決める人ではありましたが、天才肌ありがちな脇の甘さというか、地道な検証を苦手とする人でもありました。この本も例外ではありません。それを『「匠」の眼』の章『ストップウォッチのシナリオ学』を例としてみてみましょう。ここに述べられているのは、ハリウッド映画をストップ・ウォッチ片手にみると、ある決まった時間に決まった展開が起きる構造を発見出来るという内容です。著者によると、これはしんどい作業だが非常に有意義な作業だそうです。この本を初めて読んだ時に、私が物事の裏まで見抜くおたくの眼力に感心した箇所でもありました。だが、ちょっと待って欲しい。そもそもハリウッド映画は、決められた定式の中で作られているので、ストップ・ウォッチ片手に見れば、その構造が現れるはあたりまえなんです。（暇のある方は、『三幕構成』、『ハリウッド』あたりでググってみてください。）しかも三幕構成で書かれた脚本でないと、脚本を検討すらしてもらえないというのは有名な話で、それに対する批判が生じたのも半世紀近く前だったりします。この本には、そんな話は全然出てきません。脚本とかメディアの事を少しでも齧った人が読んだら、憐れみを持って苦笑したでしょうね。さて、こんな本を書いていた岡田斗司夫さんも、その後『東大非常勤講師』を務め、肩書きにもコレを使っていた時代がありました。そのゼミ内容を本にしたのが、『東大オタク学講座』講談社 ; ISBN: 4062082926 ; (1997/09)と『東大オタキングゼミ』自由國民社 ; ISBN: 4426767008 ; (1998/04)です。この本も、読んでる間は抜群に面白いので買って損はないのですが、まあ眉に唾をつけて読んで欲しい、検証の甘い内容が色々あるから。『東大オタキングゼミ』をみてみましょう。第１章テーマパークに、こんな記述があります。『瀬戸内海にある「レオマワールド」をあげて説明したいと思います。』『それで、そのレオマワールドという、瀬戸内海の島に浮かぶテーマパークというのが、「レストランには和洋食全ての料理がそろう」というのが売り文句のひとつだったんですね。』実際のレオマワールドは、どう見ても山の中です。ろくに調べてないのがまる分かりです。ありがとうございました。岡田斗司夫さんには映画『ＩＤ４』の紹介で、アメリカ大統領が押入れから戦闘機のヘルメットを取り出して小脇に抱えて演説をするおバカな映画と紹介した、幻のヘルメット事件がありまして、どうも脳内でこうあれば面白いと思った事を勢いで書いちゃう習性があるようです。香川県民としては、この幻の『海のレオマ』が瀬戸内海から浮上して、実際にある『山のレオマ』と取っ組み合いのプロレスしてくれるのが夢ですとヨタを飛ばして終りにしたいと思います。p.s.『東大非常勤講師』ってのも、学生の自主ゼミの講師であって単位出せないから、いわば学祭にタレントを呼ぶのと変らない気がします。身分詐称に限りなく近いというかなんというか…

  2006.01.14

• 『朝日」ともあろうものが。』

  評価（三つ星採点）：☆☆烏賀陽 弘道徳間書店 ; ISBN: 4198618844 ; (2005/10/22)元朝日新聞記者の著者が、朝日新聞勤務時代を振り返って、新聞の記事の作られ方、なぜ意欲のある記者がエリート意識と事なかれ主義に囚われていくのか、新聞記者の情熱のかけ方の読者とのズレとか、新聞記事ねつ造はなぜ起きるのか等に対する考えを綴った本です。読んで一番感じたのが、新聞社のお役所的体質。行革の進行とともにお役所すら昔の「お役所」であり得ない現在、もっとも古い偏見・体質を持った組織に新聞社がなってしまってる。そんな古い体質の記事・社説が社会に対して説得力を持たなくなってきてるのも当然でしょう。男女差別的発言や私生活にまで踏み込むような言動を上司が繰返し、本人の業績や希望に関係なく機械的に行われる部署配置。どこでどんな仕事をしても、内容を評価されず、在籍した部署の社内格付けと年数を評価されて昇進が決まってゆく等、これじゃやる気をなくすだろうなと思われるエピソードが満載です。著者の態度に引っ掛かるものもあるのですが、あれこれ噂されていた閉鎖空間の内情を、詳しく述べた貴重な本だと思います。シシリアン・マフィアについて初めて証言したバラキみたいなものか最後に、この本が引き合いに出される時に、一番良くあげられるであろうエピソード。ＪＲの忘れ物に骨壷とか位牌まであった　→　朝日新聞記者の捏造記事でした。　な　なんだってー！！しかも書いた記者は、それを自慢話しとして社内で語っている。広島の１００円ラーメン屋が長年の定価に消費税分を上乗せするかどうか悩んでいる　→　朝日新聞記者の捏造記事でした。な　なんだってー！！書いた記者は一時干されたものの、以後は順調に出世の階段を昇っている。と、まあこのような事が書かれてます（ため息ますますメディア・リテラシーの必要性が高まってきたといえそうです。２ｃｈに対するひろゆきの言説をもじるなら、嘘を嘘と見抜ける人でないと新聞を読むのは難しい。ただ、この本を読むと、新聞ってひょっとして嘘の割合の方が多い？とか思ってしまいそうです。その場合は、無理に新聞読む必要が無いとの結論になってしまいます。

  2006.01.07

• 『煙草の蘊蓄』

  評価：無印大人の嗜好品研究会編纂彩図社　2005.12ISBN:4883925196副題に『タバコを知って　タバコをやめる』とありますが、禁煙本というわけでもありません。健康問題を含めて、タバコに関するトリビアを集めた本です。大抵は聞いた事があるものですが、１冊の本にまとまっていると便利です。図解図が多いのも特徴で、私もこの本で口付紙巻のフィルター付との違いが初めて良くわかりました。５６０円とお手頃な値段なので、暇つぶしには丁度良かったです。

  2005.12.28

• 『カポネ』（再）

  評価：無印紹介するだけで，読み終わってなかったので，読後の感想です。さすがの佐藤賢一も，英雄が無茶を出来ない現代を舞台では充分に筆を走らせる事が難しかったのではないかと思われる。この本で一番おいしいところは，アル・カポネじゃなく（こちらも伝記としては秀逸なのだが），後半登場してくるエリオット・ネスの現代人としてのダメダメ振りじゃないかと思う。前近代的人間像としてのカポネと，もの悩むというか肥大した自我を持った現代人としてのネスの対比が面白かった。カポネ収監後の，知られざるエリオット・ネスの生涯を日本語で読んだのは，これが初めてでした。その点では貴重です。p.s.佐藤さんのインタビューを見つけました。ちょっとイメージと違ったかな

  2005.12.14

• マサト真希　『絶世少女ディフェンソル』

  評価：★電撃文庫出版社: メディアワークス ; ISBN: 4840232431 ; (2005/12)まあ、ありがちな話ですが出来自体は悪くありません。この著者の既刊スカイワード・シリーズは好きでした。なぜ黒星一つかというと…似過ぎてます、色んな作品に、特に同じ電撃文庫の灼眼のシャナと重要人物のセリフ回しがクリソツって、どういうことよ？どう見てもパクリです。本当にありがとうございました

  2005.12.10

• 佐藤 賢一　『カポネ』

  出版社: 角川書店 ; ISBN: 4048736582 ; (2005/12)久しぶりの佐藤賢一ヨーロッパ中世を得意とする作家さんが，今度は現代アメリカを舞台にどのような小説を展開するのか，興味深いところです。昨日の深夜に読み始めたところで，まだ読み終えてません。

  2005.12.07

• 『旅に出ても古書店めぐり 』

  評価：☆☆早川NF文庫ローレンス ゴールドストーン (著), ナンシー ゴールドストーン (著), Lawrence Goldstone (原著), Nancy Goldstone (原著), 浅倉 久志 (翻訳)出版社: 早川書房 ; ISBN: 415050248X ; (2001/02)前作の『古書店めぐりは夫婦で』に続いて，アメリカの東海岸を中心に，古書（現代文学）の収集にまつわる色々なエピソードを書き綴ったものです。これを読むと，古書の収集家は洋の東西を問わないものだなと思います。日本の古書収集家についてはたくさん本が出ていますが，古書市の開場を前にした，緊張したようすとか，会場で片っ端からカートに投げ込んで，後で選り分けるヤツとか，ああいっしょとか思います。それ以上に，この本を読んで感じるのは，U.S.A.の懐の深さです。歴史の新しい国といわれてますが，羨ましいぐらい古書（19世紀以降の物がおおいですが）を揃えた綺麗な古書店が綺羅星のごとくあり，図書館における古書研究の設備・人員の整っていること。また世界一のお金持ちの国だけあって，19世紀以前の稀覯書も，世界中から集まってきています。合衆国の凄みを感じた良書でした。p.s.全米ミステリ大賞の授賞式で，ちらりと早川書房の社長についてかかれていました。なかなか良いスピーチをしたという風にかかれていて，ちょっと嬉しかったです。

  2005.12.05

• 『10年後の日本』

  評価：☆『日本の論点』編集部 (編集)　文春新書文藝春秋 ; ISBN: 4166604791 ; (2005/11)複数の執筆者が担当していますが，日本が近々に迎える問題を俯瞰するには良くまとまっていると思います。それにしても日本の未来予想本には明るい話題がありませんねぇ１０年後には日本を抜いて～の最先進国，いけいけＧＯ！ＧＯ！を常に唱えて，永遠の１０年後と揶揄される国もありますが，そこまで能天気でなくとも少しは明るい未来を見たいものです。明日は映画の日だし，もう一度『ALWAYS 三丁目の夕日』でも見ますか，日本がいけいけＧＯ！ＧＯ！だった時代の人情物とでもいうべき映画で，癒されるという人が多いですね。

  2005.11.30

• 『謝肉祭―小説・オオコソの森』

  評価：☆☆姫野 由宇宝島社 ; ISBN: 4796629092 ; (2002/09)田舎暮らしの本がたくさん出てる。田舎の都市部に生まれて、心情的には都市生活者なんだけど、身の回りで田舎暮らしの鬱陶しさを実際に見聞きする自分としては、そんなに田舎は甘いもんじゃないよと言いたい。で、この本だけど舞台は、とある田舎。貴重な生態系を含む森の開発を巡ってドロドロしているところに、アセスメント報告を持ってきた大学の研究員が到着する所から物語は始まる。開発推進側と、阻止側、其々の各々の事情が絡み合って、田舎の嫌らしさを見せつけながらも…嫌だなあと思いながらも最後まで読み切ってしまいました。登場人物が全て、ホックとかブレザーとかキャラを表わすニックネームで語られるのも新鮮でした。著者で検索したけど、この著者の方は他には実質１冊しか出版されてないようです。そっちが処女出版柵のようですが、注文をしました。p.s.これでやっと、本のエントリーをパイプの後につける事が出来ました。ずっと看板に偽り有りの状態を気にしてました。

  2005.11.27

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