『皇位継承』
高橋紘/所功『皇位継承』文春新書現在、日本国民の最大の関心事の一つである「女系天皇」論争。とりあえず、皇位継承の基本的知識を学ばねばと本書を読んだ。この本なんと文春新書の001番。日本において、いまも天皇関係のことがいかに重要なウエイトを占めいているのかがよくわかる。そういえば、日本国憲法の第一章も天皇である。現在の女系天皇論争にしてもなんにしても、まず考えなければいけないのは、万世一系の皇統の存続だということを本書を読んで改めて感じた。やはり、「皇祚を践むは皇胤に限る、皇祚を践むは男系に限る、皇祚は一系にして分裂すべからざること」と『皇室典範義解』にまとめられている三点は、変えてはいけないだろう。女帝は権宣に過ぎなかったという過去の事例からも、第一子優先には違和感を覚える。本書を読んでの感想を幾つか。孝明、明治、大正の各天皇が、側室から生れている事例からもわかるように、直系天皇を絶えさせないためには側室が重要な役割を担っていた。側室の廃止と戦後の宮家の削減が、いまの皇室の危機の根源であるのは自明。しかし、いまとなってはどちらも昔の制度に戻すのは難しいだろう。どうでもいいことだが、やはり皇室関係の用語は難しい。上の皇祚(こうそ=天皇の位)にしても、皇胤(こういん=天皇の血統)にしても普通には変換できなかった。