|
カテゴリ:サブカル・小説・映画
![]() 読んでいると、なぜかしらロベルト・シューマンの『マンフレッド序曲』のメロディが頭をよぎって仕方がなかった。 主人公宮沢雪野は、周りから「誉められる」ことを生きがいにする、相当かわった女子高生。「優等生の外ヅラ」に気を使うことは、美容などにとどまりません。学校ではつねに予習を欠かさず、毎朝ランニングをおこない、クラス活動にも積極的に参加するきわめつけの優等生。ところが家では、グータラ極まりない生活。家と外でのあまりの落差に、家族はひそかに恐れおののくほど。ところが、ある日、クラスのホンモノの優等生、有馬総一郎君に、その正体を知られてしまうのでした… そんな宮沢雪野と、優等生・有馬総一郎くんとの恋愛漫画も、20巻を数えました。有馬くんの過去の暗部を描いた「ブラック有馬編」の完結篇にあたります。有馬家をめぐる繰り返される悲劇。有馬総一郎くんの本当の父、ジャズ・ピアニストの有馬玲司は子供を産まないことで、その悲劇を断ち切ろうとしたことが明らかにされました。息子が生まれる絶望。しかし捨てたはずの息子、総一郎にすくわれる玲司。玲司にすくわれる、息子総一郎。育ての親をつとめ、弟玲司の育ての親でもあった、有馬総司と2名の和解。なかなか感動的な物語になってます。とはいえ、、、 、、、、元ネタはバイロンの詩劇「マンフレッド」か??これ。 捨てた息子(マンフレッドでは女性)には救われちゃうし。 てか作者は、猫かぶり時代の1巻冒頭で宮沢雪野に、カール・ベーム指揮のブラームスが重厚でいいの!って言わせてます。しかも、3名の和解のとき、玲司がコンサートで演奏したのは、ベートヴェン第九交響曲第四楽章の「歓喜(よろこび)の歌」のアレンジ版だしねえ。オペラ好きですし、ちょっと狙ってるのかな?としか思えないような、節があります。 男の登場人物3名が、それぞれ互いに互いの存在によって、足りないものを埋めあい、救いだされました。その結果、総一郎を生んだ「母」だけが疎外され弾き出される、かなり残酷な物語でもあるわけです。なぜだか、AMAZON.comのレビュー・コーナーでは、ほとんどが女性レビュアーであるにもかかわらず、まったく語られておりません。実に不思議です。しかも専業主婦たる宮沢雪野の「母」だけは、宮沢雪野の「妊娠」に気付きます。今さら、女を敵にみたてて、男が団結して幸せになる話を描くというのは、どうなんでしょうねえ。女性である津田雅美は、なにかフェミニズムにたいして、不信感をもっているような気がして仕方がないのですが、いかがでしょう。いや、女性の敵は、水商売のお姉さんであるとして、専業主婦と自立した女性をたたえる物語なのかもしれませんが。 怒濤の結末は、有馬くんと雪野の進路にまでおよんでいます。彼女がストーリーテラーであることだけは間違いありません。とりあえず、次の巻でラストをむかえるようですけど、追ってきてよかったとおもえる数少ない少女漫画のひとつでしょう。 価格: ¥410 (税込) 評価 ★★★☆ 人気ランキング お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
[サブカル・小説・映画] カテゴリの最新記事
|