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書評日記  パペッティア通信

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Mar 28, 2005
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批評

近代科学が自らが産みおとした怪物に復讐される物語、『フランケンシュタイン』。映像で、演劇で、さまざまにメディアを越境し翻案され広まったあまりにも有名な作品とイメージ。この元になったのは、メアリー・シェリー著『フランケンシュタイン』という小説でした。このテクストを片手に、小説をいかに読んでいくのか。そして、これまでいかなる批評がおこなわれてきたか、通観されています。この書は、批評理論をながめるための、なかなかの力作になっているといえるでしょう。

内容は2本立て。小説『フランケンシュタイン』を元に、小説をいかに読むべきか、詳細な小説についての解説をつけた「小説技法編」。そして、「批評理論編」。前者は、「語り手」「時間」の解説、プロットとストーリーの違い、「焦点化」「枠物語」「メタフィクション」「間テクスト性」など、小説を読んでいく上で必要な知識の詳細な解説。後者は、「伝統的」「ジャンル」「読者反応」「脱構築」「精神分析」「フェミニズム」「ジェンダー」「マルクス主義」「文化」「ポストコロニアル」「新歴史主義」…などなど、各批評方法はフランケンシュタインをどのように読んだのかが取りあつかわれています。

たしかに面白い。ただし、面白いのは、第一部の小説技法編までです。入門とまで銘打ちながら、肝心の批評理論の紹介の方は、あんまり面白くない。てゆうか、そもそも批評は何のためにおこなわれるのでしょうか。

脱構築批評は、テクストが論理的に矛盾を含んでいて統一されていないことを明らかにします。そりゃそうだ。しかし何でそんなことをやらにゃならないんだ? マルクス主義批評は、思想を支持するかに関係なく、テクストを物として歴史的時点で生じた「産物」としてあつかい、そのテクストの生産に不可欠な歴史的・経済的・政治的条件との関係を考えるんだそうです。ふむふむ。でも、それなんのためにやるのよ。批評家は、フランケンシュタインをどう読んだかはこれを読めばたしかにわかる。しかし、批評家は、なぜフランケンシュタインを読むのにそのアプローチを採用したのか、いやなぜそのアプローチを採用せざるをえなかったのか。その辺の、いちばん熱い部分は、まるで分からない。

批評理論について学びたいものは、さまざまな理論的アプローチがあることを知ることができるでしょう。でも、それを読んだ初心者は、どれを採用したらいいのでしょうか。つかわれた本の大半が邦訳されていないというのに。使いこなせなければ、あまり意味がないのでは。たとえば、ジャンル批評なんて、する意味あるのでしょうか。また、フランケンシュタインの登場人物に、なぜジェンダー批評はホモを読み込もうとするのでしょうか。「入門」を銘打つなら、その辺の「意味」「目的」をきちんとつたえる必要があったとおもわれます。その辺が残念。フェミニズム批評のように、目的が分かりやすいような批評ばかりではないとおもいますよ。

評価 ★★★
価格: ¥819 (税込)





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Last updated  Nov 4, 2006 03:03:37 PM
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