000000 ランダム
 HOME | DIARY | PROFILE 【フォローする】 【ログイン】

書評日記  パペッティア通信

書評日記  パペッティア通信

【毎日開催】
15記事にいいね!で1ポイント
10秒滞在
いいね! --/--
おめでとうございます!
ミッションを達成しました。
※「ポイントを獲得する」ボタンを押すと広告が表示されます。
x
X

PR

Calendar

Category

Favorite Blog

藁の牛と豚 日比谷… GKenさん

─ 灼熱 ─ HEAT1836さん
余多歩き くれどさん
tabaccosen breton005さん
ミョウの魅 stadanさん
ぶらぶらブラジル日記 Gaobrazilさん
沖縄でよんなよんな sinarsinarさん
りゅうちゃんミスト… りゅうちゃんミストラルさん
再出発日記 KUMA0504さん

Comments

山本22@ ブランド時計コピー 最高等級時計 世界の一流ブランド品N級の…
山本11@ 最高等級時計 店舗URL: <small> <a href="http://www.c…
よしはー@ Re:★ 小島毅 『近代日本の陽明学』 講談社選書メチエ (新刊)(09/26) 作者の独善性、非客観性をバッサリ切り捨…

Recent Posts

Archives

Feb , 2025
Jan , 2025
Dec , 2024
Nov , 2024
Oct , 2024
Sep , 2024
Aug , 2024
Jul , 2024
Jun , 2024
May , 2024

Freepage List

Keyword Search

▼キーワード検索

Apr 3, 2005
XML
カテゴリ:歴史



宝塚って、もっとも興行的成功をおさめている「歌劇場」なんだ!
あまりにもあたりまえな、ショッキングなこの事実。すっかり失念していた評者は、むさぼるように読んでしまった。「宝塚」に腰がひけてしまう人には、必見ではないでしょうか。

1913年唱歌隊として出発。宝塚音楽学校を卒業した未婚女性による演劇。「清く 正しく 美しく」。現在、歌劇場は「花・雪・月・星・宙」5組400人の団員をかぞえ、舞台スタッフや営業などをふくめると、関係者は900名におよぶ。民営で地方に立地。本拠地では、1日2回公演のときでも、11時と15時開演で夜の部がない。年間観客動員数は260万人。どんなスターにも、マネージャーやスタイリストはつかない。メイク・カツラからアクセサリーまで、完全なセルフ・プロデュース。精進する彼女たちに憧れ、羨望、庇護意識をかきたてられる、熱烈な女性ファンの存在。現実の男性からの差異化に宿る、鍛えあげられた「男役10年」の美とエロス。近代の異性愛主義に囲われず、しかし「異性愛」を歌いあげるタカラジェンヌたち…。

こうした特異性は、1920年代4000名収容の大劇場の建設による、それまでの舞台芸術からの「切断」が発端らしい。それまでの劇場は、歌舞伎、新劇、オペラ、ジャズ、バレエ、ミュージカルが混在し、40年代頃までジャンル間の横断はさかんにおこなわれていたという。大劇場をうめるため採用された、スペクタクルを観客に提供する「レヴュー」路線。モダニズムの尖兵でありながら、ノスタルジアを売る「健全な娯楽」宝塚。

こうした宝塚の誕生には、小林一三阪急・東宝グループ総帥の存在が欠かせない。イギリス型田園都市とはことなった、職住分離の田園都市構想。帰る場所をもたない新中間層にささげられた郊外的ユートピア。宝塚大劇場は、かれらをターゲットに和洋折衷の「国民劇」上演舞台としてつくられます。ここで、「芸を売り、身を売る」それまでの女優像からの「切断」のため、かつてないセクシュアリティとして創造・駆使された、「生徒」「学校」というイメージ戦略。

そのうえレヴューは、輸入元のフランスではすでに廃れつつあったらしい。それにもかかわらず、フランスで「新オペレッタ」といわれた、アメリカナイズされたレヴュー=「ミュージカル」を古色に焼き直した形で輸入したのだという。帰る場所をもたない人々にむけて「ふるさと」を歌いあげる宝塚。1930年代「男役」の誕生と、戦時下の統制によってすすんでいく「女性の聖域」化という現象。戦時下における協力の両義性。戦後GHQの検閲…。時代の先端「モダニズム」であったはずなのに、いつのまにか、取りかこむ情勢が変化。やがて「周縁」的なものになっていく。宝塚があらゆる意味で「周縁」へと位置づけられていった過程が、ここでは詳細に説明されています。

と簡潔にまとめてみたものの、実に大変でした。記述が錯綜し、何度も同じことが繰り返され、かなり理解しにくい。章立ては、宝塚の現況、歴史、ジェンダー、システムの順になっています。これをみても分かるように、せめてもう少し何とかならなかったのかな、と感じました。宝塚の歴史としても、宝塚のイデオロギー分析としても、「フェミニズムと宝塚」としても、ファンブックとしても、いずれも中途半端さがぬぐえません。うまく総合させられれば、話はまったく別なんですけど。また、気にくわない宝塚に関する諸言説や、フェミニズム的アプローチなどに、いちいち論駁しているのも、なんだかなあ。その内容を知らない読者には、いささか散漫に感じられますし、批判も紋きり型すぎて食傷します。

たぶんこうした中途半端さは、講談社選書メチエ『宝塚 消費社会のスペクタクル』で書ききった、ということもあるのでしょう。興味をもたれた方は、そちらも参照ください。

評価 ★★★☆
価格: ¥777 (税込)





お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう

Last updated  Nov 4, 2006 03:05:21 PM
コメント(3) | コメントを書く



© Rakuten Group, Inc.
X