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書評日記  パペッティア通信

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Apr 26, 2005
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すごいなあ。
よくもまあ天下の大岩波で、大胆不敵にもこんな本を出したもんだ。

内容を簡単に確認しておきたい。
オビには、「古代中国に環境問題があった」と銘打たれています。
すでに古代中国では、「文明の急激な発展は、自然の生態系を破壊し、人類の生存そのものを脅かす」という、文明と自然の対置する、現代の環境問題と同じような言説がみられたという。そこで儒家・墨家・道家たちは、「文明」をどのようにとらえたのか。かれらのテキストでは、以下のようになるのだそうです。

儒家=社会的身分の上下と富の多少を正比例させる文明肯定の楽観主義。
墨家=富の不足から、節約・勤勉・実用・増産をとなえる文明肯定の悲観主義。
道家=儒・墨がなしえなかった、文明批判を底流においた文明そのものの拒絶。

儒家にみられる、多くの富を消費できる者は立派な人間という考え方は、現代の自由主義経済に通底しているものがある。こうした消費礼賛型の社会に対して、贅沢をいましめ節約をとなえる考え方には、墨家がヒントをあたえてくれるだろう。こうした文明を拒絶して自然とともにくらすのは、道家が参考になるが、物質的繁栄を捨てて精神的な安らぎをもとめるのは難しい。一長一短ありますよ、本書はこのように締めくくられおわる。




読者をバカにしているのでしょうか。
こういうの、それこそサラリーマン向けのビジネス書、PHP新書あたりでやればいいでしょうに。

だいたい、儒家・墨家・道家テクストの文章ひとつひとつは、春秋から三国時代のどの辺で書かれたものなのか、今もってよく分かりません。前後で700年以上の幅があるということは、日本では鎌倉から現代までの幅があるということでしょう。いうなれば、兼好法師「徒然草」から芥川賞「蹴りたい背中」まで、とにかく文明絡みの文章をひっぱり出し、これは「文明批判です」あれは「文明肯定です」とやるに等しい。いったい、そんな作業が「予備作業」としてすら、何の意味があるのか、さっぱりわからない。

さらに、「文明批判」が「環境問題」と短絡される理由が理解できない。
だって、イコールになるはずがないんだもの。
「文明」をどうみるかは、なぜこの書では環境問題になるんでしょうか?

そもそも、古代の環境問題は、どこにあったのでしょうか?

古代の環境問題について、ちっともこの書では具体的には書かれていません。それもそのはず。当時、華北は森の中。黄河の洪水のおそれがあったので、やや高い土地に集落が散在。漢代になるまで、黄土平原の低地開拓はすすんでいないし、後漢や三国時代になると開拓地は、放棄されちゃう。おまけに、灌漑農業などできないから、天水農業でアワやキビを栽培していました。これでどんな環境破壊があるとでもいうんでしょう?? もっとも、本人も苦しいことを自覚しているようです。いたるところで、「環境」の負荷が少なかったことを述べているのだから。それなら、「環境問題」はなかった、でいいでしょうに。なぜよくないのか。

ひとえに筆者が、今はやりの「環境学」の所属になったからであろうことはあまりにも明白です。それでなにか研究しなければならないハメになったのでしょう。ご当人は、中国古代思想のご専門。ゆくゆくは、環境問題を考えたいそうだけど、こちらから謹んでお断りしたい。まったく、竹簡木簡などの出土資料から、古代中国社会像を復元した方が、なんぼかましだったであろうに。

渾身の一発芸『儒教 ルサンチマンの宗教』(平凡社新書)は、どんなに滅茶苦茶でも面白いから救われたけど、こちらは面白くもないし、救いようがない。岩波の編集部も、これに懲りて、他の新書で書いた人間に「トンデモ本」をかかせるというマネは止めて欲しいですたい。

評価 ★☆
価格: ¥735 (税込)


追伸 おまけ

『儒教ルサンチマンの宗教』とはこれ↓



評価 ★★★
価格: ¥798 (税込)





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Last updated  Aug 25, 2005 02:07:19 AM
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