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書評日記  パペッティア通信

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Jun 2, 2005
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カテゴリ:歴史


強力な華僑ネットワークが存在する、東アジア~東南アジア。
マラッカ海峡では日本人が海賊におそわれ、一時話題にもなりました。
これは、「中国人の海」の歴史的淵源をたどった、
格好の入門書になっています。

唐代、イスラム商人が広東に来航。宋代以後、さかんな海上交易にともない、海賊活動も本格化するようになったといいます。とくに元代は、どの王朝よりもさかんな海上進出がおこなわれ、イスラム商人なども来航し、海賊などの招聘につとめたという。エジプト・アレクサンドリアを上回る、海上交易の中心だった、福建省泉州。

とくに倭寇との関係は、われわれの興味をひくものがあります。明朝は、「海禁」=「朝貢貿易」をおこなっていました。鄭和の南海遠征などは有名です。しかし1523年以降、日本との朝貢貿易の停止にともない、「嘉靖の大倭寇」が誕生したという。襲撃は、東北の風がふく、4~5月、10~11月。倭寇は、中国海賊とむすびついて、環東シナ海に巨大な海上勢力が誕生しました。大倭寇で名高い、王直の知られざるエピソードは大変面白い。

むしろ清代は、沿海貿易と外国貿易の区別をつけておらず、空前の海上交易の発展をみたという。米穀・大豆・砂糖など、単品大量海上輸送がおこなわれた清代。海船経営も、商業目的から運賃収入を目的にかえて、運輸業の自立化がはじまりました。商人の交易対象国も、固定化。それまでの不定期交易から定期交易へと深化してゆきます。多くの中国人は、こうした定期交易のルートにのって、南洋へとわたって、交易活動に従事していったという。南海で遭難した日本人は、中国人の定期船ネットワークを利用して、日本に帰国していたというのも、知られざる一面でしょう。

「世界史リブレット」という形態もあって、薄さのわりにやや値段が高いのが難点か。すぐ読めてしまうのでもったいないかも。ただ、昔の海上交易のやり方なども、具体的に記されていて、大変わかりやすいのが喜ばしい。やはり今とは、まるで違う。

昨今、拡大しつつある中華経済圏。日本では、倭寇後は「朱印船貿易」「鎖国」で終わってしまうため、あまり知られていません。だからこそ、現代の華僑ネットワークにつながってくる部分は、本書の白眉となっています。

少し古いけど、お勧めしたい本のひとつです。

評価 ★★★
価格: ¥765 (税込)

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Last updated  Aug 25, 2005 02:04:50 AM
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