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テーマ:経済分野の書籍のレビュー(50)
カテゴリ:経済
![]() 参りました! 思いもよらない、北朝鮮の驚愕の事実。 その建国当初から、一貫した「計画なき計画経済」「援助漬け大国」 中・ソの援助なしでは、計画経済すら達成できない「三元化経済」の北朝鮮 (計画経済、第二経済委員会【軍事産業】、闇経済の3つ) 今の北朝鮮はなぜ生まれたのか。朝鮮戦争以後、どの社会主義国よりもはやいスピードで、農業集団化と企業国有化を達成させた北朝鮮。とはいえ、本書によると、その歩みは以下の通りだったという。 1 繰り上げ・超過達成運動による、人員と機械を消耗させた無謀な増産運動。 2 「四大軍事路線」などの過重すぎる国防負担。無意味な重化学工業路線。 3 「千里馬運動」は、北朝鮮版「大躍進」。中・ソの援助で失敗が顕在化せず、 「主体農法」「速度戦」なるものが、以後もくりかえされた。 4 プラント導入も、輸出の何倍もの年間債務支払をかかえデフォルト状態。 5 80年代には、「全国土棚田化」で土壌流出、農業崩壊。 6 90年代は、ソ連崩壊、韓国と社会主義国との国交樹立、自然災害の頻発で、 経済は崩壊状態。国家予算は半減したという。エネルギーも食料もない。 肥料も農薬も作れない。農業機械も動かせない。 7 こうした苦境は、1970年代から連綿として続いていて、 90年代からのものではない。回復の兆しもない。 最近の経済政策も、無謀の極みらしい。請負制など「農業改革」を先行させないで、価格改革だけ着手。余剰人員削減がすすむ、中国の国営企業改革。それに比べて、勤務先で仕事のない過剰労働力が、3割から5割にもおよびながら、人びとから隔離する形で外資導入が図られ、進出企業には自由がないらしい。投資する人もすくなく、経済波及効果も当然期待できないという。赤十字間でむすばれた帰還協定によって、北朝鮮にかえった在日は、「成分」では下から10番目の「動揺分子」だったとの指摘もおもしろい。1974年以降、自称「無税国家」の悲惨さ。この本では、北朝鮮は「改革開放」よりも、農民の生産インセンティブを高める「調整政策」をとるべきであると、経済改革の提言もおこなわれています。 資料がない、北朝鮮をどう分析するべきか。 ここで、虚偽にまみれがちな証言や、妄想と願望がふくらむ観測記事などに頼らず、「友邦」中国における「北朝鮮研究」を手がかりにしようという、著者の発想がなかなか面白い。それは成功している。さすがに評者も、1950年代には、朝鮮戦争で荒廃した国土の立て直しだから、北朝鮮経済には発展がみられたと思っていた。しかし、これすらも中ソの援助のためという。援助額縮小の1960年代、70年代では、計画経済すらまともに達成できていないらしい。「○ヵ年計画」すら、まともに建てられていなかったとは……(93年以降、計画を立てることすら放棄されている) 人びとは、70年代から「窮乏慣れ」してしまっている。そして、経済制裁も、中国が賛成しないかぎり、ほとんど効果はないという。むろん、韓国や台湾のように、「中間階級」などの民主化を支持しそうな受け皿もみられない。 その分析は、手堅く、面白い。 たしかに目からウロコが落ちました。 北朝鮮経済に興味のある方なら、必見の書になっています。 評価 ★★★ 価格: ¥714 (税込) 人気ランキング順位 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
Sep 30, 2005 09:01:06 PM
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