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書評日記  パペッティア通信

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Jul 30, 2005
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カテゴリ:音楽・文化


知床半島が登録されたことで、近頃話題になったユネスコの世界遺産。
その世界遺産について、簡潔にまとめた本が出ています。
ここでご紹介いたしましょう。

第一次大戦の破壊で始まった、記念建造物や景観保護の国際的保護運動。
1959年、アスワン・ハイ・ダム建設(エジプト)による、アブ・シンベル神殿の水没の危機に、ユネスコは調査・解体・移動させる大事業をおこないました。こうした中で、1972年ユネスコ総会で、文化財と自然保護を柱とした、世界遺産に関する国際条約が採択されることになります。ここから、「世界遺産」登録を通した保護の推奨、技術的援助と専門家育成のため人材を育成、政府の要請をうけた多岐にわたる活動といった、今みられるような活動が始まったらしい。

世界遺産は、「真正かつ完全」であるという要件を満たす、「顕著な普遍的価値」の証拠をもつものでなければならない。

これにはなかなか驚かされるものがあります。歴史的都市や文化的景観など、それぞれ種類によって、規定には、細かい違いがあるようです。むろんユネスコは、世界遺産や危機的遺産の保全に、奔走しているだけではありません。文化財の不法輸出入・譲渡の≪禁止・防止・押収返還≫にも尽力しています。それでも近年は、財源の問題から、既存のキャンペーンの継続を重視していて、アスワン・ハイ・ダムの時のような、巨大キャンペーンは立ちあげていないらしい。多彩化している、ユネスコの国際協力。多数の国際機関・団体がかかわるだけではなく、文化財保護のため、様々な介入や注文をおこなっています。

● 世界遺産は、世界のすべての国民のもの
● 記憶は創造性の本質的な原動力である
● 地域住民の保存への積極的参加
● 恵まれない社会階層を犠牲にした住民移動を引きおこしてはならない


こうした精神は、多くの賛同を呼ぶものでしょう。また「世界遺産」が、観光資源でもあることを、ユネスコは否定していません。そのあたりの融通無碍さも、多くの運動を組織する源になっているのでしょう。

とはいえ「世界遺産」も、多くの問題をかかえています。

● 政府が登録を悪用して、現状・保存措置報告をおこなわない
● 世界遺産が、欧米に半分近く存在していること
● 自然遺産と文化遺産の区別は、異議が唱えられていること


とくに最後の突きつける課題は大きい。アフリカなどでは、自然と文化の差異はつけにくい。聖獣保護の文化的ダブーが壊され、自然破壊などもみられたという。また無形遺産は、とくに保存について問題があります。これは、日本から着想をえて≪人間国宝ネットワーク≫というもので、技術の習得などが始まったという。

「保存すべきもの」「すべきではないもの」を決める権利が誰にあるのか。
消えたもの、失われたものは、それ自体、価値がなかったからではないのか。そのような疑念を抱かせながらも、進められていく自然保護運動。一度ご覧になってはいかがでしょうか。

評価 ★★☆
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Last updated  Nov 20, 2005 07:36:43 PM
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