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テーマ:社会関係の書籍のレビュー(95)
カテゴリ:社会
![]() 韓国で今、何がおきているのか。 日本の保守系メディアに取り囲まれた環境では、全体像がみえてこない、 韓国でおきている「民主化」運動のすべてがわかります。 盧武鉉政権下の韓国で秘かにすすむ、政治の地殻変動を描く、 迫真のレポートといえるでしょう。 ぜひ買うべし!! この書のポイントは多岐におよび、かなり有益といえます。 ● 「維新体制」下における「朝・中・東」三大新聞の「権言癒着」 ● 軍事政権の統治技術として生まれた「地域主義」 実は意外と新しい地域主義。 それまで深刻なものではなかった全羅道(湖南)差別は、71年朴正熙の大統領選三選と「維新体制」を機に、産業化にともなって韓国に定着していったらしい。光州事件は、湖南民を被差別の運命共同体にさせ、金大中に自らの命運を託させる心理を生みおとしてしまう。それが、非湖南民の湖南民への反発を高めて、それが螺旋的に地域主義を昂進させる、悪循環を発生させていったらしい。この史実は、みなさまにとっても、目からウロコではないでしょうか。「維新体制」以後、一部のジャーナリストをのぞけば、朝鮮日報・中央日報・東亜日報などは、免税措置、非税務調査、社主利益保証などによる、報道統制受入と引きかえのさまざまな特権で、軍事政権下、大いに発展することになったという。 ● 民主化の聖地「光州」と反米運動の誕生 79年10月、朴正熙暗殺によって迎えた民主化運動「ソウルの春」は、80年5月17日戒厳令布告と、18日光州への特殊部隊の投入、27日道庁の占拠によって幕を閉じた。そして、全斗煥の第五共和国がはじまる。平時でも、韓国軍はアメリカが作戦統制権をもつ。それなのに、なぜ全斗煥たちは軍隊を動かせたのか。光州事件は、アメリカ=解放軍の虚像を奪いさり、今燃えさかる反米運動の起点となったという。 ● 「言論権力」化した「朝鮮・中央・東亜」と市民勢力の対決 1980年代後半以降、民主化運動の過程で、MBC・KBSなどの放送では民主化は進んだ。ところが、社主の強い新聞ではまるですすまなかった。あまつさえ、保守系「朝・中・東」三紙は、市民が闘争で勝ちとった民主化の最大の受益者となって、「言論権力」とよばれるようになったらしい。その保守メディアへの反発から、ハンギョレ新聞、市民記者によるインターネット新聞「オーマイニュース」、専門記事サイト「プレシアン」、コラムサイト「ソプライズ」、そして「アンチ朝鮮日報」運動、が生まれてきたという。 そうした流れは、「政経癒着」「動員政治」を覆したい人々を生みだして、民主化運動にたずさわった商業高校出身者の弁護士ながら、出身地釜山で地域主義の壁に阻まれていた、盧武鉉を一躍押しあげる原動力になったらしい。 その一方、反共主義と地縁・血縁・学閥の既得権で組織化されていた韓国保守勢力は、危機感をいだいて、インターネット言論への参入や、アイデンティティの創造を模索しているという。 ● 盧武鉉政権の政治改革とは何か インターネット言論が生んだといえる盧武鉉政権は、自らの不正資金疑惑に対する特別検察の受入、イラク派兵、核廃棄物処理施設問題などで、支持者の離反をまねくことになった。そうした苦境の原因の一つは、それまで強大な大統領権力の中枢にあった、情報機関・検察などの権力装置を、政治からあえて独立させようとした、盧武鉉の政治改革にあるという。盧武鉉政権は、制度変革ではなく、民主的コミュニケーションの確立をめざす政権らしい。 ● 盧武鉉と大統領弾劾政局 盧武鉉は、じぶんも関わらざるをえなかった、地域主義的な、旧来のボス型金権政治からの脱却を目指しているらしい。そのため、不正資金疑惑において、あえて側近を検察に差し出すことで、それ以上の不正資金疑惑をかかえていた野党ハンナラ党に大打撃をあたえさせた。そしてそれとともに、地域主義をこえるために、統合新党「ウリ党」をたちあげたという。これが、ハンナラ・民主両党の野合というべき提携をうみ、弾劾政局をもたらしたが、かえって地域主義に立脚する両党の互いの支持基盤を侵食することになった。このときハンナラ党代表は、朝鮮日報で光州事件に加担して、のちに軍事政権の要職についた人物だったため、「クーデターVS民主」の図式と受けとられた。進むも退くもできず、両党は強行採決に追いこまれ自爆。弾劾政局を主導した民主党は崩壊寸前に追いこまれ、ハンナラ党は、慶尚道地域政党に転落してしまったという。 (その2に続きます)応援もヨロシク 評価 ★★★☆ 価格: ¥735 (税込) ![]() お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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