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書評日記  パペッティア通信

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Aug 14, 2005
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カテゴリ:経済


本日は、三男でありながら韓国GNPの2割を稼ぐ財閥を引きつぎ、トヨタ自動車にも匹敵する純利益1兆円(≠100億ドル)のサムスン電子を創業した、李健熙をえがいた本をお薦めします。これがなかなか渋い。

DRAM、SRAM、cdma式携帯電話、TFT液晶ディスプレイ、モニター、電子レンジなどで、世界シェア1位のサムスン電子(2002年)。その原動力は、アメリカに5年間放浪し東京に2度7年留学した、李健熙現会長の桁違いのパワーと思索にあったことがよくわかるでしょう。

・ エンジニアとして機械を分解するのみならず、犬育成から歴史にいたる
  まで、なにごとにも専門家レベルになるまで止めない探究心
・ 父・李秉吉吉の残した「傾聴」「木鶏」の精神にならう
・ 「一石五鳥」「1人の技術者が10~20万人を養う」にみられる、
  シナジー効果の推進と、人材育成の極端な強調
・ 「妻と子供以外のあらゆるものを変えろ」をとなえ、
  重病だった企業文化の一大変革に邁進
・ 「管理のサムスン」とよばれた秘書室制度の解体と、「集積化」推進
・ 企業分割と、集権型から分権型経営への転換
・ GE、SONY、モトローラなど、世界一流企業の方法を徹底的に調査分析



「量から質へ」

長時間におよぶ大会議で、今現在にうけつがれるこの経営方針に転換させた際、「変わりたくない人は変わらないでいい。衣食住は保証する。足を引っ張るな」などとは、なかなか言えるものではありますまい。また、社員の自己啓発のため、「7時出社、4時退社」制度の創始などをふくめて、随所に李健熙の経営に関する独創的な考え方が光っています。

また、「サムスン用語集」「サムスン・マニュアル」の存在も面白い。
トヨタなど真の一流企業は、世間とはまったく異なる体系をもつため、用語も独自になってしまう証なのかもしれません。他にも、国家に様々な企業を献納させられた軍事政権下の三星財閥の悲哀や、一方的に良い製品の生産を被支配者に強要して対価を払わなかったため、磁器技術を途絶えさせた悪しき韓国(李朝)の伝統など、韓国に関する豆知識も、実に豊富でおもしろい。最後に収められた、李健熙の人となり・日常生活・経営哲学だけでも、かなりの成功の秘訣が拝めてよい。経営書としては、かなりよくできた本といえるのではないでしょうか。

むろん、サムスン電子の「選択と集中」経営の成功の影には、1997年の経済危機とIMF進駐によって、三星財閥が電子、金融、化学・重工業の3分野に再編・整理・売却させられたことがあるでしょう。サムスンは、移動通信関連、半導体設計、動画圧縮、システム・インターフェース技術など、基本技術で遅れがめだちます。テコ入れがおこなわれたはずの技術部門は、成果をあげたとはいいがたい。基幹技術の外注は、ブランド・イメージをそこない、ロイヤリティをかさませてしまう。むろん、筆者のみならず李健熙も、そのことに警鐘を鳴らし、さらなる人材育成によって、この難関を突破しようとしている。

ただ、基幹技術の依存は、むしろ新製品の開発力を衰えさせかねないことがほとんど述べられていないのはマイナスでしょう。その意味で、「ソニー・ショック」以降、日本では非サムスン・モデルへの回帰が、家電分野などでは始まっています。

分業を極端におしすすめることが利点につながる、現在の経営環境にもっとも適応した、サムスン電子の「選択と集中」経営。それを可能にした、変化の速い21世紀型のエレクトロニクス産業。

その選択が吉とでるか、凶とでるか。
本書は、そんなことを考えながら読むには最適の書といえます。

評価 ★★★
価格: ¥1,680 (税込)


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追伸  大阪金剛組って、本当に西暦578年に創業した会社なんだろうか…





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Last updated  Sep 15, 2005 05:19:57 PM
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