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カテゴリ:サブカル・小説・映画
![]() 先日、百合姫の創刊を寿いだ際、ブログで語りきれなかった部分があった。 本日は、コミックの新刊紹介もかねて、それについてとりあげておきたい。 それは、男の欲望、「萌え」としての百合について、である。 そもそも女性は、子供から大人へと成長する過程で、 男性よりもはるかに切実に、自らの性にむきあわざるをえない。 それは時に、男性などとくらべ、あまりにも理不尽な形であらわれてしまう。 そうした特性こそ、少女漫画という特異なジャンルを成立させるとともに、異性間交遊にともないがちな、異性間の理不尽な「非対称性」が慎重に排除された、ある種「純粋な関係性」としての恋愛物、 「ボーイズ・ラブ」 をうみおとす原動力になったといえるでしょう。むろん、異性間の理不尽な非対称性を排除するためには、なにも男性のみが登場人物である必然性は、どこにもありません。ここに、ボーイズ・ラブの裏側に、「百合」というジャンルの出現がもたらされることとなった。これらは、遊鬱様のブログでも論じられています。ぜひ、ご参考にしてほしい。 なにより「ボーイズ・ラブ」も、「百合」も、 女性が、女性であることによって、傷つくことはない。 「純粋な関係性」「女性の傷つくことのない」百合というジャンル。 ところが、近年の百合ブームと受容は、男性を中心にすすめられてきた。 ここで、男性的な百合受容の典型として取りあげたいのが、冒頭の画像でごらんになっている、竹本泉『さくらの境』(メディア・ファクトリー)でしょう。まさしく、男性にとっての百合とは何であるか、その典型的な作品になっているのです。 登場人物は、女子高生の3人と猫10匹(あと、翻訳家)。 彼女たち(といってもカップルはそのうち2名だけど…)は、悩まない。 「自分が百合であること」に対して。 ノホホンと、ひたすらイチャイチャ。(竹本泉の芸風なんだけど…) 本当にそれだけなのです。 なにより竹本泉がこの作品を描いた理由は、 「百合ブームだから」 らしい。さすがに、『あおいちゃんパニック』以来の熱烈なファンの私でさえ、この安直な姿勢には、激怒してしまった。「トウィンクルスター・のんのんじー」「トランジスタにビーナス」でもそうだが、女の子が抱き合っていれば、それが百合とでもいう気なのでしょうか?? 所詮、男にとって百合とは、 可愛い女の子(=萌え)がいちゃつくだけ、なのだろう。 そして、融合的一体化の悦びを、味あわせてくれるものなんだろう。 だからこそ、コインの裏側、「ボーイズ・ラブ」に目が向くことは、 決してない。 それと、まったく対照的なのが、現在の百合ブームの先駆けとなった、これ↓ ![]() 今野緒雪『マリア様がみてる 薔薇のミルフィーユ』(集英社コバルト文庫)でしょう。このシリーズの総評は、かつて「悦び」がいざなうファシズムで論じてあるので、今回は新刊のみをあつかいます。 今回の新刊も、また、とても素晴らしい。 とくに第三章。 遊園地でデートする、赤薔薇姉妹のお話が絶品のできばえ。 赤薔薇様の婚約者でありながら、それを解消させた柏木さん。 それはホモを婚約者に告白することで解消させたわけなんだけど、 実は彼は… 悲しいのは、祐巳さんも、柏木さんも、決して報われることがない。 両者とも、それをきっちり自覚している所まで悲しい。 どこまでも、優しくて泣けてくる。 百合をめぐるの2つの方向性 「純粋な関係性」「女性の傷つくことのない」楽しみと、 「萌える女の子」「融合的一体化」の楽しみ。 そこに差しこむ、ボーイズ・ラブという問題系。 「百合」の商品化の過程で、消費者(おもに男性)の欲望にあわせてまぎれこむことになった後者は、決して夾雑物とはおもわない。圧倒的な同人活動によって、もはや商品化自体、同人活動の氷山の一角に過ぎない、「ボーイズ・ラブ」。それとは、ことなる状況下におかれたに「百合」にとって、こうした共犯関係をとりむすぶこと自体、商品化するための撒き餌なのかもしれない。そもそも、何らかの形で商品化されることを通してしか、ジャンルの存続はありえないのだから。 こうした、未分化のジャンルには、かけもち作家も多い。 ボーイズ・ラブと百合姫に描いている影木栄貴(竹下登首相の孫で有名)は、 その代表といえるでしょう。 だからこそ、 願わくは、ボーイズ・ラブの影・落とし子に止まらない、 「百合」というジャンルの方向性にしかかけない「何か」に、 一刻もはやくチャレンジしてほしい。 あれほどまで女性の望んだ、女性が傷つくことがないジャンルでさえ、 「可愛い女の子」という存在を通して、収奪してしまう男性社会。 それからの一刻も早い独立こそ、望まれているのだから。 たぶん。 人気ランキング順位 追伸 ● 竹本泉『さくらの境 1巻』MF(メディア・ファクトリー)コミックス 評価 ★★ 価格: ¥580 (税込) ● 今野緒雪『マリア様がみてる 薔薇のミルフィーユ』集英社コバルト文庫 評価 ★★★★ 価格: ¥420 (税込) お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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