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Aug 26, 2005
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カテゴリ:経済


本日は、現代日本の構造改革・経済政策から高度経済成長まで、はば広い実証的なマクロ経済分析をおこなっている、代表的なリフレ派研究者の本をご紹介いたしましょう。小泉構造改革の信任選挙をひかえる今日、とるべき経済政策を記していて、必見の書籍のひとつになっています。

ポイントをまとめておきました。

● 産業政策は、高度成長期にも機能していない

高度成長は、貿易自由化による自由な競争の結果であった。産業政策・行政指導などの規制分野は、銀行などみても、まったく伸びていない。高度経済成長の終焉は、原油価格高騰ではなく、キャッチ・アップ効果の低下(クラフツ)と、「国土の均等発展」を名目とした地方分散・都心分散政策~「逆構造改革」(八田達夫・増田悦佐)~などによる、生産性の低迷が原因とされています。規制緩和や自由化は、アメリカの電力、イギリスの鉄道の事例にみられるように、「退出」という選択肢のない上下分離方式などの不適切な施策ですすめると、顧客の利益にならないらしい。

● 「執行と監督」の分離が必要な日本的経営

日本的雇用慣行、≪企業別労働組合、企業内訓練、終身雇用・年功序列賃金≫は、高い熟練と労使関係の安定化によって、労働生産性を高めるものであった。また日本企業は、能力別賃金制も柔軟にとりいれつつあり、90年代の不況と日本型経営は、無関係という。これまで、「所有と経営」の分離下でも株主と会社関係者の「蜜月」が続いたのは、経営目標がスケール・メリットとマーケット・シェアにおかれ、株主利益と経営者・従業員利益が相反しなかったためらしい。株式持合下、投資信託会社どころかメイン・バンクも、コーポレート・ガバナンスの機能をはたしてこなかったという。

● ナショナル・ミニマムと「受益者負担の原則」をわけてゆく必要性
    (責任取らない主体に任せない) 

特殊法人改革は、道路公団、住宅金融公庫のみの不充分な改革であった。政府金融機関など、他の改革には手をつけられていない。「郵貯による民間金融の補完」は、マヤカシにすぎない。ナショナル・ミニマムを見直すとともに、どれだけそれ以外の領域に、≪受益者負担の原則≫を導入できるか。「国庫補助負担金」「税源配分」「地方交付税」の地方財政≪三位一体≫改革も、この点が郵貯と同様に、とても重要であるという。3割しか政策経費のない財政再建のためには、名目成長率をあげる重要性が強調されています。

また年金については、賦課方式による世代間格差の問題のみならず、税金と保険の区別が曖昧なのも、問題のひとつとして批判されています。老後生活保護と企業税負担の2つの側面から、基礎年金部分への税金投入が唱えられているものの、消費税をあてるのは、税の公平性の観点からみて、やはり問題があるらしい。

● バブル期における銀行の盛んな不動産投資は、
   金融自由化よりも、企業の金融構造の変化(資金余剰主体化)にある
● 日本経済の課題は、デフレからの脱却である


土地神話によって、リスク分散=「卵をひとつのバスケットに入れない」を忘れ、不良債権をかかえてしまった銀行。90年代大不況の原因は、潜在成長率の低下でも、労働生産性の低下でも、「構造改革の遅れ」でも、「非生産的な公共投資」でもない。むろん、不良債権による「銀行貸し渋り」説も、追い貸しによる「優良企業締出・低生産性企業温存」説も、正しくないという。大不況は、「債務デフレ」=「バランス・シート」不況にほかならない。構造改革は、マクロ経済の不安定化をもたらす。必要なのは、マクロ経済を安定化させる政策である。それは、90年代のデフレ期待を根絶させる金融政策、量的緩和からインフレ・ターゲット(1~3%)への、政策レジームの転換とコミットメントに他ならない、という。


この簡略な紹介からも、経済政策のさまざまな論点が、コンパクトにまとめられていることが分かるでしょう。悪いのは、独占。エンロン事件にみられる利益相反的行動への誘因は、市場ルールの整備で。環境問題は「市場の創出」で。このような「退出と声」戦略(byハーシュマン)が採れる≪市場競争の必要性≫は、なんども繰りかえされていて、考えさせられるものがあります。ほかにも、「70の法則」≪70を成長率や利子率で割ると、何年で倍になるかの計算法≫。土地と店舗を借りて経営したイトーヨーカドーと、土地値上がり益で経営拡大を行なった、ダイエーの差。バブル期、開発案件を提案し受注する「造注」に走って、地主の銀行借入の際、債務保証をおこなった建設業者の悲劇など、豆知識もたいへんありがたい。

とくに、2001年、関係が断たれたはずの郵貯と財政投融資の≪腐れ縁≫は、総選挙の投票先にもかかわる、必見の部分ではないでしょうか。そもそも、融資先を探すインセンティブがなく、今ですら「財投機関債」はわずか。依然として「財投債」が発行されている現実は、政府保証が外れないままの改革とともに、小泉的郵政民営化の虚妄を的確に突いていてすばらしい。また、不況=低生産性企業温存説(だからダイエーなど不良債権企業は清算されるべき、につながる説)は、供給能力と需要の差=≪GDPギャップ≫が解消されない限り、高生産性企業従事者と失業者を生んで、社会全体では生産性を低下させるだけの≪合成の誤謬≫にすぎないらしい。バッサリ謬論を切り捨ててくれるさまは、痛快至極であります。

いささか残念な部分は、プライマリー・バランスの前提となる、国債発行残高と純債務の違いが書かれていない所でしょう。とはいえ、もっとも感動的なのは、

  すべての労働者を本当に保護するのは、労働組合でも、雇用保険でも
  労基法でもなく「求人競争」であり、所得格差を縮小させるのは、
  所得再分配ではなく経済成長である


ことをキッパリとのべている部分ではないでしょうか。経済の語源、「経世済民」の学にふさわしい、近年忘れられがちな、守らなければならない最後の一線の提示。

総選挙への一票を投じる前に経済をかんがえておきたい貴方に、
お勧めの一冊といえるのではないでしょうか。


評価 ★★★☆
価格: ¥819 (税込)

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Last updated  Oct 12, 2005 05:59:29 PM
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