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書評日記  パペッティア通信

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Aug 31, 2005
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カテゴリ:社会


投票先を考えるためにも、大切な外交問題。
本日は、華僑世界の成立と、日本の外国人政策について、とりあつかった研究書をご紹介いたしましょう。

工業化、植民地労働力、黒人奴隷労働の廃止、蒸気船などのプル要因と、人口増加などのプッシュ要因でおこった、膨大な華僑の流れ。江戸時代、長崎では福建省出身者の同郷グループが作られていた。日本の開国後は、神戸などに福建・広東・三江の同郷グループが進出して、「開国はアジアへの開国」といわれるほど、アジア向輸出入を支配したという。

驚くべきことに、日本の華僑対策は、江戸幕府の鎖国以来の施策に変化がなかったらしい。1894年、日清戦争によって清国の領事裁判権は廃止され、条約改正後は外国人に内地雑居が認められるものの、

● 窓口地域・居住地域を限定する
● 商人は受け入れるが、労働者は受け入れない


という方針を一貫して華僑にだけは採用し、旧居留地・雑居地に居住を制限していたという。また、製造業への参入と土地保有は禁止されていたらしい。20世紀初頭、華僑の指導層は、日本国籍をもち、協調・定着化傾向を示していた。それが、1910年代以降、日本の侵略による日中関係の悪化にともない、華僑の民族意識は高揚してゆく。第二次大戦、神戸華僑は弾圧された。また華僑は、「反日」を強める南洋華僑の日本支持へ転換させる働きかけや、汪兆銘政権支持などの戦争協力を迫られたらしい。

● 労働者が8割をしめた、台湾華僑

一方、台湾華僑は、台湾割譲後、住民が日本国籍に変更されたことから生まれた。総督府は、「南国公司」という請負会社をつくって、外国人とは異なる特殊な管理下に華僑をおき、開発に従事させた。また、華僑と台湾人の結合をおそれ、子弟の公立学校への編入も、華僑学校の建設も、認めなかった。1920年代、台湾人の社会運動の高まりに、華僑も「差別撤廃運動」がおきて、弾圧が加えられたという。戦後、台湾における華僑の消滅とともに、日本に「台湾出身華僑」が誕生する。1947年から、台湾出身華僑は、戦勝国民扱いになったエピソードも面白い。

● 商人中心であるものの、労働者に農民が多い、朝鮮華僑

当初、清国の領事裁判権におかれたが、日清戦争後、租界の撤廃がおこなわれても流入を続けたという。華僑は単身わたるものが多く、男女比は「10:1」。当初、朝鮮人の対中国移住もあって、日本国内と違い、無制限受入がおこなわれていた。そのため、万宝山事件にみられるように、中国の朝鮮人問題は、朝鮮の中国人問題に波及しやすかったという。低賃金・劣悪環境によって、ストライキが頻発したのも、朝鮮華僑の顕著な特徴。1920年代、日本人下層民の雇用問題から、朝鮮人の日本移住制限策がとられるとともに、朝鮮人の雇用問題のため、中国人の朝鮮移住制限策がとられるようになったらしい

また歴代中国政府の華僑政策も、詳細でたいへん参考になります。「海禁」によって棄民状態であった華僑も、1860年以降、海外渡航がみとめられ、1893年には帰国が許可されることになったという。それは、保護すべき対象、経済的力量を利用すべき対象として認識されたことを示し、在外領事館の開設など、さかんな華僑保護へむけた政策がとられたらしい。また、海外の中国系の人々に、中国人意識をもたせるため、国籍法で血統主義を採用するとともに、「父が不明、無国籍で、母が中国人」でも中国人とされた。そのため、二重国籍を容認する施策となって、今も居住国の民族主義と衝突しているらしい。


とはいえ、一番驚愕させられるのは、

● 東アジア(日・朝)の華僑数は、華僑全体(4000万)の1%にみたない
● 戦前は、日本人の中国・朝鮮・台湾向け移民数は、
   中国人の朝鮮・台湾・日本向け移民数を圧倒していた


という事実ではないだろうか。

そのとおり。
実は、日本や韓国は、華僑のもっともいない地域のひとつ、なのである。


「強制連行」「徴用」の時代をのぞけば、日本人の朝鮮への移民数は、朝鮮人の日本への移民数よりも、多かったというのも知られていない事実ではないか。単純労働力の受入を拒否しておきながら、いったん労働力不足になると、強制連行でつれてくるのが、日本クオリティ。日本に強制連行した4万人の中国人への賃金は未払いのまま。それならまだ許せる(?)としても、なんと企業には「中国人労働者使役による損失」補償がなされたという。ボッタクリ企業、すげえ。心温まるエピソードであろう。個人補償について、ぐだぐだ後でいわれる理由がわかるというもの。

なにより、「華僑」へ適用された、単純労働者流入コントロールが、現在の入管法に連綿と受け継がれているという指摘が、おもしろい。交流と共生の時代、少子高齢化に直面している現在、どうむきあうかは、歴史問題とともに問われているという。ただ、「内務省的入管」的移民観から、いきなり「交流と共生」を!といっても、共感を得るのは、難しいのではないだろうか。むしろ、日本人の活動ネットワークの広がりを説く中で、守るべき広範な利益の一つとして、そうした「共生と交流」を位置づけていく方が、受け入れられやすいのではないだろうか。

21世紀、「中国の世紀」にどうむきあうのか。
それを考えさせてくれる一冊になっています。
お勧めです。

評価 ★★★☆
価格: ¥3,570 (税込)

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Last updated  Sep 18, 2005 04:13:15 AM
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