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テーマ:社会関係の書籍のレビュー(95)
カテゴリ:社会
![]() 民主党の前原新代表。 期待するものは、60%に及ぶらしい。 まずは幸先のいい出だしでしょう。 彼の専門分野、安保・外交問題。 無責任・自民党政権によって、いかにシビリアン・コントロールが形骸化されてきたか。今回、ご紹介するのは、歴代自民党政権の無見識と無責任に振り回される、自衛隊の内実を丁寧にえがいたレポートです。筆者は、自衛隊<制服組>にシンパシーをいだいている、ジャーナリスト。それだけでも一読の価値があるのではないでしょうか。 「仮想敵」ソ連は崩壊。 それなのに肥大化して憲法改正まで叫ばれる自衛隊。 それは、アーミテージ・レポートに対する、PKF(国連平和維持軍)の凍結解除などの、防衛戦略研究会議提言にみられるように、海外派遣が本格化していることにあるという。今では、自衛隊の志望動機の8割は、「海外人道支援活動」と「災害救助」にあるらしい。 カンボジアPKO派遣時、陸上自衛隊が見せられた悪夢。 選挙監視員を守るため、現地の制服組に迫られた「人間の盾」になる任務。 「部隊行動」を回避するため、指揮官の無言発砲を合図に応戦を規定。 制服組は「陸幕は政府の要請を断るべきだった」と憤懣をぶちまけたという。 今回のイラク自衛隊派遣。 PKOとは違い、本来ならば、「日本独自の判断」でどこに何をおこなうのか決めなければならない。 ところが、ここで報告されているのは、派遣には熱心で、改憲さえ唱えながら、派遣した後は無関心という、オゾマシイほどの無責任な自民党政治なのです。1000名は必要だった派遣。ところが、官邸がねぎって、防衛庁の背広組が妥協。600名の派遣人員中、施設復旧は100名にもならないという。それだけではない。なんと、2名の「制服組」のサマワ先遣隊は、たった滞在1日の現地調査で、安全というゴーサインを出せる報告書を書かされたらしい。これによって現職自衛官の責任で、派遣させられることになったのです。おそろしいまでの無責任さには、あきれかえります。自衛隊員の命を何だと思っているのか。 そんな、命がけで知恵をしぼらされている制服組の苦闘には、誰しもシンパシーを抱かされてしまう。そもそも、生活基盤の充実するサマワには、いく必要はない。だから、給水以外、ほとんど何もやれていない。その逆風にあっても、現地において、組織文化の殻をやぶりつつ、軍隊の常識を学んでゆく自衛隊。「施設復旧=治安維持」であることをオランダ軍から学ぶ。また自衛隊は、「自衛隊派遣⇒自衛隊安全確保⇒地元要望にこたえるODAの要請」と、都市計画技術者派遣要請などを初めとして、政治方面にもさまざまな働きかけをおこなっているという。 「制服組」に実権を与えない、「背広組」内局。 そんな「背広組」を信用しない制服組。 「政治」から徹底的に排除されてきた、制服組。 それがシビリアンコントロールとされてきた日本。 とはいえ、こんな無責任な政治によって、矢面に立たざるを得ない制服組は、防衛庁の背広組を飛びこえて、政治家にレクチャー・働きかけがおこなわれ始めているという。自衛隊のイラク派遣に関する報道規制は、首相官邸と内局主導でおこなわれたものの、その後、広報してほしい陸幕制服組らの巻き返しによって、報道規制の緩和がおこなわれたという。そうした結びつきは、空中警戒管制機導入、武器使用の基準緩和など、さまざまな局面で頻出していることがわかります。イラク特措法における、空自は安全確保支援活動、陸自は人道復興支援活動の違い。「米軍に組みこまれた」海自と、「国土防衛」の陸自の文化のちがい。様々な自衛隊現況報告も、とても面白い。 「軍隊ではない自衛隊」のかかえる問題は、憲法ではない。 そう叫ばざるをえない政治の貧困はとてつもなく深い。 「できる範囲でいい」 自衛隊制服組は、海外派遣に対して、そう語るという。 海外で戦ってはならない自衛隊。銃を撃たず、作業監督に徹する「周回遅れのランナー」自衛隊は、冷戦後、軍隊の目的について、世界中に懐疑が蔓延している中で、世界の先頭を走っているという。 武力行使できないのは割高である。そのことを認識しながらも、「遅れてきた軍隊」ではなく、「進化した自衛隊」を主張することを止めない筆者。この本を読めば、なぜこのような結論が導かれるのか、よく分かるでしょう。また、自民党政治の貧困が、石破や、安倍晋三、前原誠司といった若手政治家と、制服組自衛官たちの連係を生んでいる姿も、確認することができます。今の政治の問題を確認するためにも、たいへん面白い本になっているのです。 自衛隊と政治を論じるならば、みなさまにはぜひ読んで欲しい、 そんな一冊になっています。 お試しあれ。 評価 ★★★ 価格: ¥840 (税込) ![]() お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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