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書評日記  パペッティア通信

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Oct 6, 2005
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カテゴリ:経済


いやあ、面白い。
同時に、かなり評価が難しい。
あらたなる人権論にもなっている。

本書は、ホッブス、ロック、ヒューム、ルソーと続く社会契約論を通して、マルクスの『資本論』を批判的にとらえ、現代の『「資本」論』を構築しようとします。なんというか、そのホラにお付きあいしてあげたくなっちゃいません?

ホッブス流、「主権者-人民」間に合意のない、「自然権」の一方的放棄。その世界では、そもそも約束を守らせる力がないため、国家設立ができません。そこで、<エコロジカルな条件変化>を導入して、ロック流「他人の社会的承認なしに形成される所有権」「自然法のある無政府状態」をベースに、ホッブスの「獲得によるコモンウェルス」(征服国家)を取りこむことで、この問題の解決を図ろうとします。<ロック的状況からホッブス的状況へ移行>、ロック的「国家」の<拡散>として把握することで、この難問を解くのです。ただ、ロックの国家は、「土地所有を守る」ために出現したにすぎない。無産市民、外人は弾き出されてしまうのです。そこで「独裁者の押し付け」(ホッブス)「全人民の約束」(ロック)のような対称性をもたない、第三の「慣行」(コンベンション)をヒュームから借用。 「利益を期待」して、一方的、非対称な受容をおこなう「無産市民・外人」を想定して、彼らも「国家」の構成員の中に引きこんでゆこうとするのです。

そこから、「市場」「資本」「人的資本」とすすむのですが、以上のパースペクティブで議論がすすめられます。

互酬・再分配は社会関係を前提にするが、市場は交換によって社会関係が形成される。交換は、「約束」「契約」を通して行なわれる共同行為の一例にすぎない。交換が定着して市場が生まれ、商人、市場(いちば)、貨幣が出現すると、もはや戻れない。

人間はリスク回避的な存在です。それは、比較的開かれた市場の大海に、閉じられた共同体(会社・家族…)が存在する理由でもあります。市場を「売買」の場としてのみとらえると、そうした長期相対的な貸借のシンボル=会社が説明できない。耐久財・不動産…大きいものほど、使用権の一時・部分的移転である「貸借」になじみやすい。貸借は、現物引渡と支払にタイムラグのある信用取引になるものの、いずれにせよ誰かの所有が前提となります。マルクスの「本源的蓄積論」は、土地担保金融、商業信用などで「資産」をファイナンスしていたことを見落としているものの、「どこから大規模に資本を調達するのか」についての先鋭な問題意識は再評価されています。多数の出資がないと巨大企業はできないが、さりとて持ち逃げをおそれなければならない。このホッブス的状況の解法として、「会社」―――会社を創設は、ヒューム的非対称性、ホッブス的「獲得のコモンウェルス」でもある―――を位置づける見解は、なかなか面白かった。

「人的資本」の章では、「相対的過剰人口」の枠組でしかないとはいえ、消耗以上の蓄積ができぬ限界性をみぬいた、マルクス「労働力」概念が再評価されます。不確実な状況は、金融市場と労働市場でひどく、その状況下では、生産関係のひとつ「所有」「市場」は、不平等を増幅してしまう。経済発展は、履歴効果によって、「国家(市場)の外に出ても、自然状態はない」状況を生む。「降りる自由」の消滅した「市場経済」の中で、我々はどう振舞うべきか。

旧来、「自然権の保証」ではなく「国家の恩恵」にされた「福祉国家的社会権」。筆者は、そんな社会権を認めない。筆者の処方箋は、「人的資本」として「労働力」を捉えなおすことで、傷つきやすい財産「労働力=人的資本」を機能させるための、ロールズ、セン流の「セーフティネット」として「国家」を位置づけよ、というもの。逆選択とモラル・ハザードへの内的なセーフティネットは、不均衡要因として働き、エージェントの過剰供給、すなわち「失業」と「信用割当」を生む。そのため外的なセーフティネットは、避けられない。こうした所有権の拡張は、有体財産とちがい社会関係に先行せず、「世界を構成していない」とされた知識・人的資本の枠組(byアーレント)を否定し「身体もまた財産」にすることで、無産市民・外人・難民まで「自然権の保証」=ロック的国家枠組の中に組みいれる。それは、財産たる身体の改造=サイボーグ化による人類分断を許容する論理であることを認めながらも、「剥き出しの生」化させないために提唱される。

元ネタを知っている人にとっては、さして難しいものではありません。
はは~ん、あれとあれを組み合わせているな、と思える部分もあるでしょう。

といいますか、後ろに「全」参考文献一覧をつけないのは、あまりにも傲慢ではありませんか? 元ネタがわかる人は、不信感をいだくだけだし、分らない人は、理解できないまま、勉強することもままなりません。この一冊だけで、済ませようとするなら、かなり厳しいかも。また、「マル経仮面」(『諸君』)などと金子勝をターゲットにしておきながら、本書では刺激をうけたとしおらしく振る舞うためか、本文内では言及もされていません。読者に違いが分らないのでは、マッチポンプの謗りは免れないでしょう。精緻化したセーフティネット論が売りというのでは、なんとも。「人のふんどしで相撲を取る」といわれても仕方ありません。


とはいえ、さまざまな知見が随所に交えられていて、飽きないのは確かなんですよね。ホワイトカラーとブルーカラーは、前近代の2つの雇用形態、拡張された家産共同体に準メンバー(奉公人:無定形)を招きいれるあり方と、限定された特定の仕事を命じる(熟練工:専門)あり方から来たって、皆さん知っておられましたか? 中世イギリスの雇用労働者は、実家財産の相続、暖簾分けまで独立せず結婚もしなかったので独立した階級になっていなかった。農業革命・産業革命による相続・独立の困難と、雇用者数の上昇。そこでプロレタリアートは、結婚して所帯をもち、階級として自立するようになってゆく。その只中にいて、再生産単位として家族の危機を体感したマルクスと、只中にいなかったホッブス、ロック。それは、思索の違いにもつながっているのだ、との指摘は言われるまで気づきませんでした。「社会契約論」は、秩序は意図的な設計構築のはずだ、という発想から生まれたというのも、そういやそうだった、そうだった、てなもん。基礎的なことの復習と確認に、かなり役立ちます。

というわけで、知ってる人はおさらいのために。
知らない人は、勉強のために。
ぜひ、手にとってはいかがでしょうか。

評価 ★★★☆
価格: ¥903 (税込)

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Last updated  Oct 28, 2005 01:34:15 PM
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