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書評日記  パペッティア通信

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Oct 29, 2005
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カテゴリ:社会
gorinju

危険なまでに面白い。
一気唖成に読み終えてしまうほど。

「日本人の足は平均2本未満である」といい、
2本足の人間は平均的ではないと嘯く、オーストラリア在住の博徒、森巣博
「放送禁止歌」「A」など、ドキュメンタリー・映画監督で有名な森達也

まさか、こんなに面白いとは、買った私が一番驚いた。
どちらかといえば、メディアに厳しい森巣と、民意に厳しい森。
お手軽企画にみえて、こんなにまで刺激的なコラボ対談集があっただろうか。

「日本の9・11」、地下鉄サリン事件。
国家によって統制されていないのに、日本には自由がないのではないか。
この提起からはじまる2名の対談は、もう手がつけられない。

ジャーナリズムは、人を傷つけ、他人の不幸で商売する賎業を自覚せよ!(森)
客観・中立的報道は,政治的な主流を代弁するものにすぎない!(森巣)
主観の曖昧性・欺瞞性の中で足掻かねばならない! (森)
中立・公平こそ、「正義」へ転化する!(森巣)
カメラを捨てて助けるべきか、答えなどない!悩まねばならない!(森)

マスコミ関係者の給料を1/10、2CHで蔑視発言する連中程度に落とせ!(森巣)
主語のない情動などない。匿名やめて顕名にせよ! (森)
日本では、「社会」がつねに「世間」に侵食されてしまう。一体化を防げ!(森巣)
映画を撮りたければ、教師・看護師など資格のある女性と結婚せよ。(森)
「われわれ」と「かれら」を分けること、これがすべての悪の始まりだ!(森巣)
オウムもナチスもチマチョゴリを切る奴も、すべては善意から始まる!(森)



とめどめもない、提言・意見が続く。

なにより、ご臨終・危篤状態にあるメディアの惨状が、これでもか、これでもか、と語られる。素人さんには、危なくてとてもお勧めできない。主語が不明なまま、被害者に過剰に感情移入して流す。倒れたものを叩く、卑劣なジャーナリズム。そうした、不祥事がおこるとシャワーのように記者が殺到する「報道被害」は、それまで報道価値がなかったものに、価値が急に生まれることからくるという。権力におもねることは何の利益もないが、面倒回避と責任放棄によって、垂れ流しになってしまう。官僚や政治を監視するはずのメディアが、官僚主義メディアとなってリスクを負おうとしない。第四の権力なら、権力を与えられるかわりに、何か担保条件があるはずだろう。それを果たそうとしない。なんという奴等だ。

普通の対談なら、そこで終わってしまう。
ここからが違う。

おそるべきことに、日本テレビは視聴率でニュース項目を選んでいるらしい。視聴率が取れないと報道しないのは、ワイドショーだけではない。ニュースでさえ、視聴率が取れないと扱わないのだ。実は、マスコミは民度の反映にすぎなかった…

メディアと民度は地続き。卵が先か、鶏が先か。十五年戦争でさえ、新聞が煽ったのではない。新聞不買で、東京日々・毎日が煽ったら、部数急伸。それで朝日があわてて…の繰り返し。オウムのドキュメンタリー映画「A2」の一部を流したとき、なんでオウムが笑ってる姿を放映するんだ!という苦情が殺到した日本。加害少年の実名が発表されたとき、母親には「うちも更正できた!」といった、激励の手紙が届くらしいアメリカ。この2国の違いをみるにつけ、なにかしら絶望的な気さえしてしまう。


危険な裏話もいっぱい。

「祝祭日に日の丸を掲げろ!」と言う石原慎太郎は、「緑の日」にすら田園調布の自宅に、国旗を掲げていないゲス野郎らしい。第七艦隊所属潜水艦コロラドの乗組員263名の半数以上は、民間戦争企業の派遣社員らしい。警察が「買い上げ機構」をつくって、取り締まられなくなったパチンコ「景品買い」。拉致被害者「救う会」では、いつも「ふるさと」を「インターナショナル」よろしく、大の大人が涙を流して大合唱するらしいが本当か?(本当だったらキショイわ。さすが元左翼)。「イラク人質事件」で沸きおこった自己責任論。オーストラリアSBS放送のインタビュアーが、産経新聞の論説委員を相手に、「どうしてこんなことまで自己責任になるんだ?」と問い詰めると、答えに窮した産経新聞論説委員の寄こした、国辱ものの回答とはいったい何か?!? 答えは各自でご確認くだされ。

他にも、いろいろ小話があって、たいへん参考になるのが嬉しい。ディレクターに著作権がまったくない、テレビ業界。ドキュメンタリーは、報道と違って100%主観というのも面白い。民放業界は、TV局と制作会社では権限も給与水準も違いすぎて、NHKのように天下りすることはないという。従軍慰安婦の女性国際戦犯法廷問題も、なんの権限のないDJ(ドキュメンタリージャパン)が「企画書通り」に作って渡したら、勝手に改竄されてしまった事件という側面があるらしい。かれらの「クレジットを外してほしい」という願いも聞き入れられず、DJのみに賠償命令が下ってしまったという。ひでえ。スキャンダルジャーナリズムは、もはや『実話ナックルズ』のみ頑張っている惨状。『噂の真相』が懐かしい。

ただ、どうだろう。

むしろ、メディアのだらしなさは、「正しさ」にしがみつかなければならない環境にあるからではないか。「正しさ」しか、批判への防御にならない。「正しい」ものが、どこにあるのか分からない中で、政府に、多数派に、寄添ってゆくしかない。これに対する、左のスタンスから繰り出されるメディア批判。この2名、朝日新聞や坂本義和のどこが左翼なんじゃ!と切って捨てる。とはいえ、不思議と嫌な党派臭がしないのは、徹底した個人主義と無手勝流だからか。ただ、どちらかというと右を自認する人にこそ、読んでほしいと思いましたね。

なによりも、森達也がフジテレビで作っていて放送できなかった、日本国憲法ドキュメンタリー「天皇に会いたい」の話が、とてもいい。

   ある日、主権者である一個人・森達也が、国民統合の象徴である
   天皇に会いたいと思いたつ。その気持ちが、日本の社会構造とメ
   ディア状況の中で、どのように砕け散るのか、または成就するのか。
   それを描こうとしたドキュメンタリーは、ライブドア騒動の最中、
   フジテレビ応援団である、自民党改憲派議員を刺激しないため、
   中止になってしまう。もし天皇に会えたそのとき、たった一つ、
   用意していたという質問…


その内容に、共和制論者の私ですら不覚にも涙腺を刺激されて泣いてしまった。そのとき、優しい笑みを浮かべながら、明仁天皇がどんなお答えをくださるのか。想像しただけで、涙がこぼれた。見てみたかった。心よりそう思う。

左翼なら星4つ。
右翼なら星3つ、といった所でしょうか。


評価 ★★★★
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Last updated  Nov 24, 2005 12:42:06 AM
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