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書評日記  パペッティア通信

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Jan 28, 2006
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カテゴリ:社会


中国共産党支配は崩壊する!!
中国経済は崩壊する!!


そんな言説をたれ流すジャーナリストやブログが跡を絶たない。
正直、ウンザリさせられてしまう。

なにも、中国共産党支配が続くとかを言いたいんじゃない。逆だ。「形あるものは必ず滅びる」のだから、そんなものいつか崩壊するに決まってる。<何時>が明記されなければ、「絶対当たる予言」など意味はない。天安門事件以後、もうどれくらい、「中国は崩壊する!!」と叫ばれたことだろう。加地伸行『現代中国学』中公新書などをはじめ、ことごとく予測を外しながら、知らぬ半兵衛を決めこむ醜悪な連中がなんと多いことか。今さら当たった所で、何ひとつ偉くはない。そろそろ、てか、たまには当ててみたらどうですか。十何年も「狼少年」をやった「中国崩壊産業」の面々の言説に、飽き飽きしてしまったのかもしれない。

本書は、そんな悪質な中国論が横行する中で、一線を画した本である。
2002年7月刊行。アジア太平洋賞特別賞受賞作の文庫化。

一人のジャーナリストによる、中国農村部の丹念な取材。
たったそれだけのことなのに、やけに神々しい。


● 農村にて

農村各地に出現しはじめた「農民領袖」たち。地方幹部の腐敗により共産党の威信は失墜。農民抵抗のリーダーとなった彼らは、農民負担軽減など集団的抗議行動の先頭に立っているという。全国に広がる「上訪」(陳情)活動防止に躍起になる共産党。「農民領袖」の出現は、農村に市民社会が誕生しようとしているのか。それともタダの「ならず者」なのか。かつての伝統中国の社会においてみられたような、党支配の末端に農民領袖を組み込むことはできそうにもない。なぜなら、今や農村には、それを妨げる官=共産党地方幹部=「土皇帝」が出現しているからだという。「改革開放」の時代、農民を豊かな生活に導いたリーダーが、村の党と企業(石炭採掘など)権力を掌握して、「書記現象」=「土皇帝」化する現状の発生。天津郊外大邱村に、「中国一豊かな村」を作りあげた禹作敏の永光と蹉跌。農民負担の軽減を推しすすめた結果、義務教育が崩壊した省さえあるという。


● 出稼ぎ先にて

義務教育は、戸籍のある地方政府所在地で受けなければならない。農村から家族を伴って出稼ぎに来た人々は、都市の学校に子供を学ばせることができない。親自身、いつ、故郷に送還されるか知れたものではないのだ。そんな中で、出稼ぎ夫婦の子供たちに教育を施す「民工学校」運営の苦労。劣悪な環境の中でも、子供たちは豊かな人間性を育んでいるという。彼らが子供を都会に連れてくるのは、郷鎮レベルの財政基盤の崩壊によって、満足に義務教育を受けさせることができないためらしい。河南省の7割の教員が給料遅配。そのため子供に花火を作らせて経費の足しにする小学校が出現したのだという。今や農民は、「二等公民」にすぎない。都市戸籍を取得するため、偽装結婚や賄賂などが横行している。北京人と「民工潮(盲流)」の外地人たちの反目。天安門事件でのデモ側の残虐な報復は、外地人たちの仕業とうそぶく北京人たちの蔑視意識。世界で唯一、農民協会のない国、中国では、1990年代後半以降、生活水準が農村部でどんどん悪化するのに対応しきれていない。どんなに出稼ぎで荒廃しようと効率が悪かろうと、猫の額のような田畑は、農村では唯一のセーフティネットとして機能している。うかつに土地流動化政策も実施できないという。


● 民主主義の実践の場にて

1998年以降、全国で始められた、村民委員会の直接選挙。もともと、村長と党支部書記兼任による「土皇帝化」に業を煮やした党中央が、チェック&バランスの機能、すなわち党末端に外圧をかけるため導入したものらしい。当然、村民委員会と党支部の対立は高まる。こうした中で、村民投票で村民委員会を選ぶどころか、不信任党員を党支部書記など要職につけさせない、党員信任選挙の動きがおこなわれる一方、党支部書記を村民の評価にさらす制度に止まる所もあるという。選挙は、郷鎮レベルまでには広まっていない。1999年、人民中国で初めて、郷鎮長を選挙で任命する試みがみられたものの、その民主化の動きを潰えさせたのは、何あろう、法輪講の台頭であるという。1999年4月25日、気孔の修練を重ねることで、宇宙最高徳性「真・善・忍」に同化することを説いていた法輪講集団は、大規模群衆による天安門以来の「中南海包囲事件」を起こす。中国伝統「大同思想」の流れをくむ彼らは、宗教・政治集団として認定、当局の弾圧をうけてしまう。ただ、こうした宗教の台頭は、法輪講だけにとどまらない。伝統的寺院の復旧から、義務教育経費を犠牲にした地方政府の怪しげな「土廟」建設まで多岐にわたり、宗教集団と当局の衝突も続発しているという。今では、農民起義の先駆として高く評価されていた「太平天国」について、歴史学界では否定的見解も現れているらしい。

他にも、豆知識の数々が素晴らしい。「企業より政府陳情、政府陳情より道路・鉄道封鎖」。中国の大衆示威行動のこの原則は、戦前期IRAのテロを彷彿とさせて、なかなか面白かった。失うものがなかった現場労働者・農民たちにとって、文革時代はカーニバルだったとは! 今も懐かしんでいる人が多いらしい。 中国を代表する知識人たちでさえ、「文化レベルが低い」と農民を蔑視している様子などを読むと、中国の抱える病根の深さが痛感させられる。


なによりも、変なバイアスがなく、底辺レベルの息吹が伝わってくる作りになっているのがありがたい。いつ崩壊しても不思議ではない、凄まじい腐敗と矛盾に苛まれながら、なぜ経済発展が続き、政治体制が続いているのか。通俗の「中国崩壊論」が決して答えようとはしないこの疑問に、この本は直接ではないが答えてくれているのではないだろうか?。

既存の秩序が崩壊に向かう中で、それでも底辺レベルでは、秩序の再建と束の間の安定をもとめて、狂おしいまでの願いとともに、種々様々な行動が試みられている。「農民領袖」・「民工学校」建設者・農民運動代表者の「地方共産党員」から、果ては「土皇帝」「法輪功」にいたるまで。この書では、「農民領袖」と「土皇帝」は対立しているように描かれている。そうだろうか。「土皇帝」は、「法輪功」「農民領袖」…この書に登場した他の人物の動きと同様、激しく流転・変容する社会状況の中で、何か特定の状況を固定させるため必死に闘う存在という点では、横一線の存在ではないのか。とくに、上部権力とのつながり(関係)の構築に汲々としている姿は、そのような感を強くさせてしまう。そもそも中国社会には「安定」がない。それを「不安定」と読みかえることで可能になったのが、「中国崩壊論」なるパラダイムではないのか。むしろ、中国を語るなら、「安定」がどのように打ち立てられ出現するのかこそ、着目しなければならないのではないか。今もなお中国で再生産され続ける秩序の様態をどう見ていくべきなのか。本書を読みながら感じたのは、このような疑念と仮説である。

いささか残念な点は、中国メディアで報道・刊行されたものが、大半を占めていることか。いうなれば、ハサミとノリできた本書。中国農村に直接ふれる内容で勝負して欲しかった、と無いものねだりをしたくなってしまう。そんな訳で若干辛くつけさせてもらったものの、面白さは抜群で星3つ半ではすみそうにもありません。ご覧になっていない方は、文庫化されたこともありますし、ぜひ書店でお求めください。


評価 ★★★☆
価格: ¥880 (税込)

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Last updated  Mar 7, 2006 07:30:11 PM
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