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書評日記  パペッティア通信

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Aug 14, 2006
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カテゴリ:社会
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▼  たいへん痛快な中国人論である。安くて、面白くて、おまけに間違っていない。この簡単に見えるようなことが、どれくらい難しいことか。


▼  対立を煽るでもなく、幻想に酔いしれることもなく、たんたんと中国文化を語る。なんとも難しいことをスイスイとやってのける怪著。高校生や中学生の方は、夏休みの宿題「読書感想文」にこの本を取りあげてみてはいかがだろう。むろん、大学生・社会人にも、何よりもお勧めしたい一冊である。


▼  中国人は、<「貝」=「殷人」=農耕民族=多神教的=物財重視=道教的>と、<「羊」=周人=遊牧民族=一神教的=イデオロギー重視=儒教>の、この2つの気質の違う集団が現代にも引き継がれ、中国人は貝と羊の2つの顔を徹底的に使い分けているのだという。意欲的というよりも、暴走気味。弥生人と縄文人で、現代日本を論じようとするようなもの。本来なら、バカか!それでは何も言ってないことと同じだろうが!と叩きつけたくなるはずなんだが、まったくもって、飽きさせることのない、優れたエッセイ、入門書に仕上がっているのである。


▼  適当に、本書の内容を見つくろって、ご紹介しよう。


神社やお寺の境内に、御神籤やお守りを売って商売するのは、中国の影響

医・食・人的ネットワークを駆使しての多彩な流浪ノウハウをもつ中国人

12世紀、疫病を恐れたからか、急に肉や魚の刺身を食べなくなった中国人

我々は中国人ではない、「華人」だ!と主張する、東南アジアなどの華僑たち

死刑囚から臓器抜き取りを容認する、死を特別視しない中国人

「功」と「徳」を分け、「徳」を評価して「功」は評価しない中国人

靖国問題も、社会主義市場経済も、外見に表すことに拘る「体用論」の影響

物や知的所有権などに対して、縄張り感覚が大らかな、中国人

「大づかみ式合理主義」中国と「分析的合理主義」欧米

感覚表現はともかく、時空・数字・料理…とかく「外向的」な言語である中国語

無制限な資源は、人と土しかなく、人管理=「政治的文明」を余儀なくされた中国

4世紀以降純粋な漢民族統一王朝がない?中国(趙匡胤・トルコ?永楽・高麗)

周辺出身者の忠誠心を利用するのが巧みな、歴代為政者

中国2千年の黒幕、「士大夫階級」支配を支えた、儒教・科挙・漢字

歴史に美学をもとめ、京劇的「善玉」「悪玉」の区分が厳しい、中国人

現代は、フビライ、康煕帝期に次ぐ3度目の「万里の長城のくびき」からの解放

質実剛健・軍事・政治に優れる「北」と、才気煥発・文化・経済に優れる「南」

アヘン戦争まで文明間戦争を経験したことのない中華帝国のアキレス腱とは?

チベット・ウイグル族の独立をさまたげる、ソ連崩壊のトラウマ

日本をのぞけば、地域呼称が存在せず、政権名しかない、東北アジア地域

地域呼称のない不便さを解消するため発明された呼称、「支那」「震旦」

近代以降、流行した佐藤信淵『混同秘策』を元に中国人が捏造した田中上奏文

ホンネとタテマエ、日本人と中国人は似ている部分も多い

現代中国は昭和初期日本という補助線を引くと分かりやすい

東アジアには「交流」はない、一方通行の「直流」のみだった!!!!






▼  どうです?なかなか興味深い内容ではありませんか?



▼  西洋文明とは違い、競合的協力者を持てなかった、中国文明の悲劇が綴られていて、なかなか興味深い。会津藩士の若松コロニーが全滅したにも関わらず、太平天国の残党たちは、新大陸に渡って過酷な鉄道建設に携わりながら、その流浪の知恵で生き残ってしまったという。流浪の英雄は、中国にいても、日本にはいない。「国名」の付け方でさえ、日中両国は、両極端・正反対の国であるという。理念名称のみの中国と、地域名称のみにして、立国理念を付けることを拒否したアジア唯一の国、日本似ているようでまったく違う、「和魂洋才」と「中体西用」。他方、周辺出身者の忠誠心を引き出すのがヘタだった日本という指摘は、なかなか胸を痛めさせられるものがあった。反乱の根拠にもなった創世記アダム神話に対して、紐を泥水に浸してぶんぶん飛沫をとばして泥から人間を粗製濫造した創世神話をもつ中国の比較は、中国では命が羽毛のように軽いことを見れば見るほど、考えさせられてしまう。「神武天皇」に対抗して発見・創出された、「黄帝」「檀君」と「黄帝紀元」「檀君紀元」。国土の「中央」においてはならない、近現代の大陸国家の首都………などなど、比較を通した幅広い視点は、たいへん啓蒙させられる。


▼  むろん、周辺のさまざまな分野も、手広く扱われていて、たいへん楽しい。華人たちが1777年、ボルネオに作った「蘭芳公司」は、世界最初の民主的共和国だったらしい。かつて清朝のときは、「唐人」と名のった様に(ただし「唐人」は、日本では朝鮮人~西洋人も含まれる)、こうした移民たちは、祖国に対して屈折した思いを抱いているという。ただ、中国政府もさるもので、出国したい優秀な人間は留学生としてどしどし送り出した。短期的に故郷への送金で潤っただけでなく、長期的に中国人のプレゼンスは向上。今では、中国の経済発展で、かつての留学生の帰還が相次ぎ、技術・情報をどんどん持ち帰り、「産業スパイ」呼ばわりされているという。 「坊主めくりのできない国」中国という喩えには、ニンマリとさせられてしまうだろう。毛沢東のみが「大づかみ式合理主義」で農民にも分かる言葉で社会主義を語ることができた反面、たった一人を批判したことで、3億も人口を増やしてしまったこと…………なによりも劉備と曹操の評価が分かれたのは、「侠」に徹したモノと、「侠」にも「士」にも徹しきれなかったものの差なのである、という指摘はたいへん面白かった。


▼  むろん、いい加減な議論も多い。ユダヤ教徒を指す現代のユダヤ人の人口と、ダビデ王統治下のユダヤ王国の人口を比較して、「3倍しか増えていないのは、激しい迫害のため」というのは、お笑いにしか思えない。また、人口規模500万=王国の法則って、そんなのあるのかね? 紙と絹は、資源節約をしたい事情から生まれたもの、と断定されているものの、絹については説明がなくて途方にくれてしまう。商業が政治に対抗しうるパワーであった西洋と、政治に従属した中国というありきたりな比較も、「港市国家」「(ギリシャ)ポリス」の様に、商業そのものが政治の統制下にあった歴史の方が、人類史では一般的であることが忘れられている。また、「支那」という呼称の問題について、「嫌がらせ」で「支那」を使う日本人右翼に対して、的確な例をあげながらタシなめていて、たいへん好感がもてる。ただ、日本における「中国」呼称の定着は、「中国」+「満州」=「支那」という、満州を含まない地域名称という側面が強かったことが触れられても良かったのではないか?。 また、明代後期以降の特殊性を考慮することなく、皇帝と士大夫階級の寒々とした関係、として崇禎帝の最後を例としてあげるのは、読者をミスリードさせるようにも思える。 


▼  このような数々の欠点はあるものの、それでもお奨めしたい。そんなこと、些細に思える位、この本は魅力的な本なのだ。柔らかい文体で、縦横無尽に中国を語り尽くすエッセイ。『国家の品格』より売れていないこと自体、日本の恥。『国家の品格』をお読みになった人は、ただちに本屋に急行してもらいたい。



評価 ★★★☆
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追伸  とはいえ驚かされたのが、田仲一成の洞察力である………え?なんのことか分からない? 本書を読んで確認してほしい。


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Last updated  Sep 24, 2006 01:28:46 AM
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