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書評日記  パペッティア通信

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Nov 7, 2006
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カテゴリ:政治
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▼  講談社現代新書は、最近、まったく読まなくなった。 以前は、あの鮮やかでカラフルな装丁に騙されて、「くそう、ツマンナイ!」と、ずいぶん泣きをみたもんだ。 今思いかえしてみても、講談社現代新書で感動した本は、1冊もない。 最低でも、100冊は読んだはずなのに … 一番面白かったものの一つが、『動物化するポストモダン』だったことに、あらためて驚いてしまう。


▼  今の「お手軽な新書」路線の走りは、どう控えめに見ても、講談社現代新書だろう。 新潮新書、ソフトバンク新書……そういえば、昔、有斐閣新書というものもあったけど、今も続いているのかな、そのレーベル。 


▼  そんな、内容の薄い、「お手軽な知の入門書」の走り、講談社現代新書だけあって、この書も実につまんなかった。 黒野耐の前作、『参謀本部と陸軍大学校』や、『日本を滅ぼした国防方針』とかを読んでいて、それなりに面白かったので、期待してしまったのが、敗因かもしれない。 しくじった。 本当に残念でならない。


▼  陸軍三大改革として、桂太郎、宇垣一成、石原莞爾の改革があげられる。 本書は、なぜ桂太郎の改革のみが成功して、宇垣・石原莞爾の改革が失敗したのかを問うのだ。 とりあえず、目次だけは示しておきたい。

 第1章 陸軍の創設
   治安維持軍の建設
   山県の陸軍掌握と国防軍への脱皮
 第2章 桂太郎の陸軍改革―明治期の改革
   対立する国防像
   陸軍改革の始動
   第一の衝突―統合参謀本部をめぐる攻防
   第二の衝突―陸軍紛議
   最後の衝突―月曜会事件
   陸軍改革の完成
 第3章 宇垣一成の軍制改革―大正期の改革
   第一次世界大戦の衝撃
   軍制改革への反動
   軍制改革の断行と衝突
   軍制改革の頓挫
 第4章 石原莞爾の参謀本部改革―昭和期の改革
   陸軍内の革新運動
   革新という名の保革対立
   陸軍による政治支配
   石原莞爾の改革と挫折



▼  陸軍は、大村益次郎が設立するんだけど、当初、志願兵制の意見が強かった。 これを山県有朋は、ドイツ・フランスを参考にしながら、徴兵制度を採用する。 これは、西南戦争において、士族中心だった西郷軍に勝利することで、先見の明が明らかになった。 とはいえ、山県は、「権力掌握の牙城」として陸軍をつかい、政党勢力が統帥権を掌握することを防ぐため、参謀本部を設置して、天皇の下に直属させる。 内務省・司法省・枢密院・陸軍を横断して、山県自ら政・官・軍に権力を確立することで、分断した「政治」と「軍事」の隙間を埋めるものの、後の日本を破滅に導く遠因になる。


▼  清国との対立が高まる中で、この山県のあとを受けて陸軍を変革したのが、桂太郎であるという。 専守防御ではなくて、機動的防御ないし外征。 鎮台制から師団制。 フランス式からドイツ式。 学識あるもの、官吏、戸主なども徴兵の対象に加え、厳格なドイツ式皆兵主義としたのも、桂改革であるという。 欧州留学組で、近代教育を受けてきた、軍政の桂、軍令の川上操六、教育の児玉でタッグを組ませ、三浦・谷といった守旧派が、権力闘争においても、非主流派に属していたこともあって、排除に成功したらしい。  成功の要因は、3点あるという。

 A  改革勢力の国防ビジョンのほうが、「開国進取」だったこと
 B  改革側に体系的・具体的施策を準備していたこと
 C  権力闘争にも勝つ陣容だったこと(大山・山県・西郷[従])


ただ、統合参謀本部案は、三浦の本部長就任を防ぐという、山県の陸軍掌握の都合によって、一度は実施されたものの廃止されてしまう。 戦略の統一さえ、達成できない、昭和の陸海軍対立の遠因になる。 


▼  宇垣軍制改革は、第一次大戦の総力戦の衝撃を受けて始められるが、短期決戦から総力戦への転換、軍隊数を削減して火力の増強という、改革ビジョンを実現できないまま終わってしまう。 それは、ポテンシャルがない日本の現実に直面し、「総力戦を戦うことに反対」する日露戦争型短期決戦主義派が、参謀本部を中心に台頭してしまったから、とされる。 精鋭主義と精神力主義で補うとする、上原勇作・荒木貞夫らの守旧派の勝利。 そこに筆者は、総理への野望を隠さない、宇垣一成の剛毅不屈というよりも傲慢な性格が、緊縮財政のためだけの体系的ではない軍縮、政府・与党と連絡を密にしないがため共有されないビジョン、というマイナスをまねいたことを見出そうとする。 宇垣には、衆知を糾合して改革をおこなう、リーダーの素質がない。 大命降下の際、陸軍にソッポを向かれる遠因、と結論づける。


▼  石原莞爾の改革とは、実際には「皇道派(保守派)VS統制派(改革派)」のことを指すらしい。 緊縮財政のみで、空手形になった宇垣軍制改革。 宇垣改革を葬った陸軍は、皇道派と統制派に陸軍は分裂してしまう。 満州事変以降、陸軍は国内でクーデターをやるかわりに、海外でクーデターを断行する形で、国内体制転換を図ってゆく。 総力戦・長期持久戦・国家総動員体制の確立を痛感する故・永田鉄山の衣鉢をつぐ統制派は、「2・26事件」以降、反乱鎮圧を担った功労者顔で、山県が陸軍を掌握するために作った統帥権独立と幕僚制度を利用して、陸軍中心とした政治支配にのりだした。梅津陸軍次官を中心として行われた、軍部大臣現役武官制、軍務局から兵務局の独立、陸相権限の強化。 石原莞爾は、この流れにのって参謀本部に入るものの、戦争指導の中核がないことに気づき、省部横断体制で改革に乗りだす。 だが、「国防方針(国策の基準)」は、陸海対立で「北守南進」「北進南守」を決めることすらできない。 そこで、「国防国策大綱」によって転覆を図り、「重要産業五カ年計画」などを策定したものの、板垣陸相実現をめぐって、梅津次官(板垣の先輩)と対立してしまう。 石原は、参謀本部を追い出された。 国防計画の体系と内容というソフトウェアと、参謀本部の組織改革というハードウェアの改革は、空中分解してしまった。 教訓としては、首脳が本気で改革する気はないのに、中堅幕僚がやろうとすることに無理があったという。


▼  たしかに、読みやすいし、面白い部分も多い。 省部横断体制で下克上を図った石原の改革が、武藤・田中の省部横断の提携で潰された箇所とかは、「回る因果は風車」の趣があって、企業経営者の教訓などには、使えるかもしれない。 陸軍のみの改革では、失敗する。 大きな計画をおこなうには、明確な目標と、体系的・具体的な計画を準備して、計画を支持するスタッフと支持者(とくに首脳部の了解)をとりなさい。 社員を教訓するための素材には、うってつけなのかもしれない。 あと朝礼のときの挨拶か。


▼  とはいえ、細部は問題が多すぎるだろう。 たとえば、平時には全力で産業振興をおこない、戦時には全国力で戦う、「産業立国主義」(犬養毅)が退けられたから、軍備削減も近代化も果たせなかったし、戦後不況も長引いたというのは、いったい何を根拠にしているのか、さっぱり理解できない。 1920年代の経済史の知見からみれば、ほとんど噴飯ものの意見といえよう。 さらに、桂改革を高く評価して、宇垣改革を批判するのも、まったく意味不明である。 そもそも、山県の庇護の下、進められた改革なら、それは「桂改革」ではなくて、「山県改革」ではないのか。 どうみても、桂は山県の使い走りにすぎないではないか、という疑念が、読みながらぬぐえない。 


▼  最後の石原改革にいたっては、そもそも改革の名に値するのかすら、不明であろう。 国防計画と参謀本部組織の改革は、直接的には、総力戦・長期持久戦・国家総動員体制という統制派の目指したものと、まったく結びついていない。 本来介在しなければならない、企画院や商工省が抜け落ちているから、ただの陸軍内の権力闘争の次元で終わってしまう。 これで結論が「中堅幕僚だけ…」なんていわれても、そりゃ枠組が、最初から陸軍内では、そんな結論が出るのは当然だろう、としかいいようがない。 「総力戦体制」なんて、お題目は、いつのまにか消えてしまっている。   


▼  うーむ、講談社現代新書は、中公・岩波・ちくまの「新・御三家」に比べるとひどいねえ、と言うのが感想だったりする。 やっぱり、昔のカラフルな表紙に戻した方がいいんでないかい、と心底思うのであった。


▼  安いけど、図書館で借りて読むのがお勧め、てな感じ。


評価  ★★☆
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Last updated  Jan 17, 2007 08:06:36 PM
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